私人間効力の問題

憲法の人権規定は国家と個人との間を規律するものであるから、私人間の争いは私的自治によって解決すべきであり本来憲法は適用されないはずです。しかし、現代においては公権力に匹敵する社会的権力による人権侵害の危険性が高まっています。そこで、憲法を私人間に適用できないかが問題となります。

なお、25条のように私人間において適用されない規定があることは争いがなく、逆に権利の性質上私人間に直接適用される人権規定があることについても争いはありません。直接適用される規定としては、15条4項、18条、24条、27条3項、28条があります。

無効力説

無効力説は、憲法の人権規定は私人間には適用されないと解します。その理由として、人権規定は国家の権力作用を規制するものであって民事関係とは関係がないことが挙げられます。これに対しては、社会的権力が公権力に匹敵する力を持っているのに私人間に憲法が適用されないことは憲法の人権尊重の精神に反するとの批判があります。

直接適用説

直接適用説は、憲法の人権規定は私人間に直接適用され、私人に対して直接憲法上の権利を主張できると解します。その理由として、憲法は公法と私法の両者に通ずる客観的法秩序であることが挙げられます。これに対しては、個人の自律的領域すなわち私的自治の原則を否定することになること、および具体化立法をまたずに予測することのできない義務が憲法から直接引き出される危険があることが批判されています。

間接適用説

間接適用説は通説であり、人権保障の精神に反する行為については私法の一般条項すなわち民法1条や90条等を媒介として人権規定の価値を私人間にも及ぼすと解します。これに対しては、人権価値を導入して行う私法の一般条項の意味充填解釈は振幅が大きいこと、および純然たる事実行為に基づく私的な人権侵害行為が憲法による規制の範囲外に置かれてしまうことが批判されています。

国家同視理論

純然たる事実行為による人権侵害に対する実効的な救済手段として国家同視の理論が主張されています。この理論は、人権規定は公権力と国民との関係を規律するということを前提としつつ、公権力が私的行為に極めて重要な程度にまでかかわり合いになった場合、または私人が国の行為に準ずるような高度に公的な機能を行使している場合に、当該私的行為を国家行為と同視して憲法を直接適用するという理論です。

三菱樹脂事件の一般論

三菱樹脂事件において最高裁判所は、憲法19条及び14条は国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないとしました。

私人間の関係においては各人の有する自由と平等の権利自体が具体的な場合に相互に矛盾、対立する可能性があり、このような場合におけるその対立の調整は近代自由社会においては原則として私的自治に委ねられ、ただ一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ法がこれに介入しその間の調整をはかるという建前がとられているとしました。

また、私人間の関係においても相互の社会的力関係の相違から一方が他方に優越し事実上後者が前者の意思に服従せざるをえない場合があるが、このような場合に限り憲法の基本権保障規定の適用ないし類推適用を認めるべきであるとする見解も採用することはできないとしました。その理由として、事実上の支配関係はその支配力の態様、程度、規模等においてさまざまでありどのような場合にこれを国または公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難であるばかりでなく、一方が権力の法的独占の上に立って行われるものであるのに対し他方は単なる社会的事実としての力の優劣の関係にすぎず画然たる性質上の区別が存在することを挙げました。

そして、私的支配関係においては個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがありその態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によってその是正を図ることが可能であり、また場合によっては私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護しその間の適切な調整を図る方途も存するとしました。

本判決は直接適用説を否定し間接適用説に立ったと評価されています。

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