保証債務の意義
保証債務とは他人の債務を保証した者が他人がその債務を履行しない場合にその債務を他人に代わって履行する責任を負うことをいいます。保証人によって保証される他人の債務を主たる債務といい保証人の債務を保証債務といいます。
保証債務の法的性質
保証債務には別個独立性、付従性、随伴性及び補充性の4つの性質があります。
別個独立性とは保証債務が債権者と保証人との間の契約によって設定される主たる債務とは別個の債務であることをいいます。
付従性とは保証債務が主たる債務の存在を前提としこれに従たる性質を有することをいいます。
随伴性とは主たる債務者に対する債権が移転すると保証人に対する債権もともに移転することをいいます。保証債務は債権担保を目的とするものだからです。ただし免責的債務引受の場合には別の取扱いがなされます。
補充性とは保証人が主たる債務者がその債務を履行しない場合に初めてその債務を履行すればよいことをいいます。このことから保証人は債権者からの請求に対しまず主たる債務者に請求せよという催告の抗弁権及びまず主たる債務者の財産に執行せよという検索の抗弁権を有します。
保証債務の成立
保証債務の発生要件は主債務の存在、保証契約の成立及び保証契約が書面又は電磁的記録によってされたことの3つです。主債務者の同意は不要です。
保証契約は債権者と保証人だけで有効に締結できます。主たる債務の一部のみの保証も可能です。
保証契約は書面でしなければその効力を生じない要式行為です。その趣旨は保証契約の内容を明確に確認しまた保証意思が外部的に明らかになることを通じて保証をするに当たっての慎重さを要請する点にあります。保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときはその保証契約は書面によってされたものとみなされその効力を有します。
書面の作成について保証債務の内容が明確に記載された保証契約書又はその申込み等の意思表示が記載された書面にその者が署名し若しくは記名押印し又はその内容を了知した上で他の者に指示等して署名ないし記名押印の代行をさせることにより書面を作成した場合その他保証人となろうとする者が保証債務の内容を了知した上で債権者に対して書面で明確に保証意思を表示したと認められる場合に限りその効力を生じます。
保証人と主たる債務者との間の内部事情は保証契約の成立には影響を及ぼしません。保証委託契約の無効は保証契約に影響しません。他に連帯保証人があると誤信して連帯保証をした場合でも特にその旨を保証契約の内容としたのでなければ保証人の錯誤は動機の錯誤にすぎません。保証人が主たる債務者に騙されて債権者と保証契約を締結した場合は第三者による詐欺に当たります。
保証人の要件
保証人となる資格については何らの制限もないから当事者間の契約でいかなる人でも保証人になることができます。
債務者が法律上又は契約によって保証人を立てる義務がある場合にはその保証人は行為能力者であること及び弁済の資力を有することという2つの要件を備える者でなければなりません。保証人が弁済の資力を有する要件を欠くに至ったときは債権者はこの要件を具備する者をもって代えることを請求できます。ただし保証人が後に制限行為能力者となってもいったん発生した保証債務には何の影響もないため債権者に代替請求権は認められていません。これらの規定は債権者が保証人を指名した場合には適用されません。
法律の規定により保証人を立てる義務を負う場合の例としては留置権消滅請求の際の担保提供義務があります。裁判所の命令による場合の例としては不在者管理人の担保提供義務があります。
債務者がこれらの要件を具備する保証人を立てることができないときは他の担保を供してこれに代えることができます。
主たる債務の存在と付従性
主たる債務が成立しなかったりすでに消滅しているときは保証債務も効力を生じません。保証債務は主たる債務の存在を前提とするからです。主たる債務につき免責的債務引受がなされた場合には保証債務は消滅します。
成立における付従性として主たる債務が不成立の場合や無効もしくは取消しにより遡及的に消滅した場合には保証債務も不成立又は無効となります。ただし主たる債務は必ずしも現実に発生している必要はなく将来の債務のための保証や将来増減する債務を決算期に一定の限度額まで保証するいわゆる根保証を成立させることも可能です。主たる債務が条件付のものであるときは保証も条件付で効力を生じます。
消滅に関する付従性として主たる債務が弁済や更改や免除により消滅すれば保証債務も消滅します。
目的及び態様における付従性として主たる債務の同一性が失われずに目的や範囲を変更する場合には保証債務もそれに応じて変更します。保証債務はその目的や態様において主たる債務より重くてはなりません。この付従性は当事者の特約で排除することはできません。保証人が同意しても保証債務を主たる債務より重くすることはできません。ただし保証債務自体についての違約金や損害賠償の額について約定する場合は例外であり主たる債務よりも重い負担となりえます。
主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されても保証人の負担は加重されません。主たる債務の弁済期が延期されれば保証債務の弁済期も延期されます。主たる債務者が死亡しその相続人が限定承認を行った場合には保証人の債務及び責任は影響を受けません。
主たる債務者の抗弁権として保証人は同時履行の抗弁権や相殺権を援用することができます。また主たる債務者について生じた事由は原則として保証人にも効力が及びます。
保証債務の範囲
447条1項は保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものを包含すると定めています。本項は保証債務の範囲につき債権者と保証人との間に特約がない場合の補充規定です。同条2項は保証人はその保証債務についてのみ違約金又は損害賠償の額を約定することができると定めています。これは保証債務の別個独立性に基づくものであり保証債務の履行を確実にするにすぎないので内容の付従性には反しません。
解除に伴う原状回復義務について特定物売買の売主の保証の場合には特に反対の意思表示のない限り売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても保証人は責任を負います。売主の債務不履行に起因して売主が買主に対し負担する可能性のある債務につき責任を負担する趣旨で保証がなされるのが通常だからです。合意解除から生じる債務については保証人は責任を負わないのが原則です。保証人に過大な責任を負担させる結果となるおそれがあるからです。ただし合意解除が債務不履行に基づくものであり解除の際に定められた約定の債務が実質的に見て解除権の行使による解除によって負担すべき主債務者の債務より重いものでない限り特段の事情がなければ主債務者の保証人は約定の債務についても責任を負います。
契約解除後の損害賠償義務が保証債務の範囲に含まれるかについても原状回復義務の場合と同様に保証契約の趣旨に照らして判断すべきであり通常保証人の責任は肯定されます。
448条の保証人の負担
448条1項は保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときはこれを主たる債務の限度に減縮すると定めています。同条2項は主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても保証人の負担は加重されないと定めています。
取り消すことができる債務の保証
449条は行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定すると定めています。
本条の適用は行為能力の制限を理由とする取消しの場合に限られます。主たる債務の消滅にもかかわらず保証人に別個独立の債務を負担させることは保証債務の付従性からすれば最小限にとどめられなければならないからです。制限行為能力者の帰責事由による不履行の場合には損害賠償債務に転じた主たる債務に保証債務は及ぶため本条は適用されません。制限行為能力者の帰責事由によらない不履行の場合には保証人に独立の債務を負わせることは酷であるため本条の推定は働きません。
アプリの紹介
過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。
