傷害致死罪
205条は身体を傷害しよって人を死亡させた者は3年以上の有期拘禁刑に処すると定めています。本罪は傷害罪の結果的加重犯です。致死についての過失は不要とするのが判例ですが責任主義の見地から必要とする見解もあります。
現場助勢罪
206条は傷害罪又は傷害致死罪の犯罪が行われるにあたり現場において勢いを助けた者は自ら人を傷害しなくても1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処すると定めています。
傷害罪又は傷害致死罪が行われる場合でなければならないため本犯が暴行にとどまった場合や殺人や強盗致死傷などの場合には本罪は成立しません。現場とはその暴行が開始されてから結果発生に至るまでの時及び場所をいいます。勢いを助けるとは単にはやしたてるにすぎない行為をいいます。自ら傷害したときは傷害罪の共同正犯又は同時犯が成立し助勢行為はその罪に吸収されます。
現場助勢罪の法的性格
現場における声援行為が本罪にあたるのはどのような場合かについて本罪の法的性格と関連して争いがあります。
一つの見解は傷害の幇助にあたらない単なる助勢行為を独立に処罰するものと解します。この見解によれば傷害現場における扇動行為自体の危険性に着目し傷害現場で双方に声援した場合には現場助勢罪が成立し一方に声援した場合には傷害罪の幇助犯が成立します。傷害現場における精神的に鼓舞する行為が特定の正犯者の傷害行為を容易にしその幇助を構成する場合には傷害罪の幇助犯が成立し現場助勢罪は成立しません。
もう一つの見解は現場における幇助行為を特別罪として定めたものと解します。この見解によれば野次馬の群集心理を考慮しその責任を緩和していると解し現場助勢の態様である限り形式上傷害罪の幇助にあたるとしても現場助勢罪で処罰すべきとされます。
同時傷害の特例
207条は2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合においてそれぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは共同して実行した者でなくても共犯の例によると定めています。
同時傷害の特例の趣旨
207条の趣旨は共犯関係にない2人以上の者が暴行を加えた事案において立証困難の回避及び被害者保護の観点から被告人側に立証責任を転換し被告人側は積極的に自己の関与した暴行がその傷害を生じさせていないことを立証しない限り傷害についての責任を免れないとする点にあります。
同時傷害の特例の要件
同時傷害の特例が適用されるためには2人以上の者が意思の連絡なく同一人に対して故意をもって暴行を加えたこと、各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること、各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたことすなわち同一の機会に行われたものであること及び傷害の原因となる暴行が特定できないことが必要です。
同一の機会については厳密な意味で同時である必要はなく順次暴行が行われていった場合であっても機会の同一性は認められますが暴行の時間的又は場所的同時性ないし接着性が必要とされています。
同時傷害の特例の効果
共犯の例によるとされています。すなわち60条が適用され共同正犯として処断されます。
同時傷害の特例と途中からの共謀加担
他の者が先行して被害者に暴行を加えこれと同一の機会に後行者が途中から共謀加担したが被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたものとまでは認められない場合であってもその傷害を生じさせた者を知ることができないときは207条の適用により後行者は当該傷害についての責任を免れないとされています。先行者に対し当該傷害についての責任を問いうることは207条の適用を妨げる事情とはなりません。
ただし後行者に対して当該傷害についての責任を問いうるのは後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであるときに限られます。後行者の加えた暴行にその危険性がないときにはたとえその危険性のある暴行を加えた先行者との共謀が認められるからといって207条を適用することはできません。
傷害致死罪への適用
判例は傷害致死罪の場合にも207条の適用を肯定しています。判例を支持する学説は立証困難の回避及び被害者保護という207条の趣旨は傷害致死罪の場合にもあてはまるとしています。他方で判例に反対する学説は207条は例外的な規定であり傷害した場合との文言から傷害罪以外の罪には適用すべきでないとしています。
判例は207条適用の前提となる事実関係が証明された場合には各行為者は自己の関与した暴行が死因となった傷害を生じさせていないことを立証しない限り当該傷害について責任を負いさらに同傷害を原因として発生した死亡の結果についても責任を負うとしています。いずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定されるときであっても207条の適用は妨げられないとされています。
本条は過失致死罪、器物損壊罪及び殺人罪には適用されません。
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