売買の意義と法的性質

売買とは当事者の一方である売主がある財産権を相手方である買主に移転することを約し買主がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生ずる契約です。法的性質は有償、双務、諾成契約です。

売買の目的物となる財産権とは財産的価値のある権利を指し物権、債権、無体財産権などを広く含みます。性質上又は法律上譲渡不能なものでない限りすべてが売買の目的物となります。現存せず将来生じる物や第三者の所有物、物の一部であるが独立の所有権の対象となるものなども財産権に含まれます。

売主は財産権移転債務及び契約不適合責任を負います。不動産の売主は買主に対し登記義務を負い賃借権の譲渡人は譲受人に対し遅滞なく賃貸人の承諾を得る義務を負います。買主は代金支払債務及び利息支払債務を負います。売主の財産権移転債務と対価関係に立つのは金銭債務に限られ他のものであるときは売買ではなく交換となります。すべての売買契約において代金額は何らかの方法で定める必要がありこれは契約の成立要件です。

売買の種類

日常生活において行われる現実売買すなわちあらかじめ特別の合意なく財貨と金銭とを即時に交付し合う形態の売買も債権契約としての売買の一種として売買の規定が適用されます。

特殊形態の売買として第1に見本売買があります。見本売買とは見本により目的物の品質や属性を定めた売買で目的物の性質が保証されたものをいいます。成立には契約締結途上で単に見本の提示のみならず目的物を見本で定める明示又は黙示の意思表示を要します。給付物が見本に適合しないときは売主の債務不履行とされます。

第2に試味売買すなわち試験売買があります。目的物が買主の意に適したら買うとの条件付売買をいいます。売買の効力発生が買主の任意に委ねられ売買の一方の予約の一態様といえます。売主が相当期間を定めて催告し期間内に買主が確答しない場合は契約は無効となるとされます。

第3に継続的商品売買があります。商品売買が継続的かつ反復して行われる場合であり現象面からは単発の売買が何度も締結されている状態です。

売買の一方の予約

556条1項は売買の一方の予約は相手方が売買を完結する意思を表示した時から売買の効力を生ずると定めています。同条2項はその意思表示について期間を定めなかったときは予約者は相手方に対し相当の期間を定めてその期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができると定めています。この場合において相手方がその期間内に確答をしないときは売買の一方の予約はその効力を失います。

売買の一方の予約とは売主又は買主となる者の一方だけが本契約たる売買を成立させるという意思表示をする権利すなわち予約完結権を有しこれに基づき相手方に対して本契約を成立させるという意思表示をすれば相手方の承諾をまたずに直ちに本契約たる売買は成立するということをあらかじめ約束することです。

一方の予約に対応して当事者の双方が本契約の締結権をもつ双方の予約もあります。また片務予約とは一方が本契約締結の権利を有し他方がこれに応じこれに承諾する義務を負担するものをいい双方が承諾義務を負う双務予約もあります。

予約完結権は一種の形成権ですがその消滅時効は債権に準じて5年又は10年です。不動産についての物権移転を内容とする予約完結権は仮登記することができそれにより第三者に対する対抗力を取得します。予約完結権は相手方の承諾を得ることなく譲渡でき譲渡の第三者対抗要件は債権譲渡に準じて義務者への通知又は承諾です。予約完結権が仮登記によって保全されている場合には通知や承諾は不要でありその際の対抗要件は仮登記への権利移転の付記登記です。

再売買予約とは担保目的でなされたとえば買主がその所有不動産をいったん売主に売却し将来売主が買主にこれを売り渡すことにつき予約することをいいます。

手付の意義と種類

手付とは契約締結に際し又はその後代金等の弁済期までに当事者の一方より相手方に対して交付される金銭その他の有価物をいいます。手付は交付されればその所有権は相手方に移転します。主たる契約である売買契約が取り消されれば手付契約も効力を失います。

手付の種類として第1に証約手付があります。証約手付とは契約を締結したということを示しその証拠という趣旨で交付される手付をいいます。手付が解約手付や違約手付の効果をもつ場合でも常にそれと兼ねて最小限この効果をもっていると考えられています。

第2に解約手付があります。解約手付とは手付の金額だけの損失を覚悟すれば相手方の債務不履行がなくても契約を解除できるという趣旨で交付される手付をいいます。判例は手付の授受があれば原則として解約手付と解しています。もっとも当事者の特約により解約手付としての性質を排除することはでき557条は任意規定です。

第3に違約手付があります。違約手付とは債務の不履行に対する威嚇として履行を促す趣旨で交付される手付をいいます。違約手付はその性質に応じて違約罰と損害賠償額の予定に分類されます。違約罰とは買主が債務の履行をしないときに損害賠償とは別に没収される金銭として交付されるものをいいます。損害賠償額の予定としての手付とは損害賠償額が手付の額に制限されるものをいいます。

判例は違約手付と解約手付の両立を認めており違約罰の約定があってもそれだけでは手付による解除を排除する意思表示があったとはいえないとしています。損害賠償額の予定として手付が授受された場合にも違約手付であることの認定の他にさらに解約手付の性質を同時に認めることも可能とされています。

解約手付による解除の要件

557条1項本文は買主が売主に手付を交付したときは買主はその手付を放棄し売主はその倍額を現実に提供して契約の解除をすることができると定めています。ただし同項ただし書はその相手方が契約の履行に着手した後はこの限りでないと定めています。

解約手付による解除の第1の要件として手付の放棄又は手付の倍返しの現実の提供が必要です。買主による手付の放棄により売主は既に受領していた手付を確定的に取得することができます。これとの均衡を保つため売主は買主に対し倍額を現実に提供する必要があり供託までは不要です。買主が受領をあらかじめ拒んでいるときであっても買主に対し単に口頭により手付の倍額を償還する旨を告げその受領を催告するのみでは足りず倍額につき現実の提供を行うことを要します。

第2の要件として相手方が契約の履行に着手していないことが必要です。履行に着手したとは債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指します。履行期以前の行為について履行の着手を認めることも可能ですが履行の着手に当たるか否かについては当該行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨や目的等諸般の事情を総合勘案して決せられます。履行に着手したことの主張立証責任は手付解除の有効性を争う相手方が負います。

履行の着手に当たる例として買主が履行期到来後に売主にしばしば明渡しを求めこの間明渡しがあればいつでも残代金の支払をなしうる状態にあった場合や履行期前に代金を提供した場合があります。履行の着手に当たらない例として買主が代金支払のために資金を銀行から借り入れる準備をした場合や履行期前に買主が銀行から融資に応じる旨の通知を受け取った場合があります。

557条1項は任意規定であり履行着手後にも手付による解除ができる旨を当事者間で特約しても有効です。

解約手付による解除の効果

557条2項は545条4項の解除権の行使は損害賠償の請求を妨げないとする規定は手付による解除の場合には適用しないと定めています。解約手付による解除は約定解除権の行使であって債務不履行による解除とは異なるためです。

手付が交付されている場合に債務不履行によって解除されると損害賠償額の予定を兼ねる手付でない限り一般原則通り手付の額と無関係に債務不履行に基づく損害賠償を請求できます。この場合手付を交付した者は不当利得返還請求権をもちますが損害賠償額から差し引かれるものとして扱われます。合意で契約が解除又は取り消された場合には特約のない限り交付した者が不当利得として手付の返還を請求できます。

売買契約に関する費用

558条は売買契約に関する費用は当事者双方が等しい割合で負担すると定めています。売買契約は有償かつ双務契約であり当事者が平等に利益を有するため契約締結に必要な諸費用は当事者双方が平等に負担すべきとされています。費用とは目的物の評価や測量費用等の売買契約の締結に必要な費用をいいます。

有償契約への準用

559条は売買の規定は売買以外の有償契約について準用すると定めています。ただしその有償契約の性質がこれを許さないときはこの限りではありません。売買は有償契約の典型例であるため売買の規定を売買以外の有償契約に準用することとされています。

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