更改の意義
513条は当事者が従前の債務に代えて新たな債務を発生させる契約をしたときは従前の債務は更改によって消滅すると定めています。更改とは旧債務に代えて給付の内容について重要な変更をした新たな債務、債務者が交替した新たな債務又は債権者が交替した新たな債務を成立させることを内容とする契約です。
更改の要件
更改の要件として第1に消滅すべき債務の存在が必要です。旧債務と新債務とは有因関係にあるため更改によって消滅すべき債務が存在しない場合には更改は無効であり新債務も成立しません。第2に新債務の成立が必要です。新債務が成立しない場合には更改は無効であり原則として旧債務は消滅しません。第3に更改の意思が必要です。給付の内容についての重要な変更、債務者の交替又は債権者の交替に加え当事者が新債務の成立によって旧債務を消滅させようとする意思すなわち更改意思が必要です。
更改の効果
旧債務の消滅に伴い旧債務の担保のために存在した担保権、保証債務及び違約金などの従たる権利も消滅します。ただし質権及び抵当権は更改当事者の特約によって旧債務の目的の限度で新債務に移すことができます。新旧両債務に同一性がない以上旧債務に付着していた抗弁権等は消滅します。債権者の交替による更改の場合であっても更改契約の当事者として関与している以上旧債務に伴う抗弁権は消滅します。
更改契約は契約の一つであり新債務が履行されないときは契約解除の一般原則によって解除することができます。新旧両債務が当事者間だけに存在したときは旧債務が復活しますが旧債務が新債務の当事者以外の間にも存在したときは旧債務は復活しません。
更改では新旧債務は同一性を失いますが債権譲渡や債務引受では債権や債務は同一性を失いません。同一性の維持により旧債権や債務に付随していた担保及び抗弁権は新債権者や債務者に受け継がれます。また更改では新債務を成立させますが代物弁済では債務が消滅します。
債務者の交替による更改
514条1項は債務者の交替による更改は債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができると定めています。三面契約によっても当然にすることができます。また債権者と新債務者間の契約によることもでき免責的債務引受の要件と同様に債務者の意思に反する場合であっても可能です。この場合における更改の効力は債権者が旧債務者に対してその契約をした旨を通知した時に生じます。
同条2項は債務者の交替による更改後の債務者は更改前の債務者に対して求償権を取得しないと定めています。更改の本質は旧債務の消滅と新債務の発生であり新債務者は自己の債務として新債務を負担することとなるため新債務者の旧債務者に対する求償権を観念することができないためです。免責的債務引受における引受人の求償権の不発生と平仄を合わせた規定です。
債権者の交替による更改
515条1項は債権者の交替による更改は更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができると定めています。債権者の交替による更改は債務者に新債権者との間で新たな債務を負担させるものであるため債権譲渡と異なり債務者も契約当事者となる必要があります。同条2項は確定日付のある証書によってしなければ第三者に対抗することができないと定めています。
更改後の債務への担保の移転
518条1項は債権者は更改前の債務の目的の限度においてその債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができると定めています。ただし第三者がこれを設定した場合にはその承諾を得なければなりません。更改によって被担保債権である旧債務が消滅するとその債務に付従する人的物的担保も当然に消滅するのが原則ですが当事者は更改によって同一の利益を得ようとするものであるほか実際の便宜を図る必要があることから質権及び抵当権の移転を認めています。
同条2項は質権又は抵当権の移転はあらかじめ又は同時に更改の相手方に対してする意思表示によってしなければならないと定めています。更改の後に質権又は抵当権を移転するのでは担保権の消滅における付従性と抵触してしまうことから免責的債務引受の場合と同様に遅くとも更改契約の時点までに移転の意思表示をしなければならないとするものです。
免除
519条は債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときはその債権は消滅すると定めています。免除とは債権を無償で消滅させる債権者の一方的意思表示をいいます。免除は債権の放棄であるから債権者の単独行為であり債務者の承諾を必要としません。免除は単独行為であるからその意思表示の撤回はできません。新たに債務者に不利益を課すものではないから条件や期限を付けることは可能です。
免除により債権及び債務は消滅しまた債権に伴う担保物権や保証債務などの従たる権利及び義務も消滅します。債権が第三者の目的となっている場合は免除をすることができません。免除によって第三者の利益を害することは許されないためです。たとえば債権が差し押さえられている場合や質権が設定されている場合がこれに当たります。
混同
520条は債権及び債務が同一人に帰属したときはその債権は消滅すると定めています。ただしその債権が第三者の権利の目的であるときはこの限りではありません。混同とは同一債権について債権者としての地位と債務者としての地位が同一人に帰属することをいいます。
混同により債権は消滅するのが原則です。不動産の賃借人が賃貸人から当該不動産の所有権を取得した場合には混同により賃借権は消滅します。もっともその賃借人が所有権移転登記を経由しない間に第三者が当該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記を経由したことにより所有権を対抗することができなくなった場合には一度混同によって消滅した賃借権は当該第三者との関係では消滅しなかったことになります。
債権を存続させることに法律上意味がある場合は債権は混同によって消滅しません。たとえば家屋の転借人が当該家屋の所有者たる賃貸人の地位を承継しても賃貸借関係及び転貸借関係は当事者間に合意のない限り消滅しません。保証人が主債務を相続した場合には保証が債権者に特別の利益を与えない限り保証債務は消滅します。混同により消滅する債権が第三者の権利の目的になっている場合たとえば債権者がその債権を差し押さえている場合、遺贈の対象とされている場合及び債権質に供されている場合には消滅しません。
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