安楽死
安楽死とは死期に直面して激しい肉体的苦痛を訴える患者をその苦痛から解放するために患者の希望に応じて積極的にその死期を早める行為をいいます。
裁判例は安楽死が許容されるための要件として病者が現代医学の知識と技術から見て不治の病に冒されしかもその死が目前に迫っていること、病者の苦痛がはなはだしく何人も真にこれを見るに忍びない程度であること、専ら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと、病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には本人の真摯な嘱託又は承諾のあること、医師の手によることを本則としそうでない場合には医師の手によることのできないと首肯するに足る特別な事情があること及びその方法が倫理的にも妥当なものとして許容できるものであることを挙げています。
別の裁判例は要件として患者に耐えがたい激しい肉体的苦痛が存在すること、患者について死が避けられずかつ死期が迫っていること、患者の肉体的苦痛を除去及び緩和するために方法を尽くし他に代替的手段がないこと及び生命の短縮を承諾する明示の意思表示があることを挙げています。
尊厳死
尊厳死とは品位ある死を迎えさせるために意識が不可逆的に喪失した植物状態の患者に対する生命維持治療を断念若しくは中止することをいいます。
判例は気管支ぜん息の重積発作を起こして入院した被害者について発症からいまだ2週間の時点でありその回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況にはなかったとし被害者の回復をあきらめた家族からの要請に基づき行われた気管内チューブの抜管について被害者の病状等について適切な情報が伝えられたうえでされたものではなく抜管行為が被害者の推定的意思に基づくということもできないとして法律上許容される治療中止には当たらないとしています。
傷害罪における被害者の同意
被害者の同意ある場合の傷害行為がいかなる限度で適法となるかが問題となります。
構成要件該当性阻却説のうち常に不可罰とする説は自己決定権を重視し被害者が放棄した利益を刑法を使ってまで保護する利益に含ませるか否かの判断は構成要件判断であるとし同意殺人罪に対応する同意傷害罪が規定されていないことを根拠として常に構成要件該当性が否定されるとします。この見解に対しては身体は生命に次ぐ重要な利益でありすべてを不処罰とするのは妥当ではないこと及び同意殺人罪は殺人罪の法定刑の下限の重さが考慮されその減軽類型として特に設けられたものであるから同意傷害罪の規定がないことは理由にならないことが批判されています。
違法性阻却説のうち生命侵害危険説は法益主体が同意により処分可能な利益を放棄したため保護すべき法益が存在しないが同意殺人を処罰している点及び生命の保護の重要性に鑑み生命に危険を与える程度及び態様の重大な傷害については法益の自由な処分は許されないとする見解です。生命侵害危険説に対しては傷害のうち一部は同意のみで不処罰とし他は通常の傷害罪として扱うとすることは困難であることが批判されています。
社会的相当性説は違法性阻却事由の一般原理は行為の社会的相当性であるから傷害行為自体の意味を考慮すべきであるとする見解であり判例の立場です。社会的相当性説に対しては被害者の身体の保護のために処罰するのではなく道徳及び倫理に反する行為であるから処罰するということになりかねないことが批判されています。
判例は被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪が成立するか否かは単に承諾が存在するという事実だけではなく承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位及び程度などの諸般の事情を照らし合わせて決すべきであるとし保険金騙取の目的で被害者に身体傷害の承諾を得た場合には傷害罪の違法性は阻却されないとしています。
同意の有無に関する錯誤
被害者の同意がないにもかかわらず行為者が同意があるものと誤解していた場合には被害者の同意の法理によっては行為者の罪は否定されません。もっとも行為者が同意があるものと誤解している場合には故意ないし責任が阻却されないかが同意傷害の処理に関連して問題となります。
構成要件該当性阻却説からは同意があると認識して傷害すれば構成要件的事実の錯誤として故意が阻却されます。違法性阻却説のうち常に正当化する説及び生命侵害危険説からは同意があると認識して傷害すれば違法性阻却事由の錯誤の問題となります。社会的相当性説からは社会的に相当な行為についての同意があると認識して傷害すれば違法性阻却事由の錯誤の問題となりますが社会的に相当な行為とはいえない場合には違法性阻却事由の錯誤の問題とはなりません。
アプリの紹介
過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。
