人格権の意義

人格権とは、各人の人格に本質的な生命、身体、健康、精神、自由、氏名、名誉、肖像および生活等に関する利益といった個人の人格価値に関わる権利の総称です。

判例には、人格権としての名誉権とするものや、真摯な輸血拒否は人格権の内容として尊重されなければならないとするものがあります。学説上では、これらを名誉権や輸血拒否権という独立の人格権とみなす見解もあります。

パブリシティ権

判例は、人の氏名や肖像などが有する顧客吸引力を排他的に利用する権利をパブリシティ権と呼び、人格権に由来する権利の内容を構成するものとしています。もっとも、同判例は、肖像等に顧客吸引力を有する者は社会の耳目を集めるなどしてその肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるとしています。

エホバの証人輸血拒否事件

エホバの証人である信者Xは宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることを拒否するとの固い意思をもっていました。Xは悪性の肝臓血管腫との診断を受け、輸血を伴わない手術をした例を有することで知られていたA医師の治療を受けるべく病院に入院しました。手術の際、結局輸血を実施しないとXが死亡する可能性が高まったためA医師はXに輸血を実施しました。Xは手術に際し意に反する輸血を受けたため自己決定権の侵害を理由として損害賠償を求めました。

最高裁判所は、A医師らがXの肝臓の腫瘍を摘出するために医療水準に従った相当な手術をしようとすることは人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する者として当然のことであるとしました。しかし、患者が輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は人格権の内容として尊重されなければならないとしました。そして、A医師らは手術の際に輸血以外には救命手段がない事態が生ずる可能性を否定し難いと判断した場合には、Xに対し病院としてはそのような事態に至ったときには輸血するとの方針を採っていることを説明して、病院への入院を継続したうえA医師らのもとで手術を受けるか否かをX自身の意思決定にゆだねるべきであったとしました。

本判決がこのような意思決定をする権利を人格権の内容としたのは、本件が民事の不法行為法上のものであったためと解されています。そのため、このような意思決定をする権利の法令上の規制が問題となる事案であった場合には、人格権の内容ではなくむしろ信教の自由の内容とされたのではないかと評されています。

氏名権

判例は、氏名について個人の人格の象徴であって人格権の内容を構成するとし、人は他人からその氏名を正確に呼称されることについて不法行為法上の保護を受けうる人格的な利益を有するとしています。

夫婦同姓制度訴訟

夫婦は婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称するという夫婦同氏制を規定する民法750条が、氏の変更を強制されない自由を侵害するものとして争われました。

最高裁判所は、氏名は社会的にみれば個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時にその個人からみれば人が個人として尊重される基礎でありその個人の人格の象徴であって人格権の内容を構成するとしました。しかし、氏は婚姻及び家族に関する法制度の一部として法律がその具体的な内容を規律しているものであるから、具体的な法制度を離れて氏が変更されること自体を捉えて直ちに人格権を侵害し違憲であるか否かを論ずることは相当ではないとしました。

本件で問題となっているのは婚姻という身分関係の変動を自らの意思で選択することに伴って夫婦の一方が氏を改めるという場面であって、自らの意思に関わりなく氏を改めることが強制されるというものではないとしました。

氏は個人の呼称としての意義があり名とあいまって社会的に個人を他人から識別し特定する機能を有するものであることからすれば、自らの意思のみによって自由に定めたり又は改めたりすることを認めることは本来の性質に沿わないものであるところ、氏に名とは切り離された存在として社会の構成要素である家族の呼称としての意義があることからすれば、氏が親子関係など一定の身分関係を反映し婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがありうることはその性質上予定されているとしました。

以上に鑑みると、婚姻の際に氏の変更を強制されない自由が憲法上の権利として保障される人格権の内容であるとはいえず、同規定は憲法13条に違反するものではないとしました。

もっとも、氏が名とあいまって個人を他人から識別し特定する機能を有するほか人が個人として尊重される基礎でありその個人の人格を一体として示すものでもあることから、氏を改める者にとってアイデンティティの喪失感を抱いたり従前の氏を使用する中で形成されてきた他人から識別し特定される機能が阻害される不利益や個人の信用や評価や名誉感情等にも影響が及ぶという不利益が生じたりすることがあることは否定できないとしました。婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益等は憲法上の権利として保障される人格権の内容であるとまではいえないものの、氏を含めた婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに当たって考慮すべき人格的利益であり、憲法24条の認める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討に当たって考慮すべき事項であるとしました。

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