内閣総理大臣の任命
天皇は、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命します。「国会の指名に基いて」とは国会の指名どおりに任命しなければならないということであり、天皇はもちろん内閣にも裁量の余地はありません。任命に際して天皇に助言と承認を行うのは、総辞職後の内閣です。
最高裁判所長官の任命
天皇は、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長たる裁判官を任命します。内閣の指名に基づくため、実際上は内閣が任命するのと変わりません。
憲法改正、法律、政令及び条約の公布
公布とは、広く国民に知らせることをいいます。
公布の対象となる憲法改正とは、96条の手続で憲法を改正したときの法形式をいいます。法律とは、59条により国会が制定する法形式をいいます。政令とは、内閣が制定する法形式をいいます。内閣以外の行政機関が制定する命令は政令に当たりません。条約とは、73条3号及び61条に従って内閣が外国と締結する取決めの法形式をいいます。行政協定は条約に含まれないため天皇の公布を必要としません。
公布の法的性質について、これらの国法は、憲法所定の手続で制定された時点で成立しますが、効力を発生するのは公布されて以降です。公布後どの時点で発効するかは場合によって異なります。
公布の期日については、憲法改正の場合は改正が成立したときに直ちに公布しなければなりません。法律の場合は、法律の成立が内閣を経由して奏上された日から30日以内に公布します。政令と条約の場合は、公布の時期について法律上特に制限はありません。
公布の方法については特に法律は制定されていませんが、実際上は官報により行われています。判例も官報による公布を正式な方法と認めています。官報による公布があったとされるのは、一般の国民がその官報を見ることができるに至った最初の時点です。
国会の召集
召集とは、一定期日に議員を集会させることと会期を開始させることの双方を含む概念です。国会が活動するためには天皇の召集が必要となります。
召集の実質的決定権について、臨時会の召集は内閣がその決定権を有しますが、常会と特別会についてはその決定権者が明文上規定されていません。この点、内閣の助言と承認に国事行為の実質的決定権を含ませる立場からは、召集の決定権は内閣にあることになります。他方、助言と承認に実質的決定権を含まないという立場からも、歴史上内閣に召集権があるのは明らかであることや、53条がすべての召集権が内閣にあることを前提としていることなどを理由として、召集の実質的決定権は内閣にあるとされています。
衆議院の解散
解散とは、議員の任期が満了する前に議員の身分を終了させることをいいます。衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければなりません。解散と総選挙の後に国会が召集されたときは、内閣は総辞職し、新しい構成の国会により内閣総理大臣が指名されます。
解散の実質的決定権について、解散は天皇の国事行為とされており形式上解散を行うのは天皇ですが、誰が解散を決定する権限を有しいかなる場合に解散を決定しうるかについて憲法は明確に定めた規定を置いていません。そのため、解散の実質的決定権の所在と根拠、解散事由などについて争われています。
総選挙の施行の公示
総選挙とは、全国すべての選挙区において同時になされる選挙をいいます。公職選挙法にいう衆議院の総選挙と参議院の通常選挙が含まれます。
公示とは、期日を決めて一般に知らせることをいいます。施行とは、総選挙を行うことをいい、この決定権は内閣に帰属します。
認証
認証とは、一定の行為が適法になされたことを証明することをいいます。認証は行為の効力要件ではありません。
国務大臣の任免について、7条にいう国務大臣には内閣総理大臣は含まれません。国務大臣の任免権は内閣総理大臣にあり、天皇はその任免を認証します。
法律の定めるその他の官吏の任免の認証について、官吏とは公務員の中から地方公務員、国会議員および国会職員を除いたものをいいます。法律により天皇が任免を認証する官吏すなわち認証官とされているものには、最高裁判所判事、高等裁判所長官、検事総長、人事官、大使および公使などがあります。
主要な官職について、指名、任命、認証の関係は次のとおりです。
| 官職 | 指名 | 任命 | 認証 |
|---|---|---|---|
| 内閣総理大臣 | 国会 | 天皇 | |
| 国務大臣 | 内閣総理大臣 | 天皇 | |
| 最高裁判所長官 | 内閣 | 天皇 | |
| 最高裁判所裁判官 | 内閣 | 天皇 | |
| 下級裁判所裁判官 | 最高裁判所 | 内閣 | 高裁長官のみ天皇 |
全権委任状とは、特定の条約の締結に関し全権を委任する旨を表示する文書です。天皇はこれを認証します。
大使および公使の信任状について、大使と公使は外交使節の階級をいい、信任状とはその者を外交使節として派遣する旨を表示する文書です。天皇はこれを認証します。
恩赦の認証
恩赦とは、行政権が犯罪者の赦免を行うことをいいます。恩赦法に従って恩赦を決定する権限は内閣に属し、天皇はこれを認証します。
恩赦の種類は3つに分類されます。政令で一般的に行うものとして大赦があります。特定の者に対し個別的に行うものとして特赦と刑の執行の免除があります。一般的にも個別的にも行いうるものとして減刑と復権があります。
栄典の授与
栄典とは、その人の栄誉を表彰するために与えられる位階や勲章などをいいます。栄典の授与を天皇の国事行為としたことは天皇以外が栄典を授与することを禁止する趣旨ではなく、首相や知事などが授与する栄典制度を設けることも許されます。
批准書等の外交文書の認証
批准書とは、署名された条約を審査しそれを承認してその効力を確定させる国家の最終的意思表示文書をいいます。天皇はこれを認証します。
外国の大使および公使の接受
外国の大使および公使を日本国に受け入れる場合、まず日本政府がアグレマンすなわち承認を与え、次に来日した大使や公使が派遣国政府の発行した天皇宛ての信任状を提出し、その信任状が受理されたときから外交活動が開始されるのが通例です。
儀式の挙行
儀式を行うとは、天皇が儀式を主宰することと解されています。その儀式は私的ではなく国家的な性格のものでなければならず、かつ政教分離の原則から宗教的なものであってはなりません。
皇室の財産授受
皇室に不明朗な財産が流れ込んだり、皇室から自由に財産が流れ出たりすることで世間の疑惑を招いたり、皇室と特定の者との好ましくない結び付きが生じたりしないように、皇室関係の財産授受には国会の議決が要件とされています。日本国憲法は、皇室財産の国有化、皇室の財産授受に対する国会の統制、皇室費用に対する国会の議決を通じて、皇室財産に対する民主的コントロールを行っています。
本条にいう皇室とは、それを構成する天皇及び皇族の各個人を指し、皇室それ自体の存在を意味するものではありません。ここでいう天皇は私人としての天皇であり、私人としての天皇及び皇族は一般人と同じ財産法上の能力を持ちますが、本条はそれに特別の制限を加えるものです。
財産の授受について、皇室外から皇室への財産の移転は有償と無償の移転のすべてを含みます。皇室から皇室外への財産の移転は、無償であれば賜与に該当し、有償であれば対価が皇室外から皇室への財産の移転となるため、いずれも国会の議決を必要とします。ただし、本条は皇室と国民の間の財産の移転に関するものであり、皇室内部の財産の移転を制限するものではありません。
国会の議決の方法については、法律や予算の議決の場合と異なり衆議院の優越はありません。なお、皇室費用は予算に計上されるため、皇室費用についての国会の議決には衆議院の優越が認められます。
例外的に国会の議決が不要とされる場合もあります。相当の対価による売買等の通常の私的経済行為に係る場合、外国交際のための儀礼上の贈答に係る場合、公共のためになす遺贈または遺産の賜与に係る場合等については、その都度国会の議決を経なくても憲法の趣旨に反しないとされています。
アプリの紹介
過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。
