在監目的
在監目的は、拘禁、戒護すなわち逃亡、罪証隠滅、暴行、自他殺傷の防止と規律維持等、および矯正教化にあります。
在監者の人権制約の根拠
在監者の人権制約の根拠は、憲法自身が在監関係の存在と自律性を憲法秩序の構成要素として認めていることにあるとされています。
制約の限界
在監者といえども憲法上の権利は原則として保障されるべきであるから、権利の制限は在監目的達成のための必要最小限度にとどまるものでなければなりません。特に、未決拘禁者には無罪推定原則が及んでいることから、その権利制限については極めて慎重でなければなりません。
喫煙の禁止
最高裁判所は、監獄内においては拘禁の目的に照らし必要な限度で被拘禁者に対して合理的制限が加えられるとしました。その制限が必要かつ合理的かどうかは、制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容および具体的制限の態様の衡量により決せられるとしました。そのうえで、喫煙を許すと罪証隠滅や火災発生のおそれがあり、他面たばこは嗜好品にすぎないので、その制限は必要かつ合理的なものであるとして、未決拘禁者の喫煙を禁止する規定は憲法13条に反しないとしました。
よど号ハイジャック記事抹消事件
よど号ハイジャック記事抹消事件では、勾留されている在監者が私費で新聞を定期購読していたところ、拘置所の所長が航空機乗っ取り事件に関する記事を墨で塗りつぶして配布したことが争われました。
最高裁判所は、およそ各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接しこれを摂取する機会を持つことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものであり、また民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達と交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも必要なところであるとしました。そして、新聞紙や図書等の閲覧の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法19条の規定や表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨、目的からいわば派生原理として当然に導かれるところであり、また憲法13条の規定の趣旨に沿うものでもあるとしました。
しかしながら、このような閲覧の自由も逃亡及び罪証隠滅の防止という勾留の目的のためのほか、監獄内の規律及び秩序の維持のために必要とされる場合にも一定の制限を加えられるとしました。もっとも、未決勾留により拘禁される者は原則として一般市民としての自由を保障されるべき者であるため、制限が許されるためには当該閲覧を許すことにより規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、被拘禁者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該新聞紙や図書等の内容その他の具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつその場合においても制限の程度は障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきであるとしました。
信書の発受の制限
受刑者の信書の一部抹消について最高裁判所は、監獄内の規律及び秩序の維持に障害を生ずること並びに受刑者の教化を妨げることを理由とする信書の一部抹消が違法なものとはいえないとした事例があります。
死刑確定者の信書発送の不許可処分について最高裁判所は、死刑確定者の拘禁の趣旨、目的、特質に鑑みれば、死刑確定者の信書の発送の許否は死刑確定者の心情の安定にも十分配慮して判断して決定すべきものであり、具体的場合における判断は拘置所長の裁量に委ねられているものと解すべきであるとしました。
受刑者の親族でない者との信書の発受
最高裁判所は、受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は、これを許可することにより監獄内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限ってこれを制限することが許されるとしました。そして、旧監獄法の規定はその文言上、上記要件及び範囲でのみ制限が許されることを定めたものと解するのが相当であり、憲法21条および14条1項に違反しないとしました。
ただし、具体的事情のもとで障害が生ずる相当の蓋然性があるかどうかについて考慮しないで信書の発信を不許可とした場合には、裁量権の範囲を逸脱しまたはその濫用をしたものとして違法な処分であるとした事例もあります。
その他の制約
逃亡の防止等の在監目的から考えて、民事訴訟の法廷に出席すること、および公職選挙における投票を禁止することは憲法上許容されます。
受刑者に宗教上の礼拝を強制することは憲法違反となります。
なお、監獄法は現在「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に改正されており、在監者の権利義務の明確化等が図られています。もっとも、同法においては権利制限の要件について「障害を生ずるおそれがあるとき」という文言が多用されており、刑事施設の長及び職員の裁量の余地がいまだに大きいとの批判があります。
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