未遂減免
43条は犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者はその刑を減軽することができると定めています。ただし自己の意思により犯罪を中止したときはその刑を減軽し又は免除します。44条は未遂を罰する場合は各本条で定めると規定しています。
罪数論総説
罪数論とは1人の行為者が数個の罪を犯した場合の処理に関する問題をいいます。具体的には当該行為が1個の罪すなわち一罪か複数の罪すなわち数罪かという問題と数個の罪の場合の刑の処断の仕方が問題となります。
犯罪が一罪か数罪かの基準について判例は構成要件標準説を採用しています。罪数決定の基準を構成要件に該当する回数により判断するものであり犯罪は構成要件該当性を基準に成立するから犯罪が何個成立したかは構成要件該当性を基準とするほかはないことを根拠とします。
罪数論の整理
一罪には単純一罪、法条競合及び包括一罪があり数罪には科刑上一罪、併合罪及び単純数罪があります。単純一罪、法条競合及び包括一罪はいずれも一罪が成立し一罪として処断されます。科刑上一罪すなわち観念的競合及び牽連犯は数罪が成立しますが一罪として処断されます。併合罪及び単純数罪は数罪が成立し数罪として処断されます。
単純一罪
単純一罪とは構成要件該当事実が1回惹起された場合をいいます。
法条競合
法条競合とは条文上数個の構成要件に該当するようにみえるが実は構成要件相互の関係で1個の構成要件にしか該当しない場合をいいます。
法条競合には特別関係、補充関係及び択一関係があります。特別関係とは競合する罰条が一般法と特別法の関係に立つ場合であり殺人罪と同意殺人罪の関係や単純横領罪と業務上横領罪の関係がその例です。補充関係とは競合する罰条が基本法と補充法の関係にある場合であり基本法が適用されない場合のみ補充法が適用されます。傷害罪と暴行罪の関係や建造物等以外の放火罪と現住建造物放火罪の関係がその例です。択一関係とは競合する罰条が排他的関係にある場合であり競合する罰条のうちどれか1個の罰条が適用されれば他は適用されません。横領罪と背任罪の関係や未成年者誘拐罪と営利目的誘拐罪の関係がその例です。
包括一罪の意義
包括一罪とは数個の法益侵害結果が発生しているものの法益侵害ないし行為の一体性の観点により1つの構成要件によって包括的に評価されて一罪となる場合をいいます。包括一罪には重い罪の刑に軽い罪が吸収される場合すなわち吸収一罪と同じ数個の罪を包括して一罪と評価する場合すなわち狭義の包括一罪があります。
吸収一罪
吸収一罪は付随犯、共罰的事前行為及び事後行為並びに混合的包括一罪に分けられます。
付随犯とは1個の行為から異なる構成要件にまたがる数個の結果が発生した場合に主たる法益侵害に通常随伴する法益侵害が吸収され包括して一罪のみが成立する場合をいいます。主たる法益侵害の刑が重く圧倒的に重要でありしばしば軽い罪も随伴するような場合に軽い罪を独立に処罰する必要がないという価値判断に基づくものです。
共罰的事前行為とは同一の法益侵害に向けられた複数の行為のうち手段又は原因である軽い罪が目的又は結果である重い罪に吸収され包括して一罪のみが成立する場合をいいます。かつては不可罰的事前行為と呼ばれていましたが重い罪に吸収される軽い罪は不可罰なのではなくあくまでも犯罪としては成立しているため軽い罪にのみ関与した者には共犯が成立します。ただ軽い罪が重い罪とともに処罰されるので重い罪から独立して処罰されないという意味にすぎません。
共罰的事後行為とは同一の法益侵害に向けられた複数の行為のうち目的又は結果である軽い罪が手段又は原因である重い罪に吸収され包括して一罪のみが成立する場合をいいます。もっとも事後行為に新たな法益侵害が伴う場合にはもはや共罰的事後行為とはいえず事前行為に成立する罪の刑に吸収されることはありません。判例は盗んだ預金通帳を用いて銀行の窓口で現金を引き出した行為は新たな法益侵害を伴うことから共罰的事後行為とはいえず窃盗罪と詐欺罪の併合罪になるとしています。
混合的包括一罪とは異なる罪名の数個の行為の間に密接な関係が存在する場合に包括して一罪が成立するものをいいます。
狭義の包括一罪
狭義の包括一罪は構成要件上の包括一罪、接続犯及び連続犯並びに集合犯に分けられます。
構成要件上の包括一罪とは1個の構成要件の中に同一の法益侵害に向けられた数個の行為態様が規定されている場合に包括して一罪のみが成立するものをいいます。判例によれば同一の犯人を蔵匿し隠避させたときは包括して1個の犯人蔵匿及び隠避罪が成立します。また同一の被害者を逮捕し引き続き監禁したときは包括して1個の逮捕及び監禁罪が成立します。
接続犯とは同一の法益侵害に向けられた数個の行為が1個の意思決定に基づき時間的及び場所的に密接して反復された場合に包括して一罪のみが成立するものをいいます。注意すべきであるのはたとえ1個の意思決定に基づき接続して行われた同種の行為であっても具体的な被害者ないし被害法益が異なる場合には包括一罪とはならないということです。また接続して行われた同種の行為であり具体的な被害者ないし被害法益が同じ場合でも1個の意思決定に基づく行為でなければやはり包括一罪とはなりません。
連続犯とは接続犯ほど時間的及び場所的な密接性はないものの同一の構成要件に当たる数個の行為を時間的及び場所的に連続して行った場合に包括して一罪のみが成立するものをいいます。
集合犯とは構成要件上数個の同種の行為が反復されることを予定している犯罪の場合に包括して一罪のみが成立するものをいいます。集合犯には常習性を有する行為者が一定の行為を反復することが予定されている常習犯、生業として一定の行為を反復することが予定されている職業犯及び営利の目的をもって一定の行為を反復することが予定されている営業犯があります。
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