不同意性交等罪の保護法益

不同意性交等罪の保護法益は個人の性的自由です。性的自由とは性的行為を行うかどうか及び誰を相手方として行うかを自由に意思決定することをいいます。

不同意性交等罪の構造

本罪における性交等は不同意わいせつ罪におけるわいせつな行為の一態様にほかなりません。刑法はわいせつな行為のうち性交等を177条により特に重く処罰しています。そのため不同意性交等罪は不同意わいせつ罪の加重類型であり特別類型と解されており本罪が成立する場合には法条競合により不同意わいせつ罪の規定の適用が排除されます。

不同意性交等罪の構造は不同意わいせつ罪の構造と同じです。性交等の要件を除き不同意わいせつ罪において説明した内容が不同意性交等罪においても同様に妥当します。

性交等の意義

性交等とは性交、肛門性交、口腔性交及び膣若しくは肛門に身体の一部又は物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。膣若しくは肛門に身体の一部又は物を挿入する行為であってわいせつなものは令和5年改正により新たに性交等に含めることとされた態様です。なおこの態様についてはわいせつなものに限定されていますがこれは医療行為や介護の際に行われる行為であってわいせつなものとはいえない行為を除外する趣旨です。

口腔に身体の一部や物を挿入するわいせつな行為や行為者が被害者をして行為者自身の膣や肛門に身体の一部や物を挿入させるわいせつな行為はこの態様に含まれない以上不同意性交等罪は成立しませんが別途不同意わいせつ罪が成立しえます。

未遂

本罪は性交等が行われることにより既遂となります。不同意わいせつ罪と同様に未遂犯も処罰されます。実行の着手がどの時点で認められるかについては不同意わいせつ罪において説明したことがそのままあてはまります。

176条1項各号の原因行為又はそれらに類する行為が行われるにとどまった場合においてその行為者に不同意わいせつ罪の未遂犯が成立するか不同意性交等罪の未遂犯が成立するかはその行為者の目的すなわちわいせつな行為を行う目的であったのかそれとも性交等に及ぶ目的であったのかにより区別されます。

また、わいせつな行為が行われた場合においてその行為者に不同意わいせつ罪の既遂犯が成立するか不同意性交等罪の未遂犯が成立するかについてもその行為者の目的により区別されます。

罪数

16歳未満の者に対し177条1項又は2項の要件を満たす形で性交等の行為をした場合は177条の各項の区別なく177条に該当する一罪が成立します。

同一の被害者に対して同一の機会に不同意わいせつ行為を行いさらに不同意性交等を行った場合には不同意性交等罪の包括一罪となります。

同一の場所において数人に対して不同意性交等を行った場合にはそれぞれの被害者との関係で複数の不同意性交等罪が成立し併合罪として処断されます。

非親告罪

不同意性交等罪のほか不同意わいせつ罪、監護者わいせつ罪、監護者性交等罪及びこれらの罪の未遂罪は非親告罪です。これは告訴に係る被害者の精神的負担の軽減を図るという趣旨に基づきます。同じ趣旨からわいせつ目的又は結婚目的の略取誘拐罪なども非親告罪とされています。

監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の保護法益

監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の保護法益は18歳未満の者の性的自由です。

監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪

179条1項は18歳未満の者に対しその者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は不同意わいせつ罪の例によると定めています。同条2項は18歳未満の者に対しその者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は不同意性交等罪の例によると定めています。

本罪は子の親などの監護者がその地位や関係性を利用して性的行為に及んだ場合のように同意がおよそ問題とならない状況下にあったと捉えられる場合を類型化したものです。たとえ被害者に対する暴行又は脅迫等の事実が認められなくても不同意わいせつ罪や不同意性交等罪と同等の悪質性と当罰性が認められることからこれを重く処罰するものです。

監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の要件

本罪の適用にあたっては176条1項各号の原因行為や原因事由の有無や被害者が同意しない意思を形成し表明し若しくは全うすることが困難な状態にあったかどうかを問いません。

本罪は不同意わいせつ罪や不同意性交等罪では処罰できない行為を捕捉する類型であるため不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する場合には本罪は成立しません。

本罪の客体は18歳未満の者です。被害者が16歳未満の者であるときは本罪に関する179条ではなく16歳未満の者に対する不同意わいせつ罪に関する176条3項又は16歳未満の者に対する不同意性交等罪に関する177条3項が適用されます。

現に監護する者の意義

現に監護する者とは事実上現に18歳未満の者を監督及び保護する関係にあることをいいます。民法820条の監護と同様の意味ですが法律上の監護権の存否を問いません。もっとも現にその者の生活全般にわたって経済的及び精神的な観点から依存と被依存又は保護と被保護の関係が継続的に認められることが求められます。実親、養親及び児童養護施設の職員などがこれにあたりえます。法律上の監護権を有する者であっても実際に監護しているという実態がなければ現に監護する者にあたらないこともありえます。

影響力があることに乗じて

影響力とは監護者が被監護者の生活全般にわたって経済的及び精神的な観点から現に被監護者を監督し保護することにより生じる影響力をいいます。乗じてとは影響力を及ぼしている状態において行為を行うことをいいます。影響力があることを明示して積極的にこれを利用することまでは必要ではありません。ただし行為者が監護者であることを相手方に認識させなかった場合には影響力があることに乗じてにはあたりません。

監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の未遂と共犯

本罪は未遂犯も処罰されます。実行の着手時期はわいせつ行為又は性交等の行為が開始された時点です。

本罪は現に監護する者を身分とする真正身分犯です。監護者の身分のない者が監護者と共謀して監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合には非監護者には65条1項の適用により監護者性交等罪の共同正犯が成立します。

不同意わいせつ等致死傷罪

181条1項は不同意わいせつ罪若しくは監護者わいせつ罪又はこれらの罪の未遂罪を犯しよって人を死傷させた者は無期又は3年以上の拘禁刑に処すると定めています。同条2項は不同意性交等罪若しくは監護者性交等罪又はこれらの罪の未遂罪を犯しよって人を死傷させた者は無期又は6年以上の拘禁刑に処すると定めています。

本罪は不同意わいせつ罪、不同意性交等罪、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を基本犯とする結果的加重犯です。基本犯が未遂罪にとどまる場合であっても死傷結果が生じれば本罪の既遂犯が成立します。

死傷結果の範囲

死傷結果はわいせつな行為や性交等の各行為から生じた場合のほか手段としての暴行や脅迫から生じた場合であっても本罪が成立します。さらに判例は不同意性交の被害者が逃走の際に転倒して傷害を負った場合には不同意性交等致傷罪が成立するとしており基本犯に随伴する行為から死傷結果が発生した場合においても本罪の成立を認めるという立場に立っています。もっとも被害者がショックのあまり自殺した場合には被害者の自律的な意思決定に基づく行為が介在しているので本罪は成立しないと解されています。

判例はわいせつな行為を行う意思を喪失した後にその場から逃走するために被害者に暴行を加えて傷害を負わせた場合であってもそのような暴行はわいせつ行為に随伴するものといえるとして不同意わいせつ致傷罪の成立を認めています。もっとも判例の立場では広く本罪の成立を認めることになるので少なくとも基本犯と時間的及び場所的に接着してなされた行為から死傷結果が発生することが必要であると解されています。

死傷結果について故意がある場合

殺人の故意がある場合について判例は本罪と殺人罪の観念的競合となるとしています。仮に本罪のみが成立すると解すると刑の上限が死刑ではなく無期拘禁刑である点で不都合であり不同意わいせつ罪や不同意性交等罪と殺人罪の観念的競合と解すると刑の下限がかえって低くなり刑の均衡を失するため判例の立場によるほかないと解されています。

他方で傷害の故意がある場合について判例はありませんが一般的に本罪のみが成立すると解されています。不同意わいせつ罪や不同意性交等罪と傷害罪の観念的競合とすると傷害の故意がない場合である本罪よりも刑がかえって軽くなり刑の均衡を失するからです。

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