外国人の選挙権
国政レベルおよび地方レベルの選挙権が外国人に憲法上保障されているかどうかについて、3つの説があります。
要請説は、定住外国人については憲法上選挙権が保障されていると解します。この説では、定住外国人に選挙権を保障しない現行の公職選挙法は違憲であり、これを法律で保障することが憲法上要請されているとします。その根拠として、国民主権原理の根拠にあるのは、一国の政治のあり方はそれに関心を持たざるを得ない定住外国人を含むすべての人の意思に基づいて決定されるべきだとする考え方であることが挙げられます。この立場は、15条1項の「国民」と93条2項の「住民」はともにその政治社会における政治的決定に従わざるを得ないすべての者と考えています。
許容説は、外国人には憲法上選挙権は保障されていないとしつつも、国政レベルにおいては法律により外国人に選挙権を保障することは禁止されるが、地方レベルにおいて法律により定住外国人に選挙権を保障することは憲法に反しないと解します。その理由として、外国人に地方政治レベルでの選挙権を認めても、地方自治体の行為は法律に基づき法律の枠内で行われる以上、正当性の淵源が国民に存するという国家的正当性の契機が切断されてしまうわけではなく国民主権に反しないこと、および地方自治の本旨に基づく地方公共団体のあり方を考えると外国人の地方レベルでの選挙権はむしろ住民自治の理念に適合することが挙げられます。この立場は、93条2項の「住民」にはその地域内に住所を有する者も含まれ、必ずしも外国人を排斥するものではないと考えています。
禁止説は、国政レベルでも地方レベルでも法律により外国人に選挙権を付与することは憲法上禁止されると解します。その理由として、国会議員の選挙権も地方議会の選挙権も同じく国民主権条項から派生することが挙げられます。この立場は、15条1項の「国民」と93条2項の「住民」とは全体と部分の関係にあり質的に等しいものと考えています。
選挙権に関する判例
最高裁判所は、国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法の規定は憲法15条および14条の規定に反しないと判示しました。
外国人の地方選挙権に関する最高裁判決は次のとおり判示しました。まず、憲法15条1項は国民主権の原理に基づき公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものであり、主権が日本国民に存するものとする憲法前文及び1条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味するとしました。そのため、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は権利の性質上日本国民のみをその対象とし、その保障は我が国に在留する外国人には及ばないとしました。
そして、国民主権の原理および15条1項の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、93条2項にいう住民とは地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、外国人に対して地方公共団体の長やその議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできないと判示しました。
もっとも、憲法第8章の地方自治に関する規定の趣旨に照らして、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、法律をもって地方公共団体の長やその議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されているものではないとしました。ただし、そのような措置を講ずるか否かは専ら国の立法政策にかかわる事柄であり、措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではないとしました。この判決は許容説に近い立場をとるものと解されています。
外国人の公務就任権
外国人に公務就任権すなわち公務就任の資格が認められるかについて争いがあります。
A説は、公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とし、外国人には公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わらない公務への就任権のみが認められると解します。これはいわゆる「当然の法理」と呼ばれ、政府の公定解釈です。
B説は、当然の法理を前提としつつ、国の公務員をその職務内容の性質に応じて3つに区分して考えます。第一に、直接的に統治作用にかかわる公務員については外国人が就任することは国民主権に反し許されないとします。第二に、間接的に統治作用にかかわる公務員については職務内容によって外国人が就任することが許されるものとそうでないものがあるとします。第三に、補佐的、補助的な事務や学術的、技術的な事務等に従事する公務員については国民主権原理との抵触は生じないため外国人が就任することは許されるとします。
東京都管理職選考事件
最高裁判所は次のとおり判示しました。公権力行使等地方公務員すなわち住民の権利義務を直接形成しその範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、またはこれらに参画することを職務とする公務員の職務は住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するとしました。
そして、国民主権の原理に基づき国及び普通地方公共団体による統治のあり方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであることに照らし、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属しその国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは本来我が国の法体系の想定するところではないとしました。
さらに、普通地方公共団体が公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは合理的な理由に基づくものであり、労働基準法3条にも憲法14条1項にも違反しないとしました。この点は特別永住者についても異なるものではないとされています。
外国人の請願権
国務請求権として位置付けられる請願権は参政権としての性格をも有していますが、外国人であるからといって制限されることはないと解されています。
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