後見開始の審判
7条は精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については家庭裁判所は本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により後見開始の審判をすることができると定めています。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるとは行為の結果を弁識するに足るだけの精神能力すなわち意思能力を欠くのを普通の状態としていることをいいます。
家庭裁判所は職権で後見開始の審判をすることはできず一定の者の請求が必要です。なお本人も後見開始の審判を請求することができ未成年者についても後見開始の審判をすることができます。さらに未成年後見人が選任されている場合であっても家庭裁判所は後見開始の審判をして成年後見人を付することができます。家庭裁判所は審判の要件を備えるときは必ず審判をしなければなりません。
後見開始の審判の効果
後見開始の審判がなされると審判を受けた者は成年被後見人となりこれに成年後見人が付されます。成年後見人は代理権、追認権及び取消権を有しますが同意権はありません。
成年後見人は家庭裁判所が職権で選任します。必要に応じて複数人選任でき法人を選任することも可能です。
成年被後見人となるのは後見開始の審判を受けたときであるため契約を締結した成年者がその後に後見開始の審判を受けたとき成年後見人はその契約の当時既にその成年者につき後見開始の事由が存在していたことを証明してもその成年者のした契約を取り消すことができません。
被保佐人や被補助人に対する後見開始の審判
被保佐人や被補助人本人が後見開始の審判の請求をするのに保佐人又は補助人の同意は不要であり保佐人も請求できます。家庭裁判所は被保佐人又は被補助人に対して後見開始の審判をする場合には保佐開始又は補助開始の審判を取り消します。後見開始の審判がなされると新たに成年後見人が選任され従来の保佐人又は補助人が当然に成年後見人となるわけではありません。
成年被後見人の法律行為
9条は成年被後見人の法律行為は取り消すことができるとし日用品の購入その他日常生活に関する行為はこの限りでないとしています。
成年被後見人のした行為は原則として成年後見人の同意の有無にかかわらず常に取り消すことができます。成年被後見人は日常生活に関する行為以外のすべての財産行為について行為能力を有せず成年後見人の同意を得て行った行為も常に取り消すことができます。また成年被後見人が契約締結当時完全な意思能力を有していても取り消すことができます。他方意思能力を欠くが後見開始の審判を受けていない者の行為は無効です。
日常生活に関する行為とは本人が生活を営むうえで通常必要な法律行為を意味し具体的範囲は各人により個別に判断されます。日常生活に関する行為は取消権の対象から除外されていますが成年後見人は日常生活に関する行為について成年被後見人を代理することができます。
成年被後見人の身分上の行為
成年被後見人が本心に復し意思能力が認められれば有効に婚姻、協議上の離婚及び遺言をすることができます。
取り消すことができる行為の取消し、後見開始の審判取消しの請求及び他の法定後見すなわち保佐又は補助の審判開始の請求は成年被後見人が単独でなすことができます。
後見開始の審判の取消し
10条は7条に規定する原因が消滅したときは家庭裁判所は一定の者の請求により後見開始の審判を取り消さなければならないと定めています。原因の消滅とは後見開始の実質的要件となる精神状態でなくなることをいい保佐又は補助開始の要件となる程度の精神状態まで回復した場合を含みます。成年被後見人が能力を回復しても家庭裁判所による後見開始の審判が取り消されなければ成年被後見人は制限行為能力者のままです。
保佐開始の審判
11条は精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については家庭裁判所は一定の者の請求により保佐開始の審判をすることができると定めています。ただし後見開始の原因がある者についてはこの限りではありません。なお補助開始の審判の場合とは異なり本人の同意は不要です。
保佐開始の審判があると被保佐人に保佐人が付されます。法人を選任することもできます。保佐人には同意権があり一定の重要な行為に同意をすることで被保佐人の不完全な管理権を補充する役目を有します。保佐人には代理権はありませんが被保佐人の申立て又は同意を要件として当事者等が申し立てた特定の法律行為について家庭裁判所が保佐人に代理権を付与することができます。
保佐人の同意を要する行為
13条1項は被保佐人が一定の行為をするにはその保佐人の同意を得なければならないと定めています。ただし日用品の購入その他日常生活に関する行為についてはこの限りではありません。
保佐人の同意を要する行為は以下のとおりです。元本を領収し又は利用すること、借財又は保証をすること、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること、訴訟行為をすること、贈与や和解又は仲裁合意をすること、相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること、贈与の申込みを拒絶し遺贈を放棄し負担付贈与の申込みを承諾し又は負担付遺贈を承諾すること、新築、改築、増築又は大修繕をすること、短期賃貸借に定める期間を超える賃貸借をすること及び以上の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすることです。
貸金の返済を受ける行為は元本を領収に当たります。なお利息や賃料の領収には同意は不要です。約束手形の振出は借財に当たります。時効利益の放棄や時効完成後の債務の承認には借財又は保証の規定が類推適用されます。不動産賃貸借の合意解除、電話加入権及び株式や著作権等の知的財産権処分は不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為に当たります。
家庭裁判所は被保佐人が13条1項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます。
保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは被保佐人は家庭裁判所に請求して保佐人の同意に代わる許可をもらうことができます。これは保佐人の権限濫用を防止する趣旨です。
保佐人の同意を得なければならない行為であってその同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは取り消すことができます。
保佐人の同意を要しない行為
成年被後見人の場合と同様に被保佐人は日用品の購入その他日常生活に関する行為を行うことができます。被保佐人が相手方の提起した訴えについて訴訟行為をするには保佐人の同意を要しません。被保佐人は不在者の財産管理人、社団法人の理事、任意代理人及び組合の業務執行者のいずれにもなれます。代理人は行為能力者であることを要せずまた保佐開始は委任の終了原因ではないためです。被保佐人も成年であれば婚姻の届出の証人になれます。
時効の更新の効力を生じる承認は保佐人の同意を要しません。保佐人の同意を得た場合であってもその同意にかかる法律行為を必ず行わなければならないわけではありません。保佐人の同意が得られず訴えを提起できなくてもその債権の消滅時効は進行します。不同意は事実上の障害にすぎないためです。
被保佐人が保佐人の同意を得て自己の不動産につき第三者との間で売買契約を締結した場合であっても被保佐人がその売買契約の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に陥っておりかつそのことにつき重大な過失がないときはその契約の取消しを主張することができます。
保佐開始の審判の取消し
14条1項は11条本文に規定する原因が消滅したときは家庭裁判所は一定の者の請求により保佐開始の審判を取り消さなければならないと定めています。原因の消滅とは意思能力を完全に回復したことあるいは補助開始の要件となる程度の精神状態まで回復したことをいいます。14条2項は審判によって追加された保佐人の同意を必要とする行為のみを取り消すものとしています。
補助開始の審判
15条1項は精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については家庭裁判所は一定の者の請求により補助開始の審判をすることができると定めています。ただし後見開始又は保佐開始の原因がある者についてはこの限りではありません。後見や保佐の制度では保護の対象にならないが通常人に比べ判断能力の不十分な者の保護のために補助の制度が設けられています。
本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには本人の同意がなければなりません。補助開始の審判はそれ自体の効果として同意権や代理権の付与を伴わないので補助開始の審判をなす場合には同時に同意権付与又は代理権付与の一方又は双方をしなければなりません。被補助人のための同意権又は代理権の付与が補助開始の審判の要件となります。
被補助人の能力の範囲
被補助人は家庭裁判所が審判で定めた特定の法律行為のみについて補助人の同意を得ないで単独で行ったときはこれを取り消すことができます。もっとも補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは被補助人は家庭裁判所に請求して補助人の同意に代わる許可をもらうことができます。これは補助人の権限濫用を防止する趣旨です。その他の行為は単独で有効になすことができます。
補助人
補助開始の審判があると被補助人に補助人が付されます。補助人の選任については成年後見人選任に関する規定が準用され複数あるいは法人を選任することもできます。
補助人に同意権を付与する場合には同意権は13条1項に列挙された特定の法律行為の一部に限られ審判開始後の事情の変化で対象となる法律行為の範囲を変更できます。
補助人に代理権を付与する場合には被補助人の申立て又は同意を要件として当事者等が申し立てた特定の法律行為について家庭裁判所が補助人に代理権を付与することができます。補助人に代理権だけが付与される場合には被補助人の行為能力は制限されません。
補助開始の審判の取消し
18条1項は15条1項本文に規定する原因が消滅したときは家庭裁判所は一定の者の請求により補助開始の審判を取り消さなければならないと定めています。家庭裁判所は同意権付与の審判の全部又は一部を取り消すことができます。同意権付与及び代理権付与のすべてを取り消す場合には補助開始の審判のみが存続しても意味がないため家庭裁判所の職権で開始の審判自体を取り消さなければなりません。
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