相続の意義
相続とは自然人の財産法上の地位すなわち権利及び義務をその者の死後に法律及び死亡者の最終意思の効果として特定の者に承継させることをいいます。法律の規定に基づいて生ずる相続を法定相続といい死亡者の最終意思に基づいて生ずる相続を遺言による相続といいます。
相続開始の原因
882条は相続は死亡によって開始すると定めています。ここでいう死亡には自然死亡と失踪宣告による擬制的な死亡の2つが含まれます。失踪宣告がなされると普通失踪の場合は失踪期間の満了時に、特別失踪の場合は危難終了時に死亡したものとみなされ相続が開始します。
相続開始の場所
883条は相続は被相続人の住所において開始すると定めています。
相続財産に関する費用
885条は相続財産に関する費用はその財産の中から支弁すると定めています。ただし相続人の過失によるものはこの限りではありません。
相続回復請求権
884条は相続回復の請求権は相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると定めています。相続開始の時から20年を経過したときも同様です。
この制度の趣旨は真正相続人による侵害の排除を認めこれを保護するとともに表見相続人を真正相続人と誤信して取引関係に入った第三者を保護し相続権の帰属及びこれに伴う法律関係の早期かつ終局的確定を図ることにあります。
相続回復請求権の法的性質
相続回復請求権の法的性質については独立権利説と集合権利説の対立があります。
独立権利説は相続回復請求権を包括承継人としての相続人の地位の確保に奉仕する制度であり相続開始当時の遺産の占有回復を目的とする個別的請求権とは異なる特別の請求権と解する見解です。
集合権利説は相続回復請求権を相続財産を構成する個々の権利の集合にすぎないがそれらの請求権を一括して短期の消滅時効に服させ取引安全を図る点に意味があると解する見解です。
相続回復請求権の当事者
相続回復請求権の権利者は遺産の占有を失っている真正相続人です。真正相続人の相続人は被相続人の相続回復請求権を行使することはできず相続人自身の相続権が侵害されたことを理由に相続人固有の相続回復請求権を行使することになります。
被告適格は表見相続人に限られます。表見相続人とは真正の相続人でないのに相続を根拠として相続財産を占有している者をいいます。表見相続人からの譲受人には被告適格はないとされていますが学説はこれでは譲受人が永久に物権的請求権の追及を受けることになり取引安全を害するとして批判的なものが多いです。
共同相続人間への適用
共同相続人間の相続権侵害についても884条が適用されますが侵害による相続権の侵害が悪意又は有過失に基づく場合は適用されず消滅時効を援用できないとされています。相続権の侵害につき悪意又は有過失のある共同相続人は実質において一般の物権侵害者ないし不法行為者であり消滅時効の援用を認められるべき者には当たらないためです。共同相続人の1人が遺産分割協議書を偽造し相続財産である不動産について自己の持分を超えて所有権移転登記をした場合がその例です。
相続権を侵害している共同相続人の1人が悪意又は有過失で相続回復請求の消滅時効を援用できない場合はその相続人から相続財産を譲り受けた第三者も時効を援用できないとされています。
消滅時効の起算点
相続権を侵害された事実を知るとは相続開始の事実を知るだけでなく自分が真正相続人であることを知りしかも自分が相続から除外されていることを知ることをいいます。
表見相続人からの第三取得者は消滅時効を援用できないとされています。20年の期間の性質については学説は除斥期間としていますが判例は時効としています。
取得時効との関係
表見相続人は真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるとされています。884条所定の相続回復請求権の消滅時効と162条所定の所有権の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度であって特別法と一般法の関係にはないためです。
表見相続人からの第三取得者は表見相続人の占有をも併せ主張して時効取得できるとされています。
相続回復請求権の事前放棄
相続回復請求権の事前放棄は許されないとされています。
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