過失犯の意義

過失犯とは故意ではなく過失を成立要件とする犯罪です。刑法38条1項は故意犯の処罰を原則としており過失犯は法律に特別の規定がある場合に限って例外的に処罰されます。これは責任主義の要請に基づいています。判例は法律に特別の規定がある場合には明文の規定がなくても法律の精神からすると過失行為を処罰する趣旨であると解しうる場合を含むとしています。

過失犯処罰規定がある犯罪としては個人的法益に対する罪として過失傷害罪、過失致死罪、業務上過失致死傷罪及び重過失致死傷罪があります。社会的法益に対する罪としては失火罪、過失激発物破裂罪、業務上失火罪、重失火罪、業務上過失激発物破裂罪、重過失激発物破裂罪、過失建造物等浸害罪、過失往来危険罪及び業務上過失往来危険罪があります。

過失の種類

通常の過失とは特別の限定を設けられていない一般の過失をいいます。

業務上の過失とは人の生命及び身体に危害を加えるおそれのある行為等を反復継続して行う者が高度の注意義務を課されている場合をいいます。刑が加重される根拠について判例及び通説は一定の危険な業務に従事する業務者には通常人よりも特に重い注意義務が課せられていることに注目しています。一方同じ行為に対して要求される注意義務は同一でなければならないとしたうえで業務者は通常人に比べて一般的に高度な注意能力を有することから注意義務違反の程度がより著しいことが加重処罰の根拠であるとする見解もあります。

重大な過失とは通常の過失に対して行為者の注意義務に違反した程度が著しい場合すなわち行為者としてわずかな注意を用いることによって結果を予見できかつ結果を回避することができる場合の過失をいいます。

過失犯の構造

故意犯は行為の内容が構成要件で明示されているので実行行為を特定しやすいのに対し過失犯は単に過失と表現されているだけなので具体的な構成要件の内容が不明確である点に特徴があります。過失とは注意義務違反をいいますが注意義務違反の内容をどのように解するかについて学説上の対立があります。

旧過失論

旧過失論は過失の内容を結果予見義務違反と捉える見解です。すなわち構成要件該当事実を予見可能であるのに不注意のため予見しなかった場合に過失が認められます。旧過失論は過失犯の外部的行為の部分につき故意犯との間に本質的な差異はなく過失は主観的なものであるとし過失を責任要素と位置付けます。過失犯における違法性は法益侵害及び危険の惹起という結果無価値にのみ求められます。

修正旧過失論は過失の内容を旧過失論と同様に結果予見義務違反と捉えますが構成要件的結果を生じさせる実質的危険性を有する行為が認められてはじめて過失犯の客観的構成要件が充足されると解し過失行為を限定することにより過失犯の処罰範囲を限定しようとする見解です。

新過失論

新過失論は過失の内容を結果回避義務違反と捉える見解です。すなわち結果の発生を予見しながらもそれを回避するために一般人がとるであろう行為をとらなかった場合に過失が認められます。予見義務は回避義務の前提として位置付けられます。新過失論は過失犯における違法性は客観的注意義務違反すなわち基準行為からの逸脱という行為無価値にも求められるとし予見可能性を基準とする旧過失論では予見可能性が認められれば直ちに処罰することになりかねないため過失を結果回避義務違反と捉えることで処罰範囲を限定すべきであるとします。新過失論は過失を構成要件要素及び違法要素として一般人基準で判断するとともに責任要素として本人基準でも判断します。

新過失論に対しては結果回避のための適切な措置の内容が明確ではないから行政取締法規から導出せざるを得ず行政取締法規に違反する行為から結果が発生すれば過失が肯定される傾向があるため刑法上の過失犯が行政取締法規違反の結果的加重犯になってしまうとの批判があります。

新新過失論

新新過失論は過失の内容を結果回避義務違反と捉える点では新過失論と同様ですが一般人ならば結果の発生がありうるという危惧感を抱く場合であるにもかかわらずその危惧感を打ち消すに足るだけの結果防止措置を採らなかった場合に過失が認められるとする見解です。結果の具体的予見可能性を要求していたのでは未知の危険により結果が生じた場合に対応することができないことをその根拠としています。

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