偽証の罪の保護法益

偽証の罪の保護法益は国の審判作用すなわち裁判及び懲戒処分の適正な運用です。

偽証罪

169条は法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは3月以上10年以下の拘禁刑に処すると定めています。

証言拒否権を有する者も宣誓の上で拒否権を行使せず偽証すれば本罪に該当します。宣誓した証人による証言は証拠としての信憑性が高く虚偽の陳述によってそれに基づいた誤った審判がなされる危険性が高いことから本罪はこのような場合に限って処罰することとしています。そのため宣誓は法律の定める手続によりなされた適法かつ有効なものでなければならず宣誓無能力者に誤って証人として宣誓させた上でその者が虚偽の陳述をした場合には偽証罪は成立しません。

虚偽の陳述の意義

虚偽の陳述の虚偽の意義については主観説と客観説が対立しています。

主観説は虚偽とは証人の記憶に反することであるとします。証人の記憶は確実な信憑性を有するとは限らないため証人が自ら実際に体験したことだけを信頼できるものとして扱うよりなく体験しない事実を陳述すること自体が国の審判作用を誤らせるものと解すべきであること及び偽証罪は行為者の心理的過程又は状態の表出と認められる行為が罪とされる表現犯であることがその理由です。判例はこの立場をとっています。これに対しては証人の内心と異なった発言をしたという義務違反そのものを処罰するのは妥当でないこと及び偽証罪を表現犯と解し主観的違法要素を認めることになることが批判されています。

客観説は虚偽とは客観的事実に反することであるとします。証人がその記憶に反する陳述をしてもその内容が客観的事実に合致していれば国の審判作用を害する危険はないことがその理由です。これに対しては証人が自己の記憶に反する事実を真実と信じて陳述したときは真実でなかった場合でも故意が阻却され不可罰とならざるを得ず不都合であること、証人は客観的真実を陳述する義務を負うことになるが人的証拠としての意義を失い鑑定人と同じになること及び偽証罪を具体的危険犯に近づけて理解することになることが批判されています。

偽証罪の既遂時期と罪数

本罪は1回の尋問手続における陳述全体を終了した時に既遂に達します。国の審判作用が現実に害される必要はなく抽象的危険犯です。虚偽の陳述を行っても1回の尋問手続における陳述が終了するまでにこれを是正したときは本罪を構成しません。1回の証人尋問手続の間に数個の虚偽の陳述が行われても単純一罪です。

財物騙取の目的で訴訟を提起した者がその目的を遂げるために偽証した場合は偽証罪と詐欺罪との牽連犯となります。民事訴訟により虚偽の債権を主張して裁判所を欺罔し財物を騙取しようとした者が他人を教唆して偽証させた場合は偽証教唆罪と詐欺未遂罪との牽連犯です。

自白による刑の減免

170条は偽証罪を犯した者がその証言をした事件についてその裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときはその刑を減軽し又は免除することができると定めています。

被告人による偽証教唆の可罰性

被告人が自己の刑事被告事件について虚偽の陳述をしても偽証罪とはなりませんが他人を教唆して自己の被告事件について偽証させた場合に偽証教唆罪が成立するかについて争いがあります。

甲説は偽証教唆罪が成立するとします。甲1説は犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪の場合と同様に他人を犯罪に陥れることまで期待可能性が欠けるとはいえないことを理由とします。甲2説は被告人の教唆によって偽証した者が刑罰に処せられ教唆した本人が刑罰を免れるのは妥当でなく他人を教唆して偽証させることは防御権の範囲を超えていること及び積極的に裁判官の審判を誤らせる行為である偽証はより可罰的であるべきことを理由とします。判例はこの立場をとっています。

乙説は偽証教唆罪は成立しないとします。自ら正犯として偽証しても処罰されないのであるから共犯として他人に自己の刑事被告事件について偽証させてもその罪責を問うべきでないことは証拠隠滅罪との均衡上当然であること及び被告人の偽証教唆は自己の刑事被告事件に関する証拠隠滅行為としてもともと不可罰であることがその理由です。

丙説は犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪の場合には教唆犯は成立しないが偽証罪の場合には教唆犯が成立するとします。被告人が偽証罪の主体となりえないのは刑事訴訟法上の制度的制約にすぎず制度上証人適格を認めれば主体となりうるから他人を偽証させる行為も当然許されないこと及び証拠隠滅罪が証拠方法提出の段階もしくはそれ以前の不法な行為であって審判の適正を誤らせる危険性は間接的であるのに対して偽証罪は直接証拠調べの段階における不法な行為であって審判の適正を誤らせる危険性はより直接的であることがその理由です。

偽証罪には105条のような刑の任意的免除の規定がないため刑の免除をすることはできません。

虚偽鑑定等罪

171条は法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは偽証罪の例によると定めています。虚偽の意義について判例は自己の所信に反する虚偽の陳述がたまたま客観的真実に合致していても虚偽鑑定罪の成立を妨げないとして主観説の立場に立っています。自白による特例も適用されます。

虚偽告訴の罪の保護法益

虚偽告訴の罪の保護法益について判例及び通説は第一次的には国家の適正な刑事司法作用及び懲戒作用、第二次的には個人の私生活の平穏であると解しています。したがって告訴等について他人の同意がある場合であっても虚偽告訴等罪が成立します。

虚偽告訴等罪

172条は人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は3月以上10年以下の拘禁刑に処すると定めています。

虚偽とは客観的事実に反することをいいます。申告の内容としての事実は刑事又は懲戒処分の原因となりうる程度の具体的な内容をもったものでなければなりません。申告の程度は捜査機関や懲戒権者らに特定の犯罪事実又は職務規律違反の行為があることを認知させこれに対して捜査又は懲戒権の発動を促す程度のものであることを要します。責任無能力者を対象とする場合でも国家の審判作用を誤らせるおそれがあるから申告された事実が法律上処分を受ける適格を有しなくても本罪の成立を妨げません。申告の方式は問わず告訴や告発の形式によらなくてもよく口頭による申告も含まれます。

申告すべき事実が虚偽であることの認識は未必的認識で足ります。人にとは行為者以外の他人をいい実在する人であることを要します。他人が刑事処分等を受けることがあるであろうという認識があれば足りその処分を希望する意思までは不要です。自己申告の場合すなわち自己が犯人の身代わりとなって処分を受ける目的で虚偽の申告をする場合には虚偽告訴罪は成立しませんが犯人隠避罪が成立しえます。虚無人すなわち実在しない人に対する申告もその虚無人に対する誤った刑事又は懲戒処分ということはあり得ないので虚偽告訴罪は成立しません。

虚偽告訴等罪の既遂時期

本罪は虚偽の申告が相当官署に到着することによって既遂となります。文書が相当官署に到達し捜査官などが閲覧しうる状態に置かれれば足り現実に閲覧されたことや検察官等が捜査に着手したこと又は起訴したことは必要ありません。文書を郵便に付して申告する場合には発送しただけでは既遂にならず到着したことを要します。

自白による刑の減免

173条は虚偽告訴等罪を犯した者がその申告をした事件についてその裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときはその刑を減軽し又は免除することができると定めています。

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