規制目的二分論
職業選択の自由に対する規制の違憲審査基準は「合理性」の基準であり、規制の目的に応じて二つに分けて用いられます。
消極目的規制、すなわち社会生活における公共の安全・秩序維持等の消極的なものについては、「厳格な合理性」の基準が用いられます。これは、立法目的が重要なものかどうか、立法目的達成手段が立法目的と実質的な関連性を有するかを検討する基準です。
積極目的規制、すなわち国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の積極的なものについては、「明白性の原則」が用いられます。これは、当該規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲とする基準です。
具体的な違憲審査基準の設定
職業は本質的に社会的・経済的な活動であり、その性質上社会的相互関連性が大きいこと、職業の多様性に応じて規制措置も多種多様な形をとることから、職業への具体的な規制に際して必要となる衡量判断を行うのは第一次的には立法府の権限と責務であり、立法府の判断が合理的な裁量の範囲にとどまる限り立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものとされています。
もっとも、事の性質上合理的な裁量の範囲には広狭があるため、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らしてその範囲を決定すべきであるとされています。
規制の目的による審査密度の違い
規制の目的が積極目的の場合には立法裁量の範囲はより広く審査基準もより緩やかなものとなり得る一方、消極目的の場合には立法裁量の範囲はより狭くなり審査基準もより厳格なものとなり得ます。
もっとも、規制の目的が積極目的と消極目的の双方を複合的に有している場合には、規制の主目的と副次的目的の区別が可能かどうか、可能である場合はどちらが主目的であるのかの検討が必要となります。また、規制の手段が具体的にどの目的との関係で採られたものなのかという点も踏まえて検討する必要があります。
さらに、規制の目的が積極目的にも消極目的にも分類できない場合には、規制目的二分論の論理をそのまま用いることができないため、具体的に権利制限の重大性や規制の性質等に照らした判断が必要となります。
規制の対象による審査密度の違い
規制の対象が狭義の職業選択の自由である場合、その規制は職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するとされています。
一方、規制の対象が職業遂行の自由すなわち営業の自由である場合、合憲性の推定はより強く働き合理的な裁量の範囲が広くなるとされています。もっとも、規制の制約の程度が甚だしい場合には審査密度を上げることも可能であるとされています。
このように、狭義の職業選択の自由と職業遂行の自由とでは合憲性の推定の程度が異なり、具体的な違憲審査のレベルにも反映されることになります。
規制の方法による審査密度の違い
規制の方法についても審査密度に影響します。規制の方法が届出制である場合には制約の程度が相対的に小さいので立法裁量の範囲はより広く審査基準もより緩やかなものになり得ます。一方、許可制は単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課すものであり職業の自由に対する強力な制限であるから、立法裁量の範囲はより狭くそれに応じて審査密度も上がることになります。
規制の類型
消極目的規制の具体的な態様としては、行政庁の許可を要するとする許可制、一定の有資格者に限って当該職業に就くことができるとする資格制、行政庁の公簿に記載することを要するとする登録制、届出を要するとする届出制があります。
積極目的規制の具体的な態様としては、そもそも私人が業として行うことを禁止する国家独占、公衆の生活に必須のものでありながら自由競争に適しない性質の事業について経営能力を有する者に特許を付与するもの、供給過剰の防止や税収確保等の特定の政策目的から許可制を敷き市場への新規参入を規制するものがあります。
主観的制限と客観的制限
職業の自由の制約は、職業を行う条件として一定の個人的な資質や能力を要求する主観的制限と、当該職業を行おうとする者の個人的な資質や能力には関わらない基準による客観的制限とに大別されます。客観的制限は主観的制限よりも強力な制限であるため、主観的制限よりも違憲審査の密度を上げる必要があると解されています。
資格制はおおむね主観的制限に当たり、各種の距離制限や需給均衡のための規制は客観的制限に当たります。
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