賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了

616条の2は賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には賃貸借はこれによって終了すると定めています。賃借物の全部が滅失等により使用及び収益をすることができなくなった場合には賃貸借は当然に終了するという判例法理を明文化したものです。もはや賃貸借契約の目的を達成することが不可能であるにもかかわらず契約の解除をしない限り賃料債務が発生するというのは不当であると考えられたためです。賃貸借の目的物の滅失等について契約当事者の一方に帰責事由がある場合でも賃貸借契約自体は当然に終了しその後は債務不履行等による損害賠償請求により処理がなされます。

期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ

617条1項は当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは各当事者はいつでも解約の申入れをすることができると定めています。解約の申入れの日から土地の賃貸借は1年、建物の賃貸借は3箇月、動産及び貸席の賃貸借は1日を経過することによって終了します。同条2項は収穫の季節がある土地の賃貸借については その季節の後次の耕作に着手する前に解約の申入れをしなければならないと定めています。

期間の定めのない賃貸借は常に期限が到来しているものという前提に立っていつでも解約申入れができますが終了には一定期間の経過を要するとして処理を図ったものです。

不動産については特別法による修正があります。建物所有目的の借地権の存続期間は最短期が30年とされているので解約申入れによって賃貸借が終了する余地はありません。借家関係においては賃貸人からの解約申入れの場合には猶予期間を6箇月とし加えて明確な正当の事由の存在を要求しており617条は賃貸人からの解約申入れには適用されません。

期間の定めのある賃貸借の解約権留保

618条は当事者が賃貸借の期間を定めた場合であってもその一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは期間の定めのない賃貸借の解約申入れに関する規定が準用されると定めています。

賃貸借の更新の推定

619条1項は賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃貸物の使用又は収益を継続する場合において賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定すると定めています。この場合において各当事者は617条の規定により解約の申入れをすることができます。

要件としては第1に賃貸借終了後に賃借人が目的物の使用収益を継続していること第2に賃貸人がこれを知って異議を述べないことが必要です。効果としては前賃貸借と同一の条件で賃貸借がなされたものと推定されその賃貸借の期間は期間の定めのないものとみなされいつでも解約申入れができるとされます。

同条2項は従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときはその担保は期間の満了によって消滅すると定めています。ただし敷金についてはこの限りではありません。

借地借家法に規定される法定更新の適用がある場合には619条の適用は排除されます。借地借家法は契約の更新を原則とし正当の事由がある場合にのみ更新拒絶ができるとしています。

合意更新と更新料

期間満了に際し当事者は合意によっても賃貸借契約を更新することができます。法定更新の場合には更新後は期間の定めのない契約となりますが合意更新の場合には期間を定めることができます。

更新料とは契約期間が満了し賃貸借契約を更新する際に賃貸人と賃借人の間で授受される金員です。更新料は一般に賃料の補充ないし前払や賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するとされています。

賃貸借契約における更新料条項は更新料の額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り消費者契約法10条にいう民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものには当たらないとされています。

賃貸借の解除の効力

620条は賃貸借の解除をした場合にはその解除は将来に向かってのみその効力を生ずると定めています。この場合において損害賠償の請求を妨げません。

いったん有効に成立した契約が債務不履行等によって解除され遡って無効にされるとするとその法律関係を前提にして積み上げられてきた個々の法律行為や法律関係がすべて覆されることになるので賃貸借のような継続的契約関係においては当事者間の清算が極めて複雑なものとなります。そこで遡及効が否定されています。

賃貸借の解除原因

賃借人から解除がなされる場合としては賃貸人が賃借人の意思に反する保存行為をした場合、耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人が不可抗力によって引き続き2年以上賃料より少ない収益を得たとき、賃借人に過失なく賃借物が一部滅失し賃借をした目的の達成が不能となった場合、賃貸人の債務不履行に基づく解除があります。

賃貸人から解除がなされる場合としては賃借人の無断譲渡及び転貸、賃借人の債務不履行に基づく解除があります。

信頼関係破壊の法理と解除

継続的な契約である賃貸借契約において賃借人の債務不履行があった場合には541条以下の一般的な規定を適用しつつ信頼関係破壊の法理を用いて必要な修正を加えています。賃借人の義務違反が賃貸借の基礎をなす信頼関係の破壊に当たるのでないときは催告のうえ解除の意思表示をする手続がとられていても解除の効力は認められません。増改築禁止特約は有効ですが増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは解除権を行使できないとされています。逆に賃借人の義務違反が信頼関係の破壊に当たる場合には賃貸人は催告することなく契約を解除することができます。

賃貸人たる地位の移転があった場合に譲受人が移転前の賃料不払を理由に解約するためには譲渡人より不払賃料債権を譲り受けていなくてはなりません。

更新料の不払が当該賃貸借契約の解除原因となりうるかは単に更新料の支払がなくとも法定更新されたかどうかという事情のみならず当該賃貸借成立後の当事者双方の事情や当該更新料の支払の合意が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量したうえ具体的事実関係に即して判断されるべきとされています。

無催告解除特約の効力

信頼関係破壊の法理により催告解除を制限していることが無意味とならないよう無催告解除特約は催告することなく解除しても不合理ではないような事情がある場合に無催告解除を許す条項と制限解釈されて効力が認められています。

賃借人の原状回復義務

621条は賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において賃貸借が終了したときはその損傷を原状に復する義務を負うと定めています。ただし通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化は除かれます。またその損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときはこの限りではありません。

通常損耗が生じることは賃貸借契約を締結する時に当然予定されており通常は修繕費等の必要経費を織り込んで賃料額が定められるのであって賃借人が通常損耗の回復義務を負うとすると賃借人は予期しない特別の負担を課されることになるため特約がある場合を除き賃借人は通常損耗の回復義務を負わないという判例法理を明文化したものです。通常損耗の補修費用につき賃借人が負担する旨の特約をする場合には賃借人の明確な合意が必要とされています。賃借人の責めに帰することができない事由の主張立証責任は賃借人が負います。賃借人が原状回復義務を履行しないときは債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。

使用貸借の規定の準用

622条は使用貸借における期間満了による終了、借主の収去義務及び収去権、損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限に関する規定を賃貸借について準用しています。

賃借人の収去権が問題となる場合には有益費償還請求や造作買取請求のいずれで解決すべきかが問題となります。附属物が建物から全く独立性を有さずこれを分離して収去することが不可能又は損傷しなければ収去できない場合には有益費償還請求の問題のみが生じ収去権は生じません。附属物が建物からの独立性を有し賃借人自身の所有権が認められる場合には有益費償還請求の問題は生じません。その附属物が造作の要件をみたすものであれば造作買取請求権又は収去権が認められ造作ではない物については収去権のみが認められます。造作はその分離可能性ゆえに費用償還請求の対象とはなりません。なお賃借人の債務不履行により建物の賃貸借契約が終了した場合には造作買取請求権は認められません。賃借人の所有権は認められないが収去することができる場合には収去権又は有益費償還請求権が認められます。

敷金の意義

622条の2は敷金に関する基本的な規律を明文化しています。敷金とはいかなる名目によるかを問わず賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭をいいます。この要件に該当するものであれば当事者間で保証金や権利金と呼ばれていたとしても本条の適用を受けます。敷金契約の法的性質は一種の停止条件付返還義務を伴う金銭所有権の移転であり賃貸借契約に付随する従たる契約ですが別個の契約です。

敷金返還請求権

敷金返還請求権は第1に賃貸借が終了しかつ賃貸物の返還を受けたとき、第2に賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときに発生します。

第1の場合について敷金返還債務と賃借物の返還債務は同時履行関係にはなく賃借物の返還が先履行となります。第2の場合について賃借権の適法な譲渡があった場合においては旧賃借人が差し入れた敷金は新賃借人に承継されません。

賃貸人は敷金から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額すなわち未払賃料や損害賠償等を控除した残額を賃借人に返還しなければなりません。

敷金の充当

賃貸借契約存続中においては不履行に陥った賃料債務等について賃貸人は敷金をその弁済に充てることができます。もっとも賃借人が敷金を延滞賃料等の弁済に充当するよう賃貸人に請求することはできません。賃貸借契約が終了し目的物が返還された場合又は賃借人が適法に賃借権を譲渡した場合には賃貸人は敷金の額から賃借人の金銭債務の額を控除した残額を返還しなければなりません。

賃貸借契約の目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになり賃料債権について物上代位による差押えがなされた場合においてもその消滅を抵当権者に主張することができます。

賃貸借終了後明渡前の敷金返還請求権の転付命令は明渡前においては敷金返還請求権は未確定な債権として転付命令の対象となる適格がないため無効となります。

敷引特約

居住用の家屋の賃貸借における敷金につき賃貸借契約終了時にそのうちの一定金額又は一定割合の金員を返還しない旨の敷引特約がされた場合であっても災害により賃貸借家屋が滅失し賃貸借契約が終了したときは特段の事情のない限り敷引特約を適用することはできず賃貸人は賃借人に対し敷引金を返還すべき義務を負うとされています。賃貸借契約が災害により当事者が予期していない時期に終了した場合についてまで敷引特約が成立していたと解することはできないためです。上記の特段の事情としてはいわゆる礼金として合意された場合のように当事者間に明確な合意が存在する場合が挙げられます。

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