19条の趣旨

19条は思想及び良心の自由はこれを侵してはならないと定め、人間の尊厳を支える基本的な条件であり民主主義存立の不可欠の前提となる思想および良心という人の内心における精神活動の自由を保障しています。思想及び良心の自由はそれが宗教的信仰の形をとるときは信教の自由として、科学的真理の探究の形をとるときは学問の自由として、それを外部に伝達するときは表現の自由として現れます。

思想と良心の意義

思想と良心の意義については両者を一体として捉える見解と両者を別個かつ独立のものと捉える見解に分かれます。

判例および通説は一体説に立つと考えられています。その理由として、19条は思想と良心を併記し同等にその自由を保障しているためしいて両者を区別する必要はないことが挙げられます。

一方、区別説は思想と良心の文言上の違いを重視すべきであること及び実体もそれぞれ異なることから、両者を区別した上で良心の自由を信教の自由とりわけ信仰の自由と同じ意味に解すべきであるとします。もっとも、20条で信教の自由が保障されている以上あえて良心の自由を限定的に解する必要はないと批判されています。

保障範囲の広義説と狭義説

思想及び良心の自由を侵してはならないとは、個人がいかなる内心をもとうともそれが内心の領域にとどまる限り絶対的に保障されるという意味です。では絶対的に保障される思想及び良心の自由の範囲はどのように解すべきかが問題となります。

広義説すなわち内心説は、人の内心におけるものの見方ないし考え方であり事物に関する是非弁別の判断を含む内心の自由一般を保障するとします。その根拠として、19条が人の内面的態様それ自体を対象とするものである以上原理的保障としての意味を強く持っており、その保障の範囲はむしろ広範かつ包括的に捉えられるべきであるとします。

狭義説すなわち信条説ないし限定説は、世界観、人生観、主義、主張などの個人の人格的な内面的精神作用を保障するとし、単なる事実の知ないし不知についての内心の表明は19条の問題ではないとします。その根拠として、思想及び良心の自由が保障される範囲を広範に捉えることはその高い価値を低下させむしろその自由の保障を弱めることになるとします。なお、狭義説の中には信仰に準ずべき世界観や人生観等の個人の人格形成の核心をなすものに限られると解する見解もあります。

広義説に対しては狭義説の根拠と同様の批判がなされ、狭義説に対しては保障の対象とされるものとそうでないものとの明確な区別ができないとの批判がなされています。

謝罪広告事件

衆議院議員総選挙に立候補したYが他の候補者Xがあっせん収賄を行った事実を政見放送や新聞紙上で公表したため、Xが名誉を毀損されたとして損害賠償を請求し、下級審が謝罪広告の掲載を命じた事案です。この謝罪広告を命ずる判決がYの思想及び良心の自由を侵害しないかが争点となりました。

最高裁判所は、民法723条にいう他人の名誉を毀損した者に対して被害者の名誉を回復するに適当な処分として謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命ずることは従来学説判例の肯認するところであるとしました。そして、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては代替執行の手続によって強制執行をしても屈辱的若くは苦役的労苦を科しまた倫理的な意思や良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられないとしました。

多数意見は思想及び良心の自由の範囲について明確な判断を示すことなく、本件の謝罪広告を命ずる判決は思想及び良心の自由を侵害するものではないとの結論しか示しませんでした。広義説の立場からはまさに思想及び良心の自由の問題と捉えることになりますが、狭義説の立場からは思想及び良心の自由の問題ではなく消極的表現の自由の問題と捉えることになります。

内心を理由とする不利益処分

思想及び良心の自由の保障により公権力は個人に対して特定の思想をもつことを禁止ないし強制することが許されないのはもとより、一定の思想に基づく不利益処分をすることも許されません。これは信条による差別の禁止を規定した14条1項にも違反します。

麹町中学校内申書事件

高校進学希望の生徒Xはその内申書に校内において全共闘を名乗り機関誌を発行したこと、学校文化祭の際に粉砕を叫んで他校の生徒とともに校内に乱入しビラまきを行ったこと等の記載があったためすべての入試に不合格になったとして国家賠償を求めました。

最高裁判所は、本件の内申書の記載はXの思想や信条そのものを記載したものではないことは明らかであり、記載に係る外部的行為によってはXの思想や信条を了知し得るものではないし、またXの思想や信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解することができないとして19条には反しないとしました。

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