責任主義

責任主義とは犯罪の成立要件として責任の存在することを必要とする建前をいいます。

責任の本質

責任の本質は構成要件に該当する違法な行為を行ったことについて行為者を非難できるということすなわち非難可能性にあります。

人間には意思の自由があり理性的な判断に基づいて自己の行動を自由に選択することができます。行為者は構成要件に該当する違法な行為をしない自由すなわち他行為可能性があったにもかかわらずあえて又は不注意により違法な行為を行ったことに対して道義的な非難を加えることができます。逆に他人の法益を侵害する行為がなされたとしてもその行為者が心神喪失者であった場合のように行為者に他行為可能性がなければ法の立場から非難することができないので刑事責任を追及しても無意味であり犯罪は不成立となります。

このように責任とは意思の自由と他行為可能性を基礎とした非難可能性です。

責任の要素

責任の要素としては故意及び過失、責任能力、違法性の意識の可能性並びに期待可能性が挙げられます。これらの要素を1つでも欠くとその行為者には他行為可能性がなかったこととなり非難可能性が認められないので責任が阻却されます。

これらの責任の要素は行為者が実行行為を行ったときに存在していなければなりません。これを行為と責任の同時存在の原則といいます。行為者に対する非難可能性は行為者が構成要件に該当する違法な行為を行ったことについての非難可能性であることがその根拠です。

責任の要素としての故意及び過失

責任の本質である非難可能性は他行為可能性があることを前提としており他行為可能性があるというためには違法行為に出るのを断念するよう自らを動機づけることすなわち反対動機の形成が可能でなければなりません。犯罪事実の認識又はその可能性及び認容によって規範に直面し反対動機の形成が可能であったにもかかわらずあえて犯罪に及んだことに対して非難可能性が認められます。

行為者に故意及び過失が認められないときすなわち犯罪事実の認識又はその可能性及び認容を欠く場合には反対動機を形成し得ないので非難可能性を欠くことになります。よって故意及び過失は責任の要素として必要です。

責任能力の意義

責任能力とは行為者を非難するために行為者に必要とされる一定の能力をいいます。

刑法は行為者の責任能力を欠く場合として心神喪失と刑事未成年を規定しています。これらを責任無能力といい犯罪の成立自体が否定されます。

また行為者の責任能力が限定的である場合として心神耗弱を規定しています。この場合を限定責任能力といい犯罪自体は成立しますがその刑は必要的に減軽されます。

心神喪失及び心神耗弱でない場合を完全責任能力といいます。

責任能力は行為者がした違法行為についての個別的な能力を意味するので精神の障害を有する者についてある罪に当たる行為については責任能力があるが別の罪に当たる行為については責任能力がないといった事態も観念することができます。これを部分的責任能力といいます。

心神喪失者

39条1項は心神喪失者の行為は罰しないと定めています。心神喪失者とは精神の障害により行為の是非善悪を弁識する能力すなわち事理弁識能力を欠くか又はその弁識に従って行動を制御する能力すなわち行動制御能力を欠く者をいいます。心神喪失者の行為は犯罪不成立となります。

心神耗弱者

39条2項は心神耗弱者の行為はその刑を減軽すると定めています。心神耗弱者とは精神の障害により事理弁識能力又は行動制御能力が著しく低い者をいいます。心神耗弱者の行為は犯罪自体は成立しますが刑が必要的に減軽されます。

心神喪失及び心神耗弱のいずれも精神の障害がなければ認められる余地はありません。このように生物学的要素である精神の障害と心理学的要素である事理弁識能力及び行動制御能力を併用する定義の仕方を混合的方法といいます。アルコールによる酩酊等一時的な意識障害も精神の障害に含まれます。

刑事未成年者

41条は14歳に満たない者の行為は罰しないと定めています。刑事未成年者は責任無能力であり犯罪は不成立となります。

公訴提起時に14歳以上であったとしても犯行時に14歳に満たなければ本条が適用されます。犯行時に14歳未満であれば事理弁識能力及び行動制御能力があっても本条が適用されます。一方犯行時に14歳以上であればたとえ精神能力が14歳未満の者のそれと同じであっても本条が準用されることはありません。

責任能力の認定及び判断の方法

心神喪失又は心神耗弱に当たるかどうかすなわち責任能力の有無及び程度の判断は病歴、犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機及び態様、犯行後の行動並びに犯行以後の病状などの諸事情を総合的に考察して判断されます。

責任能力の有無及び程度に関する判断は法律判断であって専ら裁判所の判断に委ねられるべき問題です。したがって専門家である精神医学者の精神鑑定等があっても裁判所はそれに事実上拘束されるものではありません。また責任能力の有無及び程度の判断の前提となる生物学的要素である精神の障害及び心理学的要素である事理弁識能力及び行動制御能力についても究極的には裁判所の評価に委ねられます。

もっとも専門家の意見を一切無視してよいわけではなく鑑定の前提条件に問題があるなどこれを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限りその意見を十分に尊重しなければなりません。

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