寄託者による返還請求

662条1項は当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても寄託者はいつでもその返還を請求することができると定めています。寄託は寄託者のために締結される契約であるから寄託者にとって寄託物を寄託する必要がなくなった場合にまで強いて寄託物を預けさせる必要はないためです。同条2項は受寄者は寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは寄託者に対しその賠償を請求することができると定めています。

寄託物の返還の時期

663条1項は当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは受寄者はいつでもその返還をすることができると定めています。同条2項は返還の時期の定めがあるときは受寄者はやむを得ない事由がなければその期限前に返還をすることができないと定めています。単に受寄者が死亡したにすぎない場合はやむを得ない事由には当たりません。

寄託物の返還の場所

664条は寄託物の返還はその保管をすべき場所でしなければならないと定めています。ただし受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときはその現在の場所で返還をすることができます。返還場所の特約がある場合にはそれに従い保管場所についてのみ特約がある場合には原則として保管場所において返還します。保管場所の定めもない場合には債権発生当時に受寄物が存在した場所において返還します。

損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限

664条の2第1項は寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費用の償還は寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならないと定めています。一部滅失等が受寄者の保管中に生じたものか否かが不明確になることを避けるためその行使期間について短期の期間制限を設けるものです。

同条2項は損害賠償の請求権については寄託者が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は時効は完成しないと定めています。寄託の期間が長期にわたる場合には寄託者が寄託物の状況を把握できないうちに消滅時効が完成し請求権自体が消滅してしまうという不都合が生じるため時効の完成を猶予するものです。寄託物の全部滅失の場合には寄託物の返還自体が履行不能となり債権債務関係の早期処理の要請も高くないことからこの規定は適用されず債務不履行の一般原則に従い処理されます。

委任の規定の準用

665条は受任者による受取物の引渡し等、受任者の金銭の消費についての責任、受任者の報酬、受任者による費用の前払請求並びに受任者による費用の償還請求及び代弁済請求の規定を寄託について準用しています。寄託は他人の物を保管するという一種の役務を伴う点で委任と類似性を有しているためです。

報酬は原則として後払です。受寄者は寄託者が約定の報酬を提供するまでは寄託物の返還を拒めます。受寄者は受寄物を保管するのに必要と認められる債務を負担したときは寄託者に対し自己に代わってその弁済をすることを請求する代弁済請求権を有します。この代弁済請求権は寄託の有償か無償かを問いません。その債務が弁済期にないときは寄託者に対し相当の担保を供させることができます。

混合寄託

665条の2は混合寄託に関する基本的な規定です。混合寄託とは複数の寄託者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合において受寄者が寄託者全員の承諾を得てこれらの寄託物を混合して保管し混合物の中から寄託物と同量の物を返還する契約をいいます。混合寄託は寄託物の保管のための場所及び労力という負担を軽減し寄託費用の節約にも繋がるため実務上重要な役割を担っています。

混合寄託は物を保管する点では通常の寄託と共通しますが寄託された物それ自体をそのまま返還する義務を負わない点で通常の寄託とは異なります。受寄者が寄託物の所有権を取得しない点で消費寄託とは異なります。

同条1項は複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には受寄者は各寄託者の承諾を得たときに限りこれらを混合して保管することができると定めています。同条2項はこの場合において寄託者はその寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができると定めています。同条3項は寄託物の一部が滅失したときは寄託者は混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができると定めています。この場合において損害賠償の請求を妨げません。

消費寄託

666条1項は受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には受寄者は寄託された物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならないと定めています。消費寄託とは寄託の目的物が金銭その他の代替物である場合に受寄者が寄託中に目的物を一度消費した後これと同種、同等、同量の物を返還することを約する諾成、片務契約です。受寄者が利息を払う内容の場合には有償となり無利息の場合には無償契約となります。

同条2項は消費貸借における貸主の引渡義務等及び価額の償還の規定を消費寄託について準用しています。消費寄託の利益は寄託者にあるのに対し消費貸借の利益は目的物を利用する借主にあるためこのような性質の違いから原則として寄託の規定が適用されることを前提に消費貸借と共通する部分すなわち目的物の所有権が相手方に移転する点に限り消費貸借の規定が準用されています。

預貯金契約

預金契約は預金者が金融機関に金銭の保管を委託し金融機関は預金者に同種同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであり消費寄託の性質を有するとされています。もっとも預貯金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には委任事務ないし準委任事務の性質を有するものも多く含まれているとされています。金融機関は預金契約に基づき預金者の求めに応じて預金口座の取引経過の開示をすべき義務を負い預金者が死亡した場合にはその共同相続人の1人は共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができるとされています。

666条3項は預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について消費貸借における借主による随時返還及び借主の損害賠償義務の規定を準用しています。預貯金契約については受寄者である金融機関にも利益がある点で専ら寄託者の利益を目的とする他の消費寄託とは性質が異なるためです。したがって返還時期の定めがある場合であっても受寄者である金融機関はやむを得ない事由がなくてもいつでも返還することができます。もっとも寄託者に損害が生じた場合には金融機関はその賠償をする責任を負います。

預金債権と誤振込み

振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立し受取人が銀行に対して振込金額相当の普通預金債権を取得します。この場合に振込依頼人は受取人に対し同額の不当利得返還請求権を有するにとどまります。

受取人が誤振込みに基づく普通預金債権を有する以上その行使が不当利得返還義務の履行手段としてのものなどに限定される理由はありません。もっとも払戻しを受けることが当該誤振込みに係る金員を不正に取得するための行為であって詐欺罪等の犯行の一環を成す場合であるなどこれを認めることが著しく正義に反するような特段の事情がある場合には権利の濫用に当たることがあります。

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