指図証券の譲渡
520条の2は指図証券の譲渡はその証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければその効力を生じないと定めています。指図証券とは証券において権利者として指定された者又はその者が指示する者に対して給付する旨の記載がある証券をいいます。裏書とは指図証券の譲渡を目的とする証券的行為をいいます。裏書と証券の交付が指図証券の譲渡の効力要件です。
指図証券の裏書の方式
520条の3は指図証券の譲渡についてはその指図証券の性質に応じ手形法中裏書の方式に関する規定を準用すると定めています。手形法上の裏書の方式としては記名式裏書と白地式裏書があります。記名式裏書とは裏書人の署名のほか裏書文句と被裏書人の名称を記載した裏書をいい、白地式裏書とは被裏書人の名称を記載しないでする裏書をいいます。
指図証券の所持人の権利の推定
520条の4は指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときはその所持人は証券上の権利を適法に有するものと推定すると定めています。裏書の連続とは証券の記載上受取人から最後の被裏書人に至るまで各裏書の記載が間断なく続いていることをいいます。
指図証券の善意取得
520条の5は何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合においてその所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときはその所持人はその証券を返還する義務を負わないと定めています。ただしその所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときはこの限りではありません。善意取得とは裏書によって善意無重過失で証券を取得した者がその裏書が無効であったとしてもその証券上の権利を取得するものをいいます。
指図証券の譲渡における債務者の抗弁の制限
520条の6は指図証券の債務者はその証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除きその証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができないと定めています。これは人的抗弁の切断と呼ばれるものです。
指図証券の質入れ
520条の7は520条の2から520条の6までの規定は指図証券を目的とする質権の設定について準用すると定めています。指図証券を質権の目的とする場合も指図証券の譲渡の場合と同様の扱いがなされます。
指図証券の弁済の場所
520条の8は指図証券の弁済は債務者の現在の住所においてしなければならないと定めています。484条1項は弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所においてその他の弁済は債権者の現在の住所においてそれぞれしなければならないと定めていますが520条の8はその特則として弁済すべき場所を債務者の現在の住所と定めています。
指図証券の提示と履行遅滞
520条の9は指図証券の債務者はその債務の履行について期限の定めがあるときであってもその期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負うと定めています。412条1項は債務の履行について確定期限があるときは債務者はその期限の到来した時から遅滞の責任を負うと定めていますが520条の9はその特則として証券の提示があった時から遅滞の責任を負うとしています。
指図証券の債務者の調査の権利等
520条の10は指図証券の債務者はその証券の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するがその義務を負わないと定めています。ただし債務者に悪意又は重大な過失があるときはその弁済は無効とされます。
指図証券の喪失
520条の11は指図証券は非訟事件手続法100条に規定する公示催告手続によって無効とすることができると定めています。公示催告手続とは公示催告によって当該公示催告に係る権利につき失権の効力を生じさせるための一連の手続をいいます。具体的には裁判所が掲示板に掲示しかつ官報に掲載する方法で行われます。
520条の12は金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において非訟事件手続法114条に規定する公示催告の申立てをしたときはその債務者にその債務の目的物を供託させ又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができると定めています。
記名式所持人払証券の譲渡
520条の13は記名式所持人払証券の譲渡はその証券を交付しなければその効力を生じないと定めています。記名式所持人払証券とは債権者を指名する記載がされている証券であってその所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいいます。指図証券の譲渡には裏書と交付が必要ですが記名式所持人払証券の譲渡には証券の交付のみが効力要件となります。
記名式所持人払証券の所持人の権利の推定と善意取得
520条の14は記名式所持人払証券の所持人は証券上の権利を適法に有するものと推定すると定めています。指図証券の場合には裏書の連続による権利の証明が必要ですが記名式所持人払証券の場合には証券の所持自体によって権利が推定されます。
520条の15は何らかの事由により記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合においてその所持人が520条の14の規定によりその権利を証明するときはその所持人はその証券を返還する義務を負わないと定めています。ただしその所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときはこの限りではありません。
記名式所持人払証券の譲渡における債務者の抗弁の制限と質入れ
520条の16は記名式所持人払証券の債務者はその証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除きその証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができないと定めています。
520条の17は520条の13から520条の16までの規定は記名式所持人払証券を目的とする質権の設定について準用すると定めています。
指図証券の規定の準用
520条の18は520条の8から520条の12までの規定すなわち弁済の場所、提示と履行遅滞、債務者の調査の権利等、証券の喪失及び喪失の場合の権利行使方法に関する規定は記名式所持人払証券について準用すると定めています。
その他の記名証券
520条の19第1項は債権者を指名する記載がされている証券であって指図証券及び記名式所持人払証券以外のものは債権の譲渡又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従いかつその効力をもってのみ譲渡し又は質権の目的とすることができると定めています。同条2項は520条の11及び520条の12の規定すなわち証券の喪失及び喪失の場合の権利行使方法に関する規定はこの証券について準用すると定めています。
無記名証券
520条の20は記名式所持人払証券に関する規定は無記名証券について準用すると定めています。無記名証券とは証券上に特定の権利者名が表示されておらずその所持人が権利者としての資格を有する証券をいいます。無記名証券を譲渡するには証券の交付が効力要件となるほか善意取得についても記名式所持人払証券と同様に処理されます。
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