代理制度の意義

代理とは代理人が本人のためにすることを示して相手方に意思表示をしまた相手方から意思表示を受けることによってその法律効果を直接本人に帰属させるという制度をいいます。代理は私的自治を拡張する機能すなわち任意代理と私的自治を補充する機能すなわち法定代理を有します。

代理の本質に関する学説

代理の本質については本人行為説と代理人行為説があります。本人行為説は法律効果の発生は意思に基づくのであるから代理関係での行為主体はその意思を有する本人であり代理人は本人の意思の担い手にすぎないとします。代理人行為説は代理関係における行為主体は独立した代理人であって代理人のなした行為の法律効果が本人に帰属するとし通説の立場です。

代理と類似の制度

間接代理とは自己の名で法律行為をしその法律効果を自己に帰属させながらその経済的効果だけを委託者に帰属させる制度です。法律効果が行為者自身に帰属し本人に帰属しない点で代理と異なります。

授権とは自己の名で法律行為をしその効果を本人に直接帰属させる制度です。このうち本人に帰属する権利を処分する権限を与える場合を処分授権といいます。顕名が不要である点で代理と異なり法律行為の効果が本人に直接帰属する点で代理と類似します。判例は処分授権を認めています。

代表は代表機関の行為それ自体が法人の行為とみなされるものであり代理は代理人の行為によって本人が権利義務を取得するものです。代表はいわば団体法概念であって代理とは概念的及び次元的に区別されるべきものですが民法及び一般法人法上の両者の区別は曖昧です。

代理と使者の比較

使者とは本人の決定した効果意思を相手方に表示し又は完成した意思表示を伝達する者をいいます。使者を用いた場合には意思表示に関する要件はすべて本人について決せられます。

代理の場合は代理人が意思決定をするのに対し使者の場合は本人が意思決定をします。行為者の能力について代理の場合は意思能力が必要で行為能力は不要であるのに対し使者の場合は意思能力も行為能力も不要です。本人の能力について代理の場合は意思能力も行為能力も不要であるのに対し使者の場合は意思能力と行為能力が必要です。意思の欠缺について代理の場合は代理人の意思と表示を比較するのに対し使者の場合は本人の意思と使者の表示を比較します。意思表示の瑕疵について代理の場合は代理人で判断するのに対し使者の場合は本人について判断します。

代理行為の要件

99条1項は代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は本人に対して直接にその効力を生ずると定めています。同条2項は第三者が代理人に対してした意思表示についても準用されます。

代理行為の要件としては本人のためにすることを示すこと、代理人の法律行為が有効に存在すること及び代理権の範囲内にあることが必要です。

本人のためにするとは本人に効果を帰属させようとする意思すなわち代理的効果意思があることをいいます。本人の利益を図る意思は必要ではありません。顕名は必ずしも本人の氏名が明示されていなくても周囲の事情から推断して本人が誰であるかがわかれば足ります。

本人の名のみを表示して代理行為を行う場合すなわち署名代理であっても代理人に代理意思があると認められる限り有効な代理行為といえます。代理人に代行権限がない場合には表見代理の規定が類推適用されます。

代理権の発生

任意代理権は通常委任により生じます。代理は本人に代わって意思表示をすることであり委任は法律行為をすることを相手方に委託する契約であるため委任契約の効力として他人に任意代理権が授与されます。任意代理権の範囲は委任契約の内容の解釈によって決定されます。雇用契約や請負契約等においても代理権が授与される場合がありこれらの場合には黙示的に委任契約も締結されているものと解されます。売買契約を締結するための代理権には相手方から取消しの意思表示を受ける権限も含まれます。

代理行為の効果

代理人のなした法律行為すなわち代理行為の効果は本人に直接に帰属します。代理行為に瑕疵原因があればそれによる効果も直接本人に帰属します。法律行為の当事者たる地位やそれに基づく取消権及び解除権も本人に帰属します。なお代理人が相手方の詐欺により売買契約を結んだ場合には代理人は特に取消権を付与されていない限り取り消し得ません。

顕名を欠く場合の効果

100条は代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は自己のためにしたものとみなすと定めています。ただし相手方が代理人が本人のためにすることを知り又は知ることができたときは99条1項の規定が準用されます。

本人のためにすることを知りとは代理人が代理意思を有している旨を周囲の事情から知っていることを意味します。本人が代理権を与えた事実や代理権を与えた旨を相手方が知っていても本条ただし書は適用されません。顕名は代理行為の時に必要であり後に本人が代理人の代理意思を相手方に通知しても影響を及ぼさず代理人と相手方との契約として確定します。

本条本文が適用される場合には意思表示の効果はすべて代理人に帰属するからたとえ本人のためにするつもりであり重過失がなかったとしても代理人は錯誤取消しを主張できません。

代理行為の瑕疵

101条1項は代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合にはその事実の有無は代理人について決するものとすると定めています。代理人は自己の意思表示をなす者すなわち代理人行為説であるから意思表示の瑕疵の有無などは代理人を基準とすべきことを規定しています。

代理人の意思表示に錯誤、詐欺又は強迫の事情があるときは取り消しうる行為として本人に帰属します。即時取得における善意及び無過失の判断は法人についてはその代表機関について決すべきですがその代表機関が代理人により取引したときはその代理人について判断すべきとされています。なお法人の使用人が法人の目的の範囲外の行為を行い法人に不当利得が生じたとしても使用人に法人を代理する権限はないから使用人の悪意をもって法人の悪意とすることはできません。

101条2項は相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合にはその事実の有無は代理人について決するものとすると定めています。

101条3項は特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは本人は自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができないとしています。本人が過失によって知らなかった事情についても同様です。本人が代理人の意思決定に影響を与えた場合には公平の観点より代理人の知又は不知に影響を及ぼすものとされています。

制限行為能力者の代理

102条本文は制限行為能力者が代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができないと定めています。代理行為の効果は本人に帰属し代理人には帰属しないから代理人に不利益は及ばず制限行為能力者保護の制度趣旨を妥当させる必要がないためです。

もっとも102条ただし書は制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については取り消すことができるとしています。制限行為能力者による代理行為の結果を本人に負担させると本人の保護という行為能力制度の目的が十分に達せられないおそれがあること及び本人が法定代理人を直接選任したわけではなく代理人が制限行為能力者であることのリスクを本人が引き受ける根拠はないことがその理由です。

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