債権の意義

債権とは特定人すなわち債権者が特定人すなわち債務者に対して一定の財産上の行為を請求することを内容とする権利です。債権は債務者のみに対する権利すなわち相対権です。これに対し物権とは物に対する直接の支配権をいいすべての人に主張しうる絶対権です。

債権の本質

物権と債権の性質における差異として第1に直接性の有無があります。物権は自ら物を直接的に支配するものであるのに対し債権は常に他人すなわち債務者の行為を通じて物を支配するものです。

第2に排他性の有無があります。同一の物の上に直接の支配が存在しうるのは1つのみであるから1つの物に同一内容の物権が併存することは許されません。よって物権は排他性を有します。これに対し近代法の下では人が行為しようとする意思を支配することはできないから同一の特定人に対する同一内容の債権の併存は認められます。よって債権は排他性を有しません。

第3に不可侵性の有無があります。債権も権利である以上第三者の不当な侵害を許さないという意味で不可侵性がありますので侵害に対して不法行為による損害賠償の義務が認められます。

対抗要件を備えた不動産賃貸借の不動産賃借人は不動産賃借権に基づいて妨害排除請求権及び返還請求権を行使することができます。

債権の目的の意義

債権は債務者に対して一定の行為を請求できる権利ですがこの債務者のなすべき一定の行為すなわち給付のことを債権の目的といいます。

給付の要件として適法性と確定性があります。公序良俗及び強行法規に反する内容をもつ給付は法律上保護されません。債権成立の時に具体的に確定している必要はありませんが履行時までにこれを確定できるだけの標準が定まっていることが必要です。実現可能性は給付の要件とはなりません。

399条は債権は金銭に見積もることができないものであってもその目的とすることができると定めています。取引行為以外の約束についても法律的拘束力を認めるという大原則を規定するものです。

特定物の引渡しの場合の注意義務

400条は債権の目的が特定物の引渡しであるときは債務者はその引渡しをするまで契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもってその物を保存しなければならないと定めています。

善管注意義務とは職業や社会的経済的地位に応じて一般的客観的に要求される注意義務をいい本人の能力とは無関係です。もっとも本条の善管注意義務は債務者に契約その他の債権の発生原因と関係のない注意義務まで課すものではありません。善管注意義務を尽くさず目的物を滅失又は損傷させた場合は債務不履行責任が生じます。

「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」とは契約の内容、契約の性質すなわち有償か無償かの別、契約の目的及び契約締結に至る経緯その他契約をめぐる一切の事情を考慮し取引通念をも勘案して評価認定される契約の趣旨に照らしてという意味です。

善管注意義務を負うのは履行期までではなく引渡時までです。債務者が履行遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合にはその履行不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます。債権者が受領遅滞に陥った後は債務者の善管注意義務が自己の財産に対するのと同一の注意に軽減されます。

善管注意義務と自己の財産に対するのと同一の注意義務

善管注意義務が要求される場合として財産法では留置権者、質権者、特定物の引渡義務者、使用借主、賃借人、有償の受寄者、有償及び無償の受任者並びに通常の事務管理者があります。家族法では後見監督人、後見人及び遺言執行者があります。

自己の財産に対するのと同一の注意義務が要求される場合として財産法では無償の受寄者があります。家族法では親権者、相続放棄者及び限定承認者があります。

種類債権

401条1項は債権の目的物を種類のみで指定した場合において法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは債務者は中等の品質を有する物を給付しなければならないと定めています。同条2項は前項の場合において債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは以後その物を債権の目的物とすると定めています。

種類債権とは一定種類の物の一定量の引渡しを目的とする債権をいいます。種類債権の目的物は通常代替物ですが不代替物であっても当事者がその取引において個性に着目していない限り種類債権が成立します。

制限種類債権とは特定の場所又は範囲によって制限されている種類債権をいいます。制限された範囲内の物が消滅すれば履行不能となります。制限種類債権については通常品質は問題となりません。

種類債権の特定

種類債権において給付すべき目的物を具体的に確定することを種類債権の特定といいます。

特定は合意による特定、債務者の行為による特定及び同意による指定の3つの方法で生じます。合意による特定は両当事者の合意によって給付目的物として種類物の中から一定数量の部分を他の部分から区別することが可能な程度に分離した時点で特定が生じます。債務者の行為による特定は物の給付をするのに必要な行為を完了した時点で特定が生じます。同意による指定は当事者間の特約をもって債権者、債務者又は第三者のいずれかが給付目的物の特定を一方的に決定する権利を行使した時点で特定が生じます。

債務の種類による特定の方法

持参債務は債務者が債権者の住所地又は指定する第三地までの運送義務を負う債務であり債務者が目的地まで運送し目的地で債権者に現実の提供をした時点で特定が生じます。

取立債務は債権者が自ら目的物を取立てにいく債務であり債務者が目的物を分離して口頭の提供をしたすなわち分離、準備及び通知をした時点で特定が生じます。債権者が引き取りに来なければ現実の提供ができないため債権者の取立てがあれば直ちに引渡可能な状態に置いてその旨を債権者に通知することで特定が生じます。債務者が目的物を分離していつでも引渡しができる状態にしているだけでは口頭の提供としては有効ですが目的物の分離がなされていない状態であるため特定は認められません。

送付債務は債務者が債権者の住所地又は指定する第三地までの運送の手配をする債務であり債務者が運送人に引渡しをした時点で特定が生じます。ただし運送費用を債務者が負担する場合すなわち履行が債務者の義務である場合は持参債務と同様に現実の提供の時点で特定が生じます。

特定の効果

特定の効果として第1に給付義務の軽減があります。債務者は特定した物のみを給付すべき義務を負いその物が滅失すれば債務者は給付義務を免れます。特定しない場合には債務者は調達義務を負います。ただし特定が生じた後でも債権者の利益を害さない限り他の物をもって代えることができるとする変更権が認められています。

第2に危険負担があります。特定後に滅失すれば履行不能となり履行不能につき債務者に帰責性がなければ危険負担の問題となります。なお種類物が特定されただけでは目的物の滅失の危険は買主に移転しません。危険を買主に移転させるには特定の事実だけでなく目的物を買主に引き渡すか若しくは買主の受領拒絶又は受領不能が必要となります。

第3に所有権の移転があります。種類債権の場合には債権発生の時点では給付すべき物は確定しうべき状態にはありますがまだ確定していません。そのため所有権の移転は176条の意思主義によることはできず特定によりはじめて所有権が移転することになります。

第4に善管注意義務があります。債務者は特定の時から引渡しまで善管注意義務を負います。

特定と弁済の提供

特定は履行の対象を確定させる効果を有するものであるのに対し弁済の提供は債務不履行責任から債務者を免れさせる効果を有します。取立債務においては分離せずとも口頭の提供とはなりますが特定は生じません。

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