天皇と裁判権

天皇に対して裁判権が及ぶかどうかが問題となります。

民事裁判権については、最高裁判所は「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である」と判示しました。ただし、天皇が民事責任を負わないわけではありません。

刑事裁判権については、通説は天皇の刑事的無答責を認めています。その根拠は、天皇の象徴としての特殊性と、摂政および国事行為臨時代行を委任された皇族がその在任中は訴追されないとする規定の類推解釈に求められています。

皇位世襲の原則

皇位とは国家機関としての天皇の地位をいいます。世襲とは、その地位に就く資格が現に天皇の地位にある人の血統に属する者に限定されることをいいます。継承とは、それまで天皇の地位にあった人に代わり新しい人がその地位に就くことをいいます。

皇室典範

戦前の皇室典範は憲法と並ぶ法形式でしたが、日本国憲法のもとでの皇室典範は憲法の下位にある法律にすぎず、形式的意味の法律に属します。

皇位継承に関しては、皇室典範がいくつかの事項を定めています。

継承原因については、皇位継承が生じるのは天皇が崩御した場合に限られます。生前退位の制度は現行法上は認められていませんが、皇室典範の改正によって退位制度を設けることや、特例法で退位を認めることは憲法上許されます。新天皇が位に就くことを即位と呼びますが、皇室典範は即位が崩御によって法律上当然に生じ何らの行為も必要としない旨を規定しています。

継承資格については、皇統に属する男系の男子で、かつ皇族に属する者に限られます。「皇統」とは天皇の血統を、「男系」とは男子の系列をいいます。天皇の血統に属する者であっても、女子およびその子孫には資格がないとされますが、憲法が平等原則の例外として世襲制を認めている以上、違憲とまではいえないとされています。ただし、皇室典範の改正によって皇族女子に皇位継承資格を認めることは憲法上許されます。

継承順序については、原則として長系および長子が優先的に皇位を継承します。

皇族と皇室の機構

皇族の範囲は、皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃および女王です。皇族は天皇とともに「皇室」を構成します。

皇室関係の事務処理機関として、内閣のもとに宮内庁が設置されているほか、皇室典範および皇室経済法により皇室会議と皇室経済会議が定められています。

皇室会議は、皇位継承の順序の変更、立后および皇族男子の婚姻の承認、皇族の身分の離脱の承認等の権限を有します。

皇室経済会議は、皇族が初めて独立の生計を営むことを認定するなどの権限を有します。

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