予算の意義

予算とは一会計年度における国の歳入歳出の予定の見積りを内容とする国の財政行為の準則をいいます。予算の内容としては予算総則、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為があります。

予算は内閣が作成し国会に提出します。衆議院に予算先議権が認められています。なお国会、裁判所及び会計検査院の予算に関してはこれらの機関が憲法上内閣から独立した地位にあることに鑑みその独立性が内閣の予算作成権によって害されることを防止する趣旨でいわゆる二重予算の制度が認められています。

会計年度と会計年度独立の原則

予算は会計年度ごとに作成されなければならず予算の有効期間は原則として当該会計年度のみです。会計年度は毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わります。

会計年度独立の原則とは各会計年度における経費はその年度の歳入をもってこれを支弁しなければならないという原則をいいます。ただし国は工事や製造その他の事業でその完成に数年度を要するものについて特に必要がある場合においては経費の総額及び年割額を定め予め国会の議決を経てその議決するところに従い数年度にわたって支出することができるとする継続費の制度が認められておりこれは会計年度独立の原則の例外です。

予算の法的性格

予算の法的性格については学説上争いがあります。

予算行政説は予算は行政行為すなわち財政計画であるとします。予算は議会に対する意思表示にすぎず国会の決議も国会の承認の意思表示にすぎないとして予算の法規範性を否定します。予算は国会が政府の財政計画を承認する意思表示であり国会と政府の間に効力を有し政府の権限を拘束するにすぎないこと及び予算は一会計年度においてのみ効力を有し従来の予算を変更する効力をもたないことがその理由です。

予算形式説は通説であり予算は法律とは成立手続を異にし法律とは区別された一法形式であるとします。予算は行政府の行為を法的に制約し規律するとして予算の法規範性を肯定します。財政立憲主義の観点から予算は国の財政行為の準則として法規範性を有するものと捉えるべきであること、予算は国家機関の行為のみを規律ししかも一会計年度内の具体的行為を規律するという点で一般国民の行為を一般的に規律する法令と区別されること及び予算提出権と衆議院の先議や優越につき明文規定が存在し公布を要しないことから予算は法律とは成立手続を異にし法律と区別される一法形式であると解すべきであることがその理由です。

予算法律説は予算は法律それ自体であるとします。予算の法規範性を肯定し予算は法律として議決されるから成立すれば署名と公布が必要となります。また国会の予算修正権の限界の問題は生じません。財政立憲主義の徹底の観点から予算は法律そのものと捉えるべきであること、法律は一般国民への規制に限定されておらず法律にも期間が限定された限時法が認められていること及び議決の方式が異なるのは予算の議決には原則として59条1項が適用されそのうえで同条項の憲法に特別の定めのある場合として60条の衆議院の先議や優越が適用されると考えられることがその理由です。

予算の種類

本予算とは一般会計、特別会計及び政府関係機関の予算を一体として国会の審議を受け議決されるものであり通常当該年度開始前に成立します。

補正予算とは追加予算と修正予算とを併せたものをいいます。追加予算とは本予算成立後において法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出又は債務の負担を行うために必要とされる予算の追加をいいます。修正予算とは予算作成後に生じた事由に基づいて予算に追加以外の変更を加えるものをいいます。

暫定予算とは予算が新会計年度の開始前に成立しない場合に内閣が一会計年度のうち一定期間にかかる予算を作成し国会に提出するものをいいます。暫定予算は当該年度の予算が成立したときには失効し暫定予算で採られた措置はすべて正規の予算に基づいてなされたものとみなされその会計年度の予算に組み込まれて国会の議決を事後的に受けることになります。これは暫定予算が正規の予算が成立するまでの暫定的な措置にすぎないためです。暫定予算の内容については法令に定めはないものの本予算の不成立による行政の中断への対策である以上職員給与費や法令上支出を義務付けられている経費のような義務的な最小限度の経常的経費に限られるのを通例とします。

国会の予算修正権

減額修正すなわち原案に対して廃除削減を行う修正については国会の修正権に限界はないと解することで学説はほぼ一致しています。日本国憲法では財政立憲主義の原則が確立しており他方国会の予算審議権を制限する規定は設けられていないことがその理由です。

増額修正すなわち原案に新たな款項を設け又は原案の款項の金額を増額する修正については増額修正それ自体を肯定する点で学説上ほぼ争いはありません。問題は増額修正に限界があるか否かです。

A説は増額修正は無制限になしうるとします。予算国法形式説の立場からは国会の予算議決権を制限する憲法上の規定が存在せず財政立憲主義を採っていることから減額修正の場合と同様に増額修正にも制限がないとされます。予算法律説の立場からは予算が法律であることの当然の結果として国会が予算を自由に修正できるとされます。

B説は増額修正には一定の制約があるとします。予算国法形式説の立場からは国会を財政処理の最高議決機関とする憲法の精神からある程度国会の増額修正は可能なものとみなされるが予算発案権を内閣に専属させていることからこの建前を覆して予算の同一性を損なうような大修正は許されないとされます。予算法律説の立場からも予算発案権を内閣に専属させていることから予算の増額修正に一定の制限があるとされます。

なお政府見解によれば国会の予算修正は内閣の予算提案権を損なわない範囲内において可能であるとされ項を新設する修正も可能であるとされています。

予算と法律の不一致

憲法上予算と法律との法形式及び立法手続が異なっているため予算と法律との間に不一致が生じる場合があります。予算法律説に立った場合でもこのような事態が生じるのは避けられないと解されています。不一致の類型としては法律が成立しているにもかかわらずその執行に要する予算が存在しないし不成立の場合、ある目的のための予算が成立しているがその予算の執行を命じる法律が不成立の場合及び国会が歳出の根拠となる法律を制定しておきながら予算を大幅に減額した場合の三つがあります。

法律が成立しているにもかかわらずその執行に要する予算が存在しない場合について予算国法形式説からは予算と法律とは本来一致させられるべきものであり内閣は法律を誠実に執行しなければならない以上法律に伴う経費が予算に設けられていない場合には補正予算を組むことや経費を流用すること及び予備費の支出などの予算措置を採るべき義務があることになります。直接に政府の支出及び金額を指定せず予算の許す範囲内で支出すべきものと定めるものについては可能な範囲で予算措置を採る義務があると解されています。

予算が成立しているがその執行を命じる法律が不成立の場合については予算があっても法律が存在しないのであるから内閣は予算の支出を実行することができません。内閣が予算の支出をするためには自ら法律案を提出して国会の議決を待つほかありませんが国会には議決する義務はありません。

国会が歳出の根拠となる法律を制定しておきながら予算を大幅に減額した場合については法律と予算との不一致の状態を作り出しそれをそのまま放置することは憲法の予定するところではないと考えられます。そこでこの種の廃除削減を行った場合には国会は同時にその法律を改廃するなどして不一致を解消すべき義務があるとする見解が主張されています。

予備費

87条は予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができると定めています。予備費の制度は予見しがたい事情のために予算にある費目の金額が不足になった場合すなわち予算超過支出と予算に新たに費目を加える必要が生じた場合すなわち予算外支出とに対応するためのものです。

予備費を設ける方法については憲法は触れていませんが財政法24条は内閣は予備費として相当と認める金額を歳入歳出予算に計上することができるとして国会の議決が予算の議決としてなされるべきことを定めています。なお予備費を設けることは義務ではありません。国会の議決を経た予備費は内閣の責任においてその管理及び現実の支出がなされます。

87条2項はすべて予備費の支出については内閣は事後に国会の承諾を得なければならないと定めています。この国会の承諾は予備費の支出が不当でなかったとする国会の判断とその確認を内容とする意思表示であり具体的な予備費の使用状況についても国会による適切なコントロールを及ぼそうとの趣旨に基づきます。承諾が得られない場合においても既になされた支出の法的効果に影響はなく内閣の政治的責任の問題が生ずるにとどまります。

皇室財産と皇室の費用

88条はすべて皇室財産は国に属しすべて皇室の費用は予算に計上して国会の議決を経なければならないと定めています。8条とともに皇室財産の自律主義を廃しその民主化を図るものです。

皇室財産とは天皇及び皇族の所有に属する財産を総称します。皇室財産はすべて国有財産とされますが8条の規定から皇室も私有財産を保有し運用しうることを前提としており純然たる個人財産については88条の射程範囲の外にあります。

皇室の費用とは天皇及び皇族の生活費並びに宮廷事務に要する費用をいいます。予算に計上される皇室の費用としては天皇や皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てる内廷費、儀式や国賓の接遇など内廷諸費以外の宮廷諸費に充てる宮廷費及び皇族等の品位保持の資に充てるなどのために支出する皇族費があります。これらは国会の議決に基づき国庫から支出されます。なお天皇や皇族がその私的な財産から生ずる費用を生活費の一部に充てることに関しては国会の議決は不要です。85条の規定からは皇室の費用として国費を支出するには国会の議決に基づくべきことが要請され88条が予算に計上してとするのは国会の議決を求める方法は予算によるべきものとする趣旨であり衆議院の優越が認められます。

アプリの紹介

過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。

司法試験 短答式試験 過去問 問題集

司法試験 短答式試験 過去問 問題集

司法予備試験の過去問を1問1答形式でアプリにしました。 効率的な学習をサポートする独自の機能があります。 1. 一問一答形式:テンポよく学習を進められます 2. 音声読み上げ機能:問題文と解説を聴いて学習効率アップ 3. 学習記録の自動管理:復習日、回数、正解率を簡単チェック 通勤中や隙間時間を有効活用し、効果的に試験対策ができます。 司法予備試験合格への第一歩、今すぐダウンロード! 利用規約 https://www.apple.com/legal/internet-services/itunes/dev/stdeula/

App StoreGoogle Play