憲法の意味

「憲法」の多義性

「憲法」という言葉には複数の意味があり、文脈によって使い分ける必要があります。大きく分けると、事実的意味の憲法、形式的意味の憲法、実質的意味の憲法の3つがあります。

事実的意味の憲法とは、政治的統一体として形成された国家が実際にどのような存在状態にあるか、つまり国家のそのときどきの政治状態そのものを指す言葉です。これは理論的な概念でも法的な概念でもなく、事実そのものを表しています。

形式的意味の憲法とは、「憲法」という名称の法形式をもって存在する成文の法典、すなわち憲法典のことです。ここでは法の内容ではなく、存在の形式に着目しています。たとえば、イギリスには憲法典がないため「イギリスには憲法がない」と言われることがありますが、これは形式的意味の憲法を指しています。

実質的意味の憲法とは、ある特定の内容をもつ法を「憲法」と呼ぶ場合を指します。成文憲法か不文憲法かを問わず、また憲法典の形をとっているかどうかにも関係なく、その内容に着目した概念です。実質的意味の憲法はさらに2つに分かれます。

まず固有の意味の憲法とは、国家の統治の基本を定めた法としての憲法です。どの時代のどの国家にも、統治の基本的な仕組みは必ず存在するため、固有の意味の憲法はいかなる国家にも存在します。

次に立憲的意味の憲法とは、専断的な権力を制限して国民の自由を保障しようという考えを基本理念とする憲法です。近代的意味の憲法とも呼ばれます。立憲的意味の憲法が成立するためには、自由権の保障と、権力の制限を可能とする統治機構として権力分立制度を採用することが求められます。

なお、根本規範としての憲法という考え方もあります。これは、人間の人格不可侵の原則、すなわち個人の尊厳を中核とする価値体系としての人権規範を指します。根本規範は実定的な規範であり、成文憲法全体に妥当するものとされています。

憲法の法源

憲法の法源とは、実質的意味の憲法をその存在形式に着目して捉えた概念であり、憲法がどのような形で存在しているかを示すものです。法源は成文法源と不文法源に分かれます。

成文法源について見ると、実質的意味の憲法が成文化されるときは、まず憲法典という形式をとるのが通常です。しかし、憲法典にすべてを規定しつくすことはほとんど不可能ですし、必ずしも好ましくもありません。そこで、憲法典では原則的なことを定めるにとどめ、より具体的な内容は他の法形式に委ねるのが通常です。日本国憲法の成文法源としては、条約、法律、規則、条例が挙げられます。条約の例としては平和条約や日米安全保障条約、国際連合憲章などがあります。法律の例としては皇室典範、国会法、内閣法、公職選挙法などがあります。規則の例としては衆議院規則、参議院規則、最高裁判所規則などがあり、条例の例としては公安条例や青少年保護条例などがあります。

不文法源としては、憲法慣習と憲法判例があります。

憲法慣習については、成文法国では実質的意味の憲法が憲法典や他の法形式で定められているため、基本的には憲法慣習は存在しにくいとされます。しかし、すべての憲法問題を成文形式で具体的に定めることは不可能です。そのため、具体的な行為を一義的に命じる法規定がないまま行われた特定の行為が、その後先例や慣行となり、憲法に関する慣習として成立していく可能性があります。ただし、こうした先例が法的効力を獲得するには、先例が長期にわたり反復されること、そしてその先例に法的価値を承認する広範な国民の合意が成立すること、の2つの要件が必要とされます。憲法慣習には3つの種類があります。第一に、憲法の規定に基づきその本来の意味を発展させる慣習です。第二に、憲法に明文規定がない場合にその空白を埋める慣習です。第三に、憲法規範に明らかに違反する慣習です。このうち第三の類型については、硬性憲法の原則を重視する立場からは認めることができないとされています。

憲法判例については、憲法判例に法源性が認められるか、すなわち判例に先例拘束力があるかという点で争いがあります。憲法判例に法的な先例拘束力を認める立場では、憲法判例は原則として後の最高裁自身を拘束しますが、状況の変化等から特に必要がある場合のように十分な理由があるときには、判例を変更することも可能と解されています。他方、通説的な見解は、憲法判例は法的な先例拘束力を有するとはいえないが、事実上の拘束力を有し、事実上法源として機能するものと考えています。この立場でも、十分な理由がある場合には判例の変更が可能です。

憲法の分類

憲法はいくつかの基準によって分類することができます。

第一に、成文憲法と不文憲法という分類があります。これは、憲法典が存在するかどうかを基準とするものです。立憲的意味の憲法の多くは成文憲法として存在しています。なお、イギリスは憲法典をもちませんが、イギリスの憲法のすべてが慣習法として存在するわけではなく、その多くの部分は成文の法律として定められています。これらの法律は一般法より強い形式的効力はもちませんが、実質的効力を有するとされています。

第二に、硬性憲法と軟性憲法という分類があります。これは、憲法改正の手続が通常の立法手続と同じかどうかを基準とするものです。通常の立法手続と同じ手続で改正できる憲法を軟性憲法といい、通常の立法手続よりも困難な手続が定められている憲法を硬性憲法といいます。

第三に、欽定憲法と民定憲法という分類があります。これは、誰が憲法の制定主体かを基準とするものです。君主が制定して国民に授けたという形をとる憲法を欽定憲法といい、国民が制定したという形をとる憲法を民定憲法といいます。

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