仮登記担保の意義
仮登記担保とは金員の交付に際し貸金の回収が不可能となる場合に備えて債務者若しくは物上保証人の所有権を債権者に移転させそれによって本来の債務の履行に代える旨を約し債権者が有する期待権を仮登記又は仮登録によって保存する形式の担保をいいます。譲渡担保は担保設定時にあらかじめ所有権を移転するという形をとるのに対し仮登記担保は弁済がない場合に所有権を移転する形をとる点で異なります。
仮登記担保の法的性質
仮登記担保は抵当権に近い担保物権の性質を有します。可能な限り抵当権の規定を類推適用し付従性、随伴性、不可分性及び物上代位性等を有します。
仮登記担保の設定
仮登記担保契約の要件は第1に担保を目的とすること、第2に金銭債務を担保すること、第3に債務不履行があるとき所有権その他の権利を債権者に移転することを内容とするものであること、第4に仮登記又は仮登録できるものであることです。
公示方法は仮登記又は仮登録によります。この場合の仮登記を担保仮登記といいます。本来仮登記には順位保全の効力のみが認められ対抗力は認められませんが担保仮登記は優先弁済権の本登記としての効力をも有していると解されます。
仮登記担保権の効力
仮登記担保権の効力は弁済がなされない場合に目的不動産の所有権を取得するいわゆる競売によらない私的実行又は競売による優先弁済を受けることをその中心とします。
私的実行とは仮登記を本登記にして目的不動産を自己のものにすることをいいます。私的実行は債務者が履行遅滞に陥った場合若しくは仮登記担保契約において担保仮登記権利者に所有権を移転するものとされている日が到来した場合に清算金の見積額を設定者に通知して行います。通知の到達から2か月を経過することで所有権が移転します。
仮登記担保権の消滅
仮登記担保権は通常の担保権と同様の原因により消滅します。弁済や時効等による被担保債権の消滅、目的物の競売及び目的物の滅失がその例です。仮登記担保権の目的物となっている不動産につき所有権を取得した者による被担保債権の消滅時効の援用も消滅原因となりえます。
所有権留保の意義
所有権留保とは売主が目的物の引渡しを終えつつ代金が完済されるまで目的物の所有権を留保する制度をいいます。目的物の売買契約中に売主から買主への所有権移転を代金完済まで留保するという特約を付けることによって行われます。所有権留保は初めから債権者が所有権を有している点で債務者の有する所有権を債権者に移転する譲渡担保とは異なります。
所有権留保の法的構成
所有権的構成では目的物の所有権は従前通りに売主に帰属し買主は目的物の利用権と代金完済という停止条件の成就によって所有権を取得する期待権を有すると考えます。所有権留保はもともと目的物と被担保債権の間に牽連性がない譲渡担保と異なり被担保債権と目的物との間に価値的均衡がとれているのが通常であるから清算義務の発生の余地が少なくそれゆえ売主に所有権を与えて目的物の全価値の支配を許してよいというのが理由です。
担保的構成では売主は残存代金を被担保債権とする担保権を有するにとどまり所有権からこれを差し引いた物権的地位を買主が有すると考えます。引渡しを受けた買主は既に所有者としての意識の下に目的物を支配し他方で売主としても単純な金銭貸借の意識しかもっていないのが通常であるというのが理由です。
所有権留保の対内的効力
目的物の使用及び収益について買主は実質的所有者であるから特約がない限り自由に使用及び収益することができます。特約がある場合の特約違反は留保所有権実行の理由になりえます。
目的物が買主に引き渡された後に滅失又は損傷した場合には売主に帰責事由がある場合を除き買主は代金の支払を拒むことができません。危険の移転によるものです。滅失又は損傷につき買主に帰責事由がある場合や買主が善意の第三者に目的物を処分して留保所有権を消滅させた場合には買主は不法行為責任を負います。買主が善管注意義務を負う旨の特約がある場合には債務不履行責任も負います。
所有権留保の対外的効力
売主と買主側の第三者の関係について所有権的構成に立てば買主は無権利者であるから相手方が即時取得した場合にのみ売主は所有権を失います。担保的構成に立てば買主は所有者であるから相手方は所有権を買主から承継取得します。相手方が留保所有権の存在につき善意無過失である場合には所有権留保のつかない所有権を取得することになります。
買主と売主側の第三者の関係について所有権的構成に立てば売主は第三者に所有権を譲渡できます。担保的構成に立てば留保所有権を被担保債権とともに処分できます。もっとも買主が目的物を直接占有しているため売主が目的物を第三者に処分することは通常考えられません。
動産留保所有権とその動産が放置された土地の所有権
動産留保所有権者は残債務弁済期の経過後は当該動産について占有及び処分機能を有するので留保所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはありません。もっとも留保所有権者は当該動産が第三者の所有権の行使を妨害している事実を知らなければ不法行為責任を問われることはなくこれを知ったときに不法行為責任を負います。
所有権留保と譲渡担保権者の関係
売買代金の額が期間ごとに算定される継続的な売買契約において売主が買主に対し当該売買契約の目的物の転売を包括的に承諾していたものの一つの期間に納品された目的物の所有権は当該期間の売買代金完済までは売主に留保される旨の定めが存在していた場合において当該定めは目的物の引渡しからその完済までの間にその支払を確保する手段を売主に与えるものであってその限度で目的物の所有権を留保するものであるときは所有権留保の目的物の所有権は売買代金が完済されるまで買主に移転せず当該目的物について買主から譲渡担保権の設定を受けた者はその譲渡担保権を主張することができません。
代理受領
代理受領とは債務者が第三債務者に対して有する債権について債権者が取立てないし受領の委任を受け債権者は第三債務者から受領した金銭を債務者に対する債権に充足することにより他の債権者に優先して債権を回収することをいいます。構造的には債務者の第三債務者に対する債権を債権者に譲渡ないし質入れすることと何ら変わりはありません。
代理受領の効力として債権者と債務者の間には債権の弁済受領に関する委任関係が成立します。弁済の受領等委任の内容に反する行為がなされれば債務者は137条2号の担保毀滅行為として期限の利益を失います。
債権者と第三債務者との間では法形式的には債権者は弁済受領権限をもつのみで直接取立権を有しません。債権債務関係はあくまで債務者と第三債務者の間にあります。
第三債務者が代理受領を承諾することは正当の理由なく債権者の利益を侵害しない趣旨を含むものであるから第三債務者の債務者への弁済は義務違反となり債権者に対して不法行為を構成します。もっとも弁済自体は有効です。
債務者に対する他の債権者が債務者の第三債務者に対する債権を差し押さえた場合には債権者は差押債権者に対抗できません。この点で質権や譲渡担保に代替するほどの効力はありません。
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