保護法益
逃走の罪の保護法益は国の拘禁作用です。逃走の罪は被拘禁者自身が拘禁作用を侵害する場合とそれ以外の者がこれを侵害する場合とに分けられます。
単純逃走罪
97条は法令により拘禁された者が逃走したときは3年以下の拘禁刑に処すると定めています。
法令により拘禁された者
法令により拘禁された者には確定判決又は勾留状の執行により刑事施設等に収容された被疑者、被告人又は刑確定者のほか勾留状や勾引状等の執行を受けたが刑事施設等に収容される前の被疑者、被告人又は刑確定者が含まれます。さらに逮捕されたが刑事施設等に留置される前の被疑者及び留置中の被疑者並びに勾引状の執行を受けた証人等も含まれます。逮捕には通常逮捕のみならず現行犯逮捕や緊急逮捕も含まれ緊急逮捕については逮捕状の発付の前後を問いません。一方で保釈された被告人は法令により拘禁された者には含まれません。
逃走の意義
逃走とは拘禁から離脱すること、すなわち看守者の実力支配を脱することを意味します。
単純逃走罪の既遂時期
単純逃走罪は拘禁を離脱した時に既遂に達する状態犯です。拘禁を離脱したとは看守者による実力的支配を脱したことをいいます。監獄の外壁を乗り越えるなどして刑事施設等の外に出れば通常は既遂となりますが追跡が継続している間は拘禁を離脱したとはいえず未遂にとどまります。もっとも一時的であっても完全に離脱すれば既遂となります。
加重逃走罪
98条は法令により拘禁された者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し暴行若しくは脅迫をし又は2人以上通謀して逃走したときは3月以上5年以下の拘禁刑に処すると定めています。
暴行及び脅迫は逃走の手段として看守者等に対してなされることを要します。損壊とは物理的損壊を意味し合鍵により開錠することはこれに含まれません。通謀してといえるためには2人以上の法令により拘禁された者がともに逃走することを内容とした意思の連絡が必要です。1人だけ逃走させる意図で通謀した場合は逃走した者に単純逃走罪が成立し通謀者には逃走援助罪が成立します。また刑務所に面会に来た者と通謀して逃走しても加重逃走罪は成立しません。
加重逃走罪の実行の着手及び既遂時期
拘禁場や拘束のための器具を損壊する場合は損壊行為を開始した時点が実行の着手時期であり拘禁を離脱した時点が既遂時期です。暴行又は脅迫の場合は暴行又は脅迫行為が開始された時点が実行の着手時期であり拘禁を離脱した時点が既遂時期です。通謀の場合は通謀者がともに逃走行為を開始した時点が実行の着手時期であり拘禁状態を離脱した時点で通謀者ごとに既遂となります。
被拘禁者奪取罪
99条は法令により拘禁された者を奪取した者は3月以上5年以下の拘禁刑に処すると定めています。
奪取とは被拘禁者を看守者の実力的支配から離脱させ自己又は第三者の実力的支配下に移すことをいいます。奪取の手段を問わないので暴行、脅迫、欺罔行為などによる場合も含みます。また本人の同意の有無も問いません。
逃走援助罪
100条1項は法令により拘禁された者を逃走させる目的で器具を提供しその他逃走を容易にすべき行為をした者は3年以下の拘禁刑に処すると定めています。同条2項は同様の目的で暴行又は脅迫をした者は3月以上5年以下の拘禁刑に処すると定めています。
本罪は器具を提供しその他逃走を容易にすべき行為又は暴行若しくは脅迫行為の終了によって既遂となり被拘禁者が逃走したかどうかを問いません。
被拘禁者を奪取する目的で暴行又は脅迫を行ったが奪取が未遂に終わった場合につき被拘禁者奪取罪の未遂とするか逃走援助罪とするか争いがありますが通説は被拘禁者奪取罪の未遂とすべきであるとしています。
看守者等による逃走援助罪
101条は法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは1年以上10年以下の拘禁刑に処すると定めています。
逃走させたとは被拘禁者の逃走を惹起し又はこれを容易ならしめる一切の行為をいいます。逃走しようとしている事実を認識しながら放置する不作為も含みます。
未遂罪
102条は逃走の罪の未遂は罰すると定めています。
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