インターネット上の表現の自由の特徴

情報通信技術の発達により、個人はマス・メディアを介さずインターネットを通じて自由に表現を世界中に発信することが可能となり、「送り手」としての地位を回復しました。その反面、SNS上での多数の偽情報・誤情報や誹謗中傷が流通し、表現の自由の一般的な法理との調整を必要とする新たな問題が提起されています。

なお、インターネットを利用した電子メールなどの1対1のやりとりは、通信の秘密として21条2項により保護されます。

インターネット上の名誉毀損

今日では、マス・メディアによる名誉毀損よりも、個人によるインターネット上の名誉毀損が問題となることが多くなっています。

インターネットの利用者は自己の見解を外部に向かって発信できることから、インターネットを利用している被害者は、自己に向けられた加害者のインターネット上の表現行為に対して言論による反論が可能です。これが対抗言論の法理です。対抗言論が奏功すれば、被害者の社会的評価が害されるおそれはないことから、インターネットの利用者が名誉毀損をした場合には、マス・メディアが名誉毀損をした場合よりも名誉毀損罪の成立範囲を限定すべきであるとの見解があります。

しかし、この見解に対しては批判があります。インターネット上のすべての情報を知ることは不可能であり、自己の名誉を毀損する表現の存在すら知らない被害者に対して反論を要求すること自体が不可能です。また、言論の応酬により当不当を判断できるのは意見・論評であって、事実の摘示による名誉毀損の場合には、被害者と加害者が言論の応酬をしても、インターネットの利用者は真偽を判断できません。

インターネット上の名誉毀損に対する判例の立場

インターネット上に載せた情報は、不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり、これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ます。一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく、インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもありません。

これらの点を考慮した上で、判例は従来の「相当性の法理」をこの場面でも適用し、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料・根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉毀損罪は成立しないとしています。

裁判官のツイッター投稿と表現の自由の限界

裁判官のツイッター投稿について、裁判官に許容される表現の自由の限度を逸脱したものと判示された事案があります。事案は、東京高裁判事がツイッター上で、犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事のリンクを貼るとともに、当事者の感情を傷つける内容の投稿をしたため、裁判所法にいう「品位を辱める行状」に該当するかどうかが争われたものです。

最高裁は、裁判の公正・中立は裁判ないしは裁判所に対する国民の信頼の基礎を成すものであり、裁判官は公正・中立な審判者として裁判を行うことを職責とするとしました。したがって、裁判官は職務を遂行するに際してはもとより、職務を離れた私人としての生活においてもその職責と相いれないような行為をしてはならず、また裁判所や裁判官に対する国民の信頼を傷つけることのないように慎重に行動すべき義務を負っているとしました。

本件の投稿は、裁判官がその職務を行うについて表面的かつ一方的な情報や理解のみに基づき予断をもって判断をするのではないかという疑念を国民に与えるとともに、裁判を受ける権利を保障された私人である原告の訴訟提起行為を一方的に不当とする認識ないし評価を示すことで当該原告の感情を傷つけるものであり、裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるものであるとして、「品位を辱める行状」に当たるとされました。なお、憲法上の表現の自由の保障は裁判官にも及び、裁判官も一市民としてその自由を有することは当然であるが、本件の行為は表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱したものであって懲戒の対象となることは明らかであるとされました。

インターネット上の匿名表現の自由

インターネット上の匿名表現の自由も、表現の自由として21条の保護範囲に含まれます。表現者が特定されない匿名での表現には、弱い立場の者であっても、社会的圧力にさらされやすい表現行為を萎縮せずに行い得るというメリットがあり、ひいては国民の「知る権利」にも奉仕するものといえ、表現の自由として保護する価値は高いと解されています。

一方、インターネット上の匿名性がSNS上の誹謗中傷などの違法・有害表現の一因ともなっていることも事実です。そのため、SNS上の誹謗中傷などの違法・有害表現による名誉毀損等がなされないよう、匿名表現の自由に対して必要最小限度の制約を課すことも許容されます。侮辱罪の法定刑の引上げなどの必要最小限度の制約を課すことも許容されますが、インターネット上の表現行為について一般的に実名を強制することまでは許容されないものと解されています。

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