教育の自由の根拠

教育の自由は憲法の明文規定はありませんが、憲法上保障された自由であると一般に解されています。もっとも、その根拠については13条説、23条説、26条説の争いがあります。

親権者の教育の自由

親権者の教育の自由は子どもの学習権に対応するものであるから、親権者の責務という色彩を帯びます。よって、本質的には公権力による干渉からの自由といえます。

もっとも、親権者の教育の自由は子どもに普通教育を受けさせる義務によって制限されると解されており、子女に普通教育を受けさせない親権者に対し法律により制裁を加えることも許されます。

旭川学テ事件において最高裁は、親は子どもに対する自然的関係により子どもの将来に対して最も深い関心をもちかつ配慮をすべき立場にある者として子どもの教育に対する一定の支配権すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが、このような親の教育の自由は主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるとしました。

教師の教育の自由

公教育制度の下では教師は親権者から親権者の教育の自由を委託される関係に立つことから、教師の教育の自由が問題とされます。

もっとも、教師の教育の自由は一般の自由権と異なり責務としての色彩が濃いと考える見解が有力です。その理由として、教師の教育の自由も親権者の教育の自由と同様に子どもの学習権に仕える限りでの自由といえること、教師は子ども・親権者に対する関係では権力を行使する立場にあることが挙げられます。

教育権の所在

子どもに教育を施す主体、子どもに対する教育の内容を決定するのは誰か、公権力は教師の教育の自由にどこまで干渉できるかが問題となります。

国家教育権説は、教育権の主体は国家であり国家は公教育を実施する教師の教育の自由に制約を加えることが原則として許されるとする見解です。議会制民主主義の原理からは国民の総意は国会を通じて法律に反映されるから、国は法律に準拠して公教育を運営する責務と権能を有するとしています。

国民教育権説は、教育権の主体は親及びその付託を受けた教師を中心とする国民全体であり国は教育の条件整備の任務を負うにとどまるので公教育の内容及び方法については原則として介入できないとする見解です。教育の実施に当たる教師は国民全体に対して教育的・文化的責任を負う形で教育内容・方法を決定・遂行すべきであり、それは23条の学問の自由により支えられているとしています。

折衷説は、教育の本質からして教師に一定の自由が認められると同時に国の側も一定の範囲で教育内容について決定する権能を有するとする見解です。教師の教育の自由と国家の介入権が衝突する場合にどちらが正当かを判断するにはさらに個別的・実質的検討が必要であるとします。国家教育権説・国民教育権説いずれも極端であることがその理由です。

旭川学テ事件における教育権の所在

旭川学テ事件は全国中学一斉学力調査の違憲性が争われた事案です。

最高裁は、子どもの教育の内容を決定する権能が誰に帰属するとされているかについて二つの極端に対立する見解があるとしました。

一方の見解は、子どもの教育は親を含む国民全体の共通関心事であり公教育制度はこのような国民の期待と要求に応じて形成・実施されるものであって、国民全体の教育意思は憲法の採用する議会制民主主義の下においては国会の法律制定を通じて具体化されるべきものであるから、法律は公教育における教育の内容及び方法についても包括的にこれを定めることができると主張するものです。

他方の見解は、子どもの教育は26条の保障する子どもの教育を受ける権利に対する責務として行われるべきもので、このような責務を担う者は親を中心とする国民全体であり、子どもの教育の内容及び方法については国は原則として介入権能をもたず、教師がその教育専門家としての立場から国民全体に対して教育的・文化的責任を負うような形でその内容及び方法を決定・遂行すべきものであり、このことは23条における学問の自由の保障が教授の自由をも含み普通教育におけるそれにも及ぶと解すべきことによっても裏付けられると主張するものです。

しかし、最高裁はこの二つの見解はいずれも極端かつ一方的でありそのいずれをも全面的に採用することはできないとしました。

そして、子どもの教育は教育を施す者の支配的権能ではなく何よりもまず子どもの学習をする権利に対応しその充足をはかりうる立場にある者の責務に属するものとして捉えられているとしました。しかしながら、子どもの教育が専ら子どもの利益のために教育を与える者の責務として行われるべきものであるということからはこのような教育の内容及び方法を誰がいかにして決定すべくまた決定することができるかという問題に対する一定の結論は当然には導き出されないとしました。

普通教育の場においても、教師が公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において、また子どもの教育が教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じその個性に応じて行われなければならないという本質的要請に照らし教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては、一定の範囲における教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではないとしました。しかし、大学教育の場合には学生が一応教授内容を批判する能力を備えていると考えられるのに対し普通教育においては児童生徒に教育内容を批判する能力がなく教師が児童生徒に対して強い影響力・支配力を有することを考え、また子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等に思いをいたすときは、普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることはとうてい許されないとしました。

さらに、国も憲法上は子ども自身の利益の擁護のためあるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため必要かつ相当と認められる範囲において教育内容についてもこれを決定する権能を有するとしました。

もっとも、教育に政治的影響が深く入り込む危険があることを考えるときは教育内容に対する国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるし、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入たとえば誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは憲法26条、13条の規定上からも許されないとしました。

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