契約と信義則

契約は当事者相互の信頼の基礎の上に成り立っており契約当事者は相互に信頼し合いその信頼に応えるような行動を基礎としなければなりません。契約法の分野においては信義則が強く作用します。

契約締結上の過失

契約締結上の過失の類型として第1に契約締結の準備段階に過失があり不利な内容の契約を締結させられた場合があります。契約は有効に成立したものの一方当事者が契約締結に必要となる重要な情報を提供する義務すなわち情報提供義務やその情報に関する説明をする義務すなわち説明義務を怠ったため他方当事者が自ら考えていたものとは異なる給付を受けて損害を被ったような場合です。

判例は契約の一方当事者が契約締結に先立ち信義則上の説明義務に違反して当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には当該当事者は相手方が契約締結により被った損害につき不法行為責任を負うことは格別債務不履行責任を負うことはないとしています。一方当事者が信義則上の説明義務に違反したために相手方が本来であれば締結しなかったはずの契約を締結するに至り損害を被った場合には後に締結された契約は説明義務の違反によって生じた結果として位置付けられるものであってその説明義務をもってその契約に基づいて生じた義務であるということはそれを契約上の本来的な債務というか付随義務というかにかかわらず一種の背理であるためです。

第2に契約締結の準備段階において過失があったが契約締結に至らなかった場合があります。相手方の契約成立への期待を裏切って当事者の一方が契約交渉を打ち切り相手方に無用の出捐をさせたような場合です。この場合の効果として相手方は過失ある者に対し信義則上の注意義務違反を理由としてその契約を有効と誤信したことにより生じた損害すなわち信頼利益の賠償請求権を有します。

安全配慮義務の意義

安全配慮義務とはある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において当該法律関係の付随的義務として当事者の一方又は相手方に対して信義則上負う義務をいいます。拘置所に収容された被勾留者に対して国は安全配慮義務を負いません。未決勾留による拘禁関係は勾留の裁判に基づき被勾留者の意思にかかわらず形成され法令等の規定に従って規律されるものであり当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係とはいえないためです。

安全配慮義務の類型

安全配慮義務の類型として第1に給付義務としての安全配慮義務があります。生命や健康等の安全の配慮自体を契約目的とし安全配慮義務自体が給付義務となる場合です。第2に付随義務としての安全配慮義務があります。給付義務の中核をなす給付は別に存在しそれに付随して債権者の生命や健康等の安全に配慮すべき義務が債務者に課される場合です。

安全配慮義務の具体的内容

安全配慮義務の具体的内容は問題となる当該具体的状況に照らして個別的かつ具体的に判断されます。使用者が負う安全配慮義務には被用者が運転者として道路交通法等に基づき当然に負うべき通常の注意義務は含まれません。

安全配慮義務違反の主張立証責任

国が国家公務員に対して負う安全配慮義務に違反したことを理由とする損害賠償請求訴訟においてその義務の内容を特定しかつ義務違反に該当する事実を主張立証する責任は原告にあります。

安全配慮義務違反の効果

安全配慮義務違反を理由とする損害賠償債務は期限の定めのない債務であり債務者が履行の請求を受けた時に履行遅滞となります。

じん肺に罹患したことを理由とする損害賠償請求権については症状に関する最終の行政上の決定を受けた時からじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権については死亡した時から消滅時効が進行します。

使用者は宿直勤務の場所である社屋内に盗賊等が容易に侵入できないような物的施設を施したり宿直員を増員したり宿直員に安全教育を施す等の措置を講じる義務を負っており使用者がかかる義務を一切履行しない状況下で勤務場所に第三者が侵入し労働者に危害を加えた場合には使用者は安全配慮義務違反による損害賠償責任を負います。

下請企業に雇用される労働者が元請企業の労働者と同視できる場合には元請企業と下請企業の労働者とは特別な社会的接触の関係に入ったといえ元請企業は信義則上その労働者に対し安全配慮義務を負います。

安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合には弁護士費用についても安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害としてその賠償を請求できます。

労働者の遺族は遺族固有の慰謝料請求権を取得しません。雇用契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者ではない労働者の遺族が雇用契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰謝料請求権を取得するとは解しがたいためです。

積極的債権侵害

積極的債権侵害とは不完全給付により拡大損害を生じた場合一般をいい本来の義務の不履行ではなく付随的義務の不履行や違反として処理されます。契約の履行に伴って契約の目的物以外の契約当事者の財産が侵害された場合又は契約当事者以外の者の生命又は身体が害された場合にはその侵害行為は債務不履行となりえます。

事情変更の原則

事情変更の原則とは契約締結後に当事者の責めに帰することができない事由により社会経済事情に当事者の予想しなかった急激な変動が生じた場合に契約内容をこれに応ずるように変更修正しあるいは解約することもある程度認められるという原則をいいます。事情変更の理由により当事者に解除権を認めるにはその事情変更が客観的に観察して信義則上当事者を契約によって拘束することが著しく不合理と認められる場合であることを要します。

契約終了と信義則

契約存続中に生じたことについて善後措置を講ずる義務や契約存続中に生じた事実関係の処理に関する権利義務が信義則に基づき認められます。

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