表現の自由の沿革

明治憲法29条は日本臣民は法律の範囲内において言論著作印行集会及結社の自由を有すると規定しており、表現の自由は法律の留保の下に置かれていました。これに対し日本国憲法は法律の留保を付さずに21条1項により表現の自由を保障するとともに、同条2項において検閲の禁止と通信の秘密を規定し表現の自由を手厚く保障しています。

他の精神的自由との関係

表現の自由は外面的な精神活動の自由として位置付けられています。したがって思想及び良心に基づく外部的行為の自由は基本的には21条1項により保障されますが、外面的な精神活動のうち宗教的行為の自由は20条1項により保障され学問研究発表の自由は23条により保障されます。

また表現の自由には消極的表現の自由すなわち沈黙の自由も含まれますが、このうち世界観や人生観、主義、主張などの個人の人格的な内面的精神作用である思想及び良心に関する沈黙の自由は19条により保障され、信仰に関する沈黙の自由は20条により保障されます。

表現の自由の価値

表現の自由には2つの価値があります。第一に自己実現の価値であり、これは個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的な価値です。第二に自己統治の価値であり、これは言論活動により国民が政治的意思決定に関与するという民主政に資する社会的な価値です。

表現の自由の優越的地位

判例によれば、表現の自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって民主主義社会を基礎付ける重要な権利であり、憲法の保障する基本的人権の中でも特に重要視されるべきものであるから、その制約は経済的自由と比較してより厳格な基準の下で判断されなくてはなりません。

また自己実現の価値と自己統治の価値に加えて表現の自由には思想の自由市場論という意義が認められます。思想の自由市場論とは、ある思想が正しいかどうかすなわち真理かどうかは各人が自己の思想を自由に表明し他の思想と自由に競争させることによって確証されるべきであり、しかもその真理は常に暫定的なものであるという考え方をいいます。思想の自由市場論から、検閲ないし事前抑制禁止の原則や萎縮効果論、いわゆる対抗言論の法理などが導かれます。

以上のとおり表現の自由には重要な価値と意義が認められるため基本的人権の中でも優越的地位を占めると考えられています。

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