天皇及び皇族の人権享有主体性
天皇及び皇族が人権の享有主体となるかどうかについては3つの学説があります。
肯定説は、天皇と皇族はともに国民に含まれるが一般の国民と異なった扱いを受けうると解します。その理由として、日本国憲法のもとでは明治憲法下のような皇族と臣民との区別は存在しないこと、天皇は国民に含まれないとすると天皇についての特別扱いを必要以上に大きくすることになり妥当でないこと、天皇が一般国民と異なった扱いを受けるのは憲法自身が認めている天皇の地位の世襲制ないし象徴たる地位によるものであることが挙げられます。ただし、この説に対しては、憲法の文言に手掛かりがあれば天皇と同様の人権の制約が他の国民についても認められる危険をもたらすことになるとの批判がなされています。
折衷説は、天皇は一般的には国民には入らないが可能な限り人権規定が適用されると解します。皇族は当然に国民に入りますが、皇位継承に関係のある限りで多少の変容を受けるとします。その理由として、天皇が国民として一般に人権を享有できるという考え方は天皇と他の公職との差異を曖昧にし立法によってその地位と矛盾する権利を与える可能性を大きくすること、皇族の人権制約は皇位継承の可能性に基づく限度でのみ認められるにすぎないことが挙げられます。
否定説は、天皇及び皇族はともに門地によって国民から区別された特別の存在であり国民に含まれないと解します。ただし、世襲の天皇制の維持にとって必要最小限度のものを除き一般国民とできるだけ同様に扱われるべきとします。その理由として、憲法は近代人権思想の中核をなす平等理念とは異質の世襲の天皇を存続させており、現行法上天皇や皇族に認められている特権や制約は14条1項の合理的差別論では説明できないことが挙げられます。
天皇の人権が制限される範囲
天皇の選挙権について、多数説は天皇の選挙権は憲法上保障されておらず、また法律により天皇に選挙権を認めることも憲法上許されないと解しています。その根拠として、天皇は政治から中立であるべき象徴であること、および国政に関する権能を有しないという天皇の地位が挙げられます。なお、皇族に選挙権が認められていない点についても合憲と解するのが一般的です。
その他にも、特定の政党に加入する自由、職業に就く自由、外国移住の自由、国籍離脱の自由、婚姻の自由は天皇の象徴たる地位から認められず、学問の自由や表現の自由も一定の制約を受けるものと解されています。
未成年者の人権享有主体性
未成年者も日本国民である以上当然に人権享有主体性が認められます。しかし、未成年者は心身ともにいまだ発展途上にあり成熟した判断能力を持たないこと、および憲法自体が成年制度を前提としていることから、未成年者保護の見地から成年者と異なる制約に服するものと考えられています。
もっとも、未成年者といっても年齢によって心身の成熟度に差異があることから、保障される人権の性質に従って、未成年者の心身の健全な発達を図るための必要最小限度の制約のみが憲法上許容されると解されています。
パターナリスティックな制約
未成年者の人権制約については、人権相互の衝突矛盾を防止する公共の福祉の原理による制約のほかに、限定されたパターナリスティックな制約を認める立場が有力です。この立場は、成熟した判断を欠く行動の結果、長期的にみて未成年者自身の目的達成諸能力を重大かつ永続的に弱化させる見込みのある場合に限って国の介入が正当化されるとしています。
未成年者の選挙運動の禁止
年齢満18歳未満の者の選挙運動を禁止し違反者に刑罰を科す規定の合憲性について、選挙運動が未成年者自身の目的達成諸能力を重大かつ永続的に弱化させる具体的害悪を未成年者にもたらすものかどうか、未成年者一般に対して刑罰によって規制すべき事柄であるかどうかという観点から大きな疑問が呈示されています。
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