内閣の助言と承認

天皇の国事に関するすべての行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負います。

「助言と承認」の意味については2つの考え方があります。

A説は、「助言又は承認」と読むことはできないが、天皇の行動がすべて内閣の意思に基づくべきという「助言と承認」の趣旨が確保されていれば、個別の行為として行わなくても「助言と承認」という1つの行為があるといってよいと考えます。この説では、内閣以外の機関が実質的権限を有している事項については、「助言と承認」を必要とするのは内閣が決定する余地がある場合に限るから、不要であるとします。

B説は、憲法が「助言と承認」という形式的な行為をあえて要求したことからいって、事前の「助言」と事後の「承認」の双方が必要と解します。この説では、「助言と承認」はもともと国事行為の実質的決定権とは関係なく形式的行為として要求されているものであるから、当然すべての国事行為に必要であるとします。

内閣の責任と天皇の無答責

内閣は国事行為の助言と承認に際して政治的な裁量すなわち政治的権限を行使するので、その点について国会に対して政治責任を負います。

一方、天皇は内閣の助言と承認に完全に拘束され、天皇の側からのいかなる発意や異議も認められません。天皇は国事行為を行っても政治的権限を行使するわけではないため、政治責任を負うことはありません。

「国政に関する権能」と「国事に関する行為」の関係

天皇は国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しません。この「国政に関する権能」と「国事に関する行為」の関係については3つの説があります。

A説は、国事行為はもともと国政に関連する行為であるが、すべて内閣の助言と承認が要求され、その助言と承認に実質的決定権が含まれるため、結果的に国事行為は形式的で儀礼的なものになると考えます。この説に対しては、内閣総理大臣の任命については実質的決定権は国会にあり、内閣の助言と承認に実質的決定権が吸収されることはありえないとの批判があります。

B説は、4条は天皇に単なる「行為」権のみを認め「国政に関する権能」を認めていないのであって、国事行為は本来的に形式的で儀礼的な行為にとどまると考えます。この説に対しては、このように考えるならば4条により国事行為の性質が決まり、そのような性質の国事行為について内閣の助言と承認が要求されることになるから、3条と4条の順序として4条が先に来るべきはずであるとの批判があります。

C説は、「国事に関する行為」は本質上「国政に関する権能」にかかわるものであり、4条は国事行為のほかには国政権能がないという趣旨に解します。この説に対しては、4条の文言からいって無理であるとの批判があります。

国事行為の種類

天皇の国事行為は憲法に定められたものに限られます。7条に列記された1号から10号までの行為のほか、6条および4条2項の行為も国事行為です。たとえ国政に関する権能を天皇に付与しないとしても、上記以外の行為を新たな国事行為として法律で定めることは許されません。

国事行為は性質によっていくつかに分類されます。第一に、行為そのものが単に儀礼的な行為であり、もともと法的効果を伴わない事実行為であるものとして、外国の大使および公使の接受や儀式を行うことが挙げられます。第二に、天皇は「認証」だけを行うとされることによって形式的で儀礼的な性格となっているものとして、国務大臣等の任免の認証、大赦等の認証、批准書等の認証が挙げられます。第三に、行為そのものはもともと国政に関するものであるが、実質上の決定権が天皇以外の国家機関に与えられていることの結果として天皇の行為が形式的で儀礼的な意味しか持たなくなっているものがあります。内閣総理大臣の任命、最高裁判所長官の任命、憲法改正・法律・政令・条約の公布、国会の召集、衆議院の解散、国会議員の総選挙の施行の公示、栄典の授与がこれに当たります。なお、国会の召集と衆議院の解散については、実質的決定権の所在の問題と関連して本来的に形式的で儀礼的な行為とする立場も有力です。最後に、特殊なものとして国事行為の委任があります。

国事行為の委任と臨時代行

天皇が国事行為を行えない場合、他の者が天皇に代わって国事行為を行う制度として、臨時代行と摂政が規定されています。

国事行為の臨時代行に関する法律が定められており、委任は個々の国事行為について行うことも、すべての国事行為について一括して行うことも可能です。国事行為を委任すること自体も国事行為であるため、内閣の助言と承認が必要です。法律によれば委任が可能な場合は、天皇の心身の疾患がある場合と、外国訪問のような事故がある場合です。ただし、いずれの場合も摂政を置くべき場合は除かれます。委任を受ける者は、摂政になる場合と同順位の皇族です。

摂政

摂政は天皇の法定代行機関であり、天皇自ら国事行為を行いえないような状態にあるときに置かれます。天皇の委任による臨時代行とは異なり、皇室典範の定める原因が生じることにより当然に設置されます。摂政は事実行為たる国事行為も代行しますが、天皇が摂政に国事行為の代行を委任することはありません。

摂政が「天皇の名で」国事行為を行うとは「天皇に代わって」ということであり、天皇がしたのと同じ法的効果を持つことを意味します。摂政の行う国事行為についても内閣の助言と承認が必要となります。

ただし、摂政は国事行為を代行するにとどまり、象徴としての役割まで代行するわけではありません。象徴としての性格は天皇に専属し、天皇は国事行為をしなくても象徴としての性格を失いません。

摂政が置かれる場合は2つあります。第一に、天皇が未成年のときです。成年は18歳とされており、この場合は皇室会議の議は不要です。第二に、天皇が精神もしくは身体の重患または重大な事故により国事に関する行為を自らすることができないと皇室会議で判定されたときです。

摂政に就任する資格者は成年の皇族に限られ、その順序は皇室典範が定めています。皇后や内親王も摂政に就任する資格者に含まれます。

なお、摂政も国事行為を委任することが認められます。外国訪問のような場合に摂政の委任を必要とし、摂政の委任を認めても特に弊害はないためです。

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