共謀共同正犯の意義と判例

共謀共同正犯とは2人以上の者が犯罪を実現するための謀議をし共謀者の一部の者のみが実行行為を行う場合をいいます。

判例は共同正犯が成立するには2人以上の者が特定の犯罪を行うため共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなしよって犯罪を実行した事実が認められなければならないとし共謀に参加した事実が認められる以上直接実行行為に関与しない者でも他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味においてその間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はないとして共謀共同正犯を肯定しています。

共同正犯の成立要件

共同正犯の成立要件は共謀、正犯性及び共謀に基づく実行行為です。正犯性を共謀に含めて検討する見解も有力です。なお実行共同正犯と共謀共同正犯は共謀に基づく実行行為を共謀者全員が行ったか一部の者が担当したかという点が異なるだけであるので両者の成立要件を特に区別して考える必要はないと解されています。

共謀

共謀とは2人以上の者が特定の犯罪を行うため相互に他人の行為を利用及び補充し合い各自の意思を実行に移すことを内容とする合意をいいます。

意思の連絡の内容は犯罪の詳細すなわち日時や場所や方法などに至る必要はないと解されていますが犯行の本質的部分について共謀者間に了解があることが必要と解されています。

意思の連絡は犯行に先立ってなされる事前共謀が典型的ですが犯行現場で謀議がなされる現場共謀もありえます。また必ずしも全員が同時に意思の連絡をする必要はなく複数の者が順次意思の連絡をする順次共謀であっても全員について意思の連絡があったと認められます。

さらに意思の連絡は明示的になされたものだけではなく黙示的になされたものであってもよいとされています。判例は暴力団組長がボディーガードらがけん銃等を所持していることを確定的に認識しながらそれを当然のこととして受け入れて認容しボディーガードらもそのことを察していた場合にけん銃等の所持につき黙示的に意思の連絡があったといえるとしています。そしてボディーガードらは終始組長の身辺にいて行動を共にしていたものであり彼らを指揮命令する権限を有する組長の地位と彼らによって警護を受けるという組長の立場を併せ考えれば実質的には組長がけん銃等を所持させていたと評しうるのであるとしてけん銃等の所持について共謀共同正犯の成立を認めています。もっともこの判例は黙示の意思の連絡があればよいとしたものであり意思の連絡を欠いても共謀が成立するという趣旨ではない点に注意が必要です。

また判例は暴力団幹部らが襲撃に備えてけん銃等を所持して組長の警護に当たっていた事案について組長においてもけん銃を所持していることを認識したうえでそれを当然のこととして受け入れて認容していたものと推認するのが相当であるとして共謀の成立を認めています。

さらに判例は公認会計士が虚偽記載を認識していたほか会計処理等について代表取締役らに対して助言や了承を与えてきたため虚偽記載を是正できる立場にあったにもかかわらず自己の認識を監査意見に反映させることなく有用意見及び適正意見を付した事案について共謀による共同正犯の成立を認めています。

正犯性

共同正犯が成立するためには単に意思の連絡があったというだけでは足りず各自に自己の犯罪として行う意思すなわち正犯意思が存在することが必要です。正犯意思があったかどうかは共謀者と実行行為者との関係、犯行の動機や分け前の約束やその分配の有無及び謀議の経過や態様や積極性などに着目して判断されます。

構成要件の実現にとって実行行為に準ずるような重要な役割を果たし結果に対して因果性を及ぼしたときは正犯意思を認めてもよいと考えられています。すなわち重要な役割は正犯意思を基礎づける重要な間接事実と捉えることができます。特に共謀にのみ関与した共謀者については自己の犯罪を実行したといえるだけの重要な役割を果たした場合に正犯意思が認められます。重要な役割を果たしたといえるかは共謀者の地位すなわち上下関係、謀議への関与の程度及び犯行全体における寄与度すなわち犯罪の実現に不可欠な準備行為をしたか機械的作業をしたにすぎないかなどから判断されます。

共謀に基づく実行行為

共謀共同正犯が成立するためには共謀に基づいて少なくとも共謀者の1人が実行行為を行う必要があります。

共謀に基づく実行行為があるといえるためには実行行為が当初の共謀に基づくものかそれとも共謀とは無関係に行われたものかを吟味する必要がありこれを共謀の射程といいます。共謀の射程は当初の共謀と実行行為との間に因果性が認められるかという観点から判断します。

具体的には当初の共謀と実行行為の内容との共通性すなわち被害者の同一性や行為態様の類似性や侵害法益の同質性等、当初の共謀による行為と過剰結果を惹起した行為との関連性すなわち機会の同一性や時間的場所的近接性等、犯意の単一性及び継続性並びに動機及び目的の共通性という事情を総合的に考慮して判断します。

共謀の射程が及び因果性が肯定される場合には当該実行行為は共謀に基づくものといえるので共謀者に共同正犯が成立しうることになります。そして共謀者の故意と発生した結果との間に不一致があれば次に共犯の錯誤の問題となります。他方で共謀の射程が及ばず因果性が否定される場合には当該実行行為は共謀に基づくものとはいえないので共同正犯の成立要件は充足されず共謀者に共同正犯は成立しません。この場合には錯誤の問題にすらなりません。

なお共謀の射程が及ぶかは共謀と結果との間の因果性の問題であり物理的因果性と心理的因果性の両面から客観的に判断される一方で共犯の錯誤は認識した事実と発生した事実が異なる場合の故意すなわち主観面の問題と整理されています。

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