強盗・不同意性交等罪の趣旨
241条は同一の機会に強盗の行為と不同意性交等の行為の双方を行うことの悪質性及び重大性に着目し強盗罪と不同意性交等罪を結合させた結合犯として同一の機会になされた強盗の行為と不同意性交等の行為の先後関係を問わず重い法定刑を科す規定です。
強盗・不同意性交等罪の保護法益
他人の財物及び財産上の利益、人の生命及び身体の自由並びに性的自由です。
強盗・不同意性交等罪
241条1項は強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が177条の罪若しくはその未遂罪をも犯したとき又は同条の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは無期又は7年以上の拘禁刑に処すると定めています。
主体
本罪の主体は強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者又は177条の罪若しくはその未遂罪を犯した者です。強盗の罪とは強盗罪、事後強盗罪及び昏酔強盗罪をいい強盗予備罪は含まれません。177条の罪は不同意性交等罪です。なお監護者性交等罪と強盗の罪が同一の機会に犯されることは想定し難いため監護者性交等罪は明文で除外されています。
行為
本罪は強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が177条の罪若しくはその未遂罪をも犯したとき又は177条の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときに成立します。したがっていずれの犯罪の要件も充足されることを要します。
不同意性交等の行為を行った後に初めて財物奪取の意思が生じた場合には新たな暴行又は脅迫をした上で財物を奪取しなければ本罪は成立しません。もっとも不同意性交等罪の犯人がその現場に滞留していること自体が被害者の意識に反映されている限りで被害者に対する反抗抑圧状態を継続する行為としての脅迫と解されるから積極的な暴行又は脅迫までは必要ではないと解されています。
また強盗の行為と不同意性交等の行為は同一の機会に行われる必要があります。同一の機会の意義については強盗の機会と同様に解されています。なお不同意性交等罪の被害者は強盗の罪の被害者と同一でなくてもよいとされています。
故意
本罪の故意として同一の機会に強盗の行為と不同意性交等の行為を行う認識及び認容が必要です。
強盗・不同意性交等致死罪
241条3項は1項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は死刑又は無期拘禁刑に処すると定めています。
強盗・不同意性交等致死罪が成立するためには強盗・不同意性交等罪に当たる行為により人を死亡させたことすなわち強盗の行為又は不同意性交等の行為のいずれかと死亡の結果との間に因果関係が認められることを要します。本条の対象となるのはその文言上強盗の行為又は不同意性交等の行為により死亡結果が発生した場合に限られます。そのため強盗の行為又は不同意性交等の行為ではなく強盗・不同意性交等の機会における行為によって人を死亡させた場合には強盗・不同意性交等致死罪は成立せず強盗・不同意性交等罪と強盗殺人罪の観念的競合になるにすぎないと解する見解が有力です。
傷害の結果のみが生じた場合
本条は強盗・不同意性交等罪に当たる行為により人の死亡の結果が生じた場合について規定していますが傷害の結果のみが生じた場合については規定していません。判例及び通説は強盗・不同意性交等罪のみで処断すべきとする見解を採っています。強盗・不同意性交等罪の法定刑が非常に重くなっているのは被害者に負傷の結果が生じた場合でも強盗・不同意性交等罪のみの成立を認める趣旨であると解することができ傷害の点については量刑上不利益な情状として考慮すれば足りること及び傷害の結果が発生したが強盗と不同意性交等のいずれも未遂に終わった場合でも刑が減軽されることはないので強盗致傷罪や不同意性交等致傷罪よりも処断刑が軽くなることもないことがその理由です。
致死罪の故意
強盗・不同意性交等罪の犯人が殺人の故意をもって死亡の結果を生じさせた場合にも本罪が成立します。これは故意犯包含説です。241条3項は死刑又は無期拘禁刑という極めて重い法定刑を定めており殺人の故意がある場合を含まないとするのは妥当でないこと及び241条3項は1項の罪に当たる行為により人を死亡させたとしか規定しておらず結果的加重犯に特有のよってという文言をあえて用いていないので殺人の故意がある場合も含むと解すべきであることがその理由です。
致死罪の未遂
本罪は未遂犯も処罰されます。本罪の未遂は強盗・不同意性交等罪を犯した者が殺意をもって被害者を殺そうとしたが被害者が死亡しなかった場合に成立します。
減軽及び免除事由
本罪は強盗の罪若しくはその未遂罪と177条の罪若しくはその未遂罪が同一の機会に行われた場合を結合犯としてその処罰の対象としていることから強盗の行為と不同意性交等の行為のいずれもが未遂に終わったとしても強盗・不同意性交等罪が成立します。
もっとも241条2項は強盗の行為と不同意性交等の行為のいずれもが未遂であり、かつ人の死傷結果が生じていない場合には刑の任意的減軽を認めています。これは法の規定の上では既遂犯であるため通常の未遂犯そのものではないもののその行為の違法性の低さを考慮し実質的には未遂減軽の規定を置いたものと解されています。
また強盗の行為と不同意性交等の行為のいずれもが未遂であり強盗の行為と不同意性交等の行為の少なくとも一方の行為について自己の意思により中止したときは中止犯と同様に刑が必要的に減軽又は免除されます。
罪数
強盗・不同意性交等罪及び同致死罪は同一の機会に強盗の行為と不同意性交等の行為の双方を行うことの悪質性及び重大性に着目し重い法定刑を科す規定であり被害者の性的自由を重要な保護法益の1つとすることから被害者の数により罪数を決定すべきです。判例は1つの強盗が行われた場所において複数の被害者に対して不同意性交等の行為が行われた事案において被害者の数に応じた強盗・不同意性交等罪が成立しこれらは併合罪となるとしています。
強盗予備罪
237条は強盗の罪を犯す目的でその予備をした者は2年以下の拘禁刑に処すると定めています。
他人の占有等に係る自己の財物
242条は自己の財物であっても他人が占有し又は公務所の命令により他人が看守するものであるときはこの章の罪については他人の財物とみなすと定めています。自己の財物には不動産侵奪罪等における不動産も含まれます。公務所の命令により他人が看守するものとしては強制執行等によって執行官が差し押さえた物や収税官吏が滞納処分として差し押さえた物等があります。
未遂罪
243条は窃盗罪から強盗罪まで、事後強盗罪から強盗致死傷罪まで及び強盗・不同意性交等致死罪の未遂は罰すると定めています。
親族間の特例と強盗罪
244条の親族相盗例は窃盗罪及び不動産侵奪罪に適用されますが強盗罪には準用されません。
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