非典型担保の概要
民法上の担保物権以外の非典型担保物権として重要なものは譲渡担保、売渡担保、仮登記担保及び所有権留保があります。動産は原則として抵当権の目的とすることができず質に入れることになじまない場合があること、不動産については抵当権の設定及び実行は手続が面倒で費用がかかることが非典型担保物権登場の背景です。
譲渡担保の意義
譲渡担保とは債権担保のため物の所有権あるいはその他の財産権を法律形式上債権者に譲渡して信用授受の目的を達するもので信用の授受を債権及び債務の形式で残しておくものをいいます。
法的構成
譲渡担保の法的構成については2つの見解があります。所有権的構成では所有権は譲渡担保権者に完全に移転しただ譲渡担保権者はその所有権を担保の目的以外には行使しないという義務すなわち債権的拘束を設定者に対して負うにすぎないと考えます。担保的構成では担保的実質を重視し譲渡担保すなわち所有権の移転を担保権の設定と考え所有権は依然設定者に帰属していると考えます。
譲渡担保の設定
譲渡担保は設定者と担保権者との契約により設定されます。設定者は債務者自身であるのが普通ですが質権や抵当権の場合と同様に第三者すなわち物上保証人でもかまいません。譲渡担保権者は債権者本人であるのが普通ですが第三者が担保権者となることも可能です。
目的物は財産的価値と譲渡性があれば制限はありません。
対抗要件について動産の場合には引渡しが必要であり占有改定の方法によることも認められます。設定者が目的物を直接占有したことがなく間接占有しているにすぎない場合も譲渡担保権者は占有改定により対抗要件を具備することができます。法人がする動産の譲渡担保については動産譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは引渡しがあったものとみなされるのでこの方法により対抗要件を具備することも可能です。不動産の場合には登記が対抗要件であり売買を原因とする所有権移転登記のほか譲渡担保を原因とする所有権移転登記も認められます。
被担保債権の範囲
譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は強行法規又は公序良俗に反しない限りその設定契約の当事者間において自由に定めることができます。抵当権についての375条は後順位抵当権者の保護の規定であり不動産譲渡担保の場合は後順位担保権者の生じる余地はないので同条は類推適用されません。
不動産の譲渡担保権者がその不動産に設定された先順位の抵当権の被担保債権を代位弁済したことにより取得する求償権は譲渡担保設定契約において特段の定めのない限り被担保債権には含まれません。
目的物の範囲
付合物及び従物については抵当権の効力の及ぶ範囲に関する370条を類推適用してよいとされます。従たる権利すなわち土地の賃借権等についても譲渡担保権の効力が及びます。また物上代位も認められます。
設定者による占有と利用
譲渡担保権が設定された後も設定者が目的物を占有し利用できます。設定者は目的物件の不法占有者に対してその返還を請求することができます。
譲渡担保権の実行
被担保債権について債務者の遅滞が生じることが必要です。債務者が債務の履行を遅滞したときは処分清算型及び帰属清算型を問わず譲渡担保権者は目的不動産を処分する権限を取得します。
債権者が担保権を実行するためには目的物の占有を取得することが必要です。目的物の占有が債務者の下にある場合には債権者は債務者の占有する目的物の引渡しを請求することができますが特別の事情がある場合を除き処分清算型及び帰属清算型を問わず清算金の支払と引換えにのみなしえます。
譲渡担保設定者は譲渡担保権者や目的物の譲受人等の第三者に対し清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができます。
受戻権
債務者が弁済期に弁済しなかったとしてもそれをもって直ちに目的物が譲渡担保権者に帰属するわけではなく譲渡担保権者が譲渡担保権の実行を完了するまでは債務者は債務の全額を弁済して譲渡担保権を消滅させ目的物の所有権を回復することができます。これを受戻権といいます。
受戻権の消滅時期は処分清算型の場合には第三者との処分契約締結時であり帰属清算型の場合には清算金の支払又は提供時です。判例は不動産譲渡担保契約について債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には債権者は帰属清算型か処分清算型かを問わず目的物を処分する権能を取得し債権者がこの権能に基づいて目的物を処分したときは受け戻すことができなくなるとしています。
譲渡担保権設定者は債務を弁済して目的物の所有権を回復することができますが債務の弁済と目的物の返還は同時履行の関係に立ちません。債務の弁済が目的物の返還よりも先履行の関係に立つためです。
また譲渡担保権設定者は譲渡担保権者が清算金の支払又は提供をせず清算金がない旨の通知もしない間に譲渡担保の目的物の受戻権を放棄しても譲渡担保権者に清算金の支払を請求できません。譲渡担保権設定者の清算金支払請求権と受戻権はその発生原因を異にする別個の権利であるから受戻権を放棄したとしてもその効果は受戻権が放棄されたという状況を現出するにとどまりこれにより譲渡担保権設定者が清算金支払請求権を取得すると解することはできないためです。
清算義務
目的物の価格が債務額を超過するとき譲渡担保権者はその超過額を返還しなければなりません。その存否及び額は清算金の支払又は提供時に確定し清算金のないときはその旨通知したときに確定します。清算しないで第三者に処分したときは処分時に確定します。
設定者側の第三者と譲渡担保権者の関係
設定者が目的物を譲渡した場合について所有権的構成では設定者は無権利者であるから第三者は即時取得した場合に限り所有権を取得します。担保的構成では設定者は所有者であるから第三者は所有権を取得し第三者が譲渡担保権の存在について善意無過失の場合には譲渡担保権の負担のない所有権を即時取得します。
設定者が第三者のために重ねて譲渡担保を設定した場合について所有権的構成では二重譲渡と同様に対抗要件具備の先後により優劣が決定されます。担保的構成では対抗要件具備の順序に従い第2順位の譲渡担保権が設定されます。後順位譲渡担保権者が設定者に対して私的実行すなわち目的物の引渡しをすることは許されません。これを認めると先順位譲渡担保権の譲渡担保は有名無実のものとなりかねないためです。
設定者の一般債権者が目的物を差し押さえた場合には譲渡担保権者は第三者の差押えに対し第三者異議の訴えをなしえます。
譲渡担保権者側の第三者と設定者の関係
譲渡担保権者が弁済期前に目的物を譲渡した場合について所有権的構成では譲受人は目的物の所有権を取得し債務者は弁済提供をして目的物を受け戻せますが二重譲渡のような関係になり対抗問題となります。担保的構成では譲受人は所有権を取得しませんが目的物が不動産の場合には善意無過失の譲受人は94条2項類推適用により完全な所有権を取得します。設定者は譲渡担保権者に対して設定契約の債務不履行として損害賠償を請求できます。
債務者が弁済期に弁済した後に譲渡担保権者が目的物を処分した場合について所有権的構成では設定者と譲受人のうち対抗要件を先に備えた方が所有権を排他的に取得します。譲渡担保権者が設定者と譲受人に二重譲渡したのと同じ関係になるためです。
弁済期後に譲渡担保権者が目的物を譲渡した後に債務者が弁済した場合について処分清算型では弁済期到来後に債務者が弁済をしない場合に債権者は帰属清算型か処分清算型かを問わず目的物を処分する権能を取得し債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し債務者の受戻権は消滅します。譲受人が背信的悪意者の場合も含みます。帰属清算型では判例によると処分契約の成立とともに受戻権は消滅するとされていますが学説では清算金の提供によってはじめて受戻権は消滅すると解しています。
第三者が譲渡担保権者から譲渡担保の設定を受けた場合について所有権的構成では第三者は譲渡担保権を取得します。担保的構成では第三者は転譲渡担保権を取得し譲渡担保権者の被担保債権額を超えない範囲で優先弁済権を有します。
譲渡担保権者の一般債権者が目的物を差し押さえた場合について不動産では弁済期前であれば設定者は第三者異議の訴えを提起できますが弁済期後であれば提起できません。動産では占有が設定者の下にあれば事実上差押えはできません。
集合動産譲渡担保
集合動産譲渡担保は種類、所在場所及び量的範囲を指定するなど何らかの方法で目的物の範囲が特定されている限り集合物という1つの物を目的とする譲渡担保として有効です。債務者所有の物とそれ以外の物とを明確に識別する指標が示されるかまた現実にその区別ができるような適宜な措置が講じられた形跡が全くないときは特定性を欠きます。
対抗要件は占有改定又は動産譲渡の登記です。集合物自体の占有改定によりその後に構成部分が変化したとしても集合物としての同一性が損なわれない限り新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について対抗要件具備の効力が及びます。
集合動産譲渡担保と先取特権の関係について判例は譲渡担保の設定により先取特権の追及力は制限され目的物には譲渡担保の効力のみが及ぶとします。これに対し原則として動産譲渡担保権は動産売買先取特権に優先するが譲渡担保権者が先取特権の存在を知っていた場合には先取特権が優先するとする見解もあります。
集合動産譲渡担保設定者にはその通常の営業の範囲内で譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されておりこの権限内でされた処分の相手方は当該動産について確定的に所有権を取得することができます。しかし通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合にはこの権限に基づかないものである以上譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできません。
構成部分の変動する集合動産を目的とする集合動産譲渡担保権の効力は目的動産が滅失した場合に譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権にまで及びます。もっとも譲渡担保設定者が通常の営業を継続している場合には目的動産の滅失により当該請求権が発生したとしても合意などの特段の事情がない限り譲渡担保権者は当該請求権に対し物上代位権を行使することは許されません。
債権譲渡担保
金銭債権の譲渡担保は譲渡担保設定者が第三債務者に対して有する金銭債権を債権者に譲渡し債務者の債務不履行があれば債権者がその債権を行使して第三債務者から金銭を回収し自らの債権の満足に充てるという方法で行われます。
債権の譲渡担保は形式的には債権譲渡の方式で行われるため譲渡担保権の設定を第三債務者や他の第三者に対する対抗要件を具備するためには債権譲渡の規定に従い確定日付ある第三債務者への通知又は第三債務者からの確定日付ある承諾を具備する必要があります。また法人が債権譲渡をした場合には動産債権譲渡特例法により譲渡登記によっても第三者に対する対抗要件を具備することができます。
集合債権譲渡担保
集合債権譲渡担保とは現在債権及び将来債権を包括的に譲渡担保にとる方法をいいます。将来発生する複数の債権を譲渡担保の目的債権とすることは可能です。
判例は将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について契約締結時において債権の発生可能性が低かったことは契約の効力を当然に左右するものではないとした上で契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであるとみられるなどの特段の事情の認められる場合にはその契約は公序良俗に反するなどとしてその効力の全部又は一部が否定されることがあるものというべきですが譲渡の目的とされる債権が特定されている限り将来債権の包括的譲渡は有効としています。包括的に譲渡した債権は譲渡契約時に確定的に譲渡されたことになります。
取立ての通知をするまでは集合債権譲渡の取立てを譲渡担保設定者に留保するという集合債権譲渡担保契約について発生した債権も将来発生する債権も譲渡担保権者に確定的に譲渡されており譲渡担保設定者に取立権限が付与されているにすぎません。譲渡担保の目的とされた将来債権が発生した場合には譲渡担保権者は譲渡担保設定者の特段の行為を要することなく当然に当該債権を担保の目的で取得することができます。
集合債権譲渡担保が有効に設定されるためには目的債権の範囲が特定されている必要があります。判例は譲渡の効果が発生する時点で債権者、債務者及び発生原因等の考慮要素により譲渡の目的となるべき債権を譲渡人が有する他の債権から識別することができる程度に特定されていれば足りるとしています。
集合債権譲渡担保の対抗要件について民法上の対抗要件としては債権譲渡の規定に従い第三債務者への確定日付ある通知又は第三債務者からの確定日付ある承諾を具備する必要があります。包括的に当事者、債権の発生原因及び期間を特定して行う1つの通知又は承諾であっても対抗要件として有効でありかつその時点で未だ発生していない将来債権についても対抗力が生じます。動産債権譲渡特例法上の対抗要件としては法人による債権譲渡の場合に債権譲渡登記ファイルに譲渡登記をしたときは第三者に対して対抗できます。もっとも第三債務者は譲渡登記されただけでは譲渡の対抗を受けません。譲渡人又は譲受人から第三債務者に登記事項証明書を添付した通知がなされまたは第三債務者が承諾したときは第三債務者に対しても対抗できることとなります。
売渡担保
売渡担保とは債権担保のため物の所有権あるいはその他の財産権を法律形式上債権者に譲渡して信用授受の目的を達するもので信用授受を売買の形式によって行い債権及び債務関係を残さないものをいいます。具体的には買戻し又は再売買予約という形がとられます。
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