贈与の意義と法的性質

贈与とは贈与者が受贈者に対して無償である財産を相手方に与えることを目的とする契約です。贈与の目的物はある財産であれば足りるため他人に属する財産の贈与契約も有効です。財産を与えるとは贈与者の財産の減少により受贈者の財産が増加することであり受贈者のために地上権や地役権を設定する約束をすることも贈与に含まれます。法的性質は無償、片務、諾成契約です。

贈与は契約であるため贈与者と受贈者の意思の合致が必要です。対価なしに一方的に相手方に財産を与える契約であることに留意して動機も含めた慎重な判断が必要です。贈与者は契約により負担した債務を履行しなければならず特定物の贈与者は善管注意義務を負います。

書面によらない贈与の解除

550条は書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができると定めています。ただし履行の終わった部分についてはこの限りではありません。贈与の意思を明確にするとともに軽率に贈与しないよう戒め紛争の発生を防止するために規定されたものです。

贈与の書面の記載について贈与者の意思が書面に表示されていれば足ります。贈与契約書でなくともよく受贈者の氏名や承諾の意思表示が書面上明らかでなくともよいとされます。書面による贈与の書面の作成は贈与契約の成立と同時でなくともよいとされます。売買契約書によって登記がなされたが他の証拠から無償譲渡であることが立証された場合は書面に当たります。ただし贈与者が自分の日記に贈与契約を締結した事実を記載した場合は書面に当たりません。

書面によらない贈与の解除は各当事者に認められるため受贈者からの解除も可能です。贈与者が故意や過失により目的物を著しく損傷するなどした場合であっても548条が適用されることはありません。目的物はまだ引き渡されておらず548条の予定する状況とは異なるためです。

履行の終わったの意義について債務の履行は債務の本旨に従って給付を実現することですが贈与の履行が終わるとはこれよりも緩く贈与者の贈与の意思を明確に表す程度の徴表であればよいとされます。不動産贈与について不動産の引渡しがあれば移転登記が済んでいなくても履行は終わったものとされまた不動産の移転登記があれば引渡しが済んでいなくとも履行は終わったものとされます。動産贈与については引渡しの有無により判断されます。引渡しには現実の引渡しのみならず簡易の引渡しや占有改定も含まれます。現実贈与すなわち意思表示と同時に実行行為の完了する贈与においては本条による解除が問題となる余地はありません。条件付贈与契約の場合にはたとえ引渡しがなされても条件が成就していない限り取り消しうるとされます。書面によらない贈与の目的物がその履行前に合意により他の物に変更されても履行と同視することはできません。

書面による贈与であったとしても意思表示一般の取消しは何ら妨げられません。書面による贈与や履行が終了した場合でも親族間の情誼関係が贈与者の責めに帰すべき事由によらずして破綻消滅し贈与の効果をそのまま維持存続させることが諸般の事情からみて信義衡平の原則上不当と解されるときは贈与者の贈与物返還請求を認めるのが相当であるとする下級審の判例があります。

贈与者の引渡義務等

551条1項は贈与者は贈与の目的である物又は権利を贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し又は移転することを約したものと推定すると定めています。贈与の無償性に鑑み贈与者の責任を売買契約の売主のものよりも軽減する趣旨です。贈与の目的として特定した時の状態とは特定物の贈与においては贈与契約を締結した時の状態を指しそれ以外の贈与においては目的物が特定した時の状態を指します。

贈与者が責任を負う場合として第1にこの推定に対する反証すなわち当事者間で別段の合意等がなされた場合があります。第2に負担付贈与の場合があります。

同条2項は負担付贈与については贈与者はその負担の限度において売主と同じく担保の責任を負うと定めています。目的物の価額が負担の額に足りないとき贈与者は負担の額と等しくなるまで損害を賠償すべきものと解されています。上記の場合には受贈者は債務不履行の一般的な規律に従い損害賠償請求、解除及び追完請求をすることができます。また金銭の支払を内容とする負担付贈与の場合にはその減額請求が可能となります。

定期贈与

552条は定期の給付を目的とする贈与は贈与者又は受贈者の死亡によってその効力を失うと定めています。定期贈与とは一定の時期ごとに無償で財産を与える契約をいいます。当事者の人的関係が重視されるため贈与者又は受贈者の死亡によって定期贈与の効力が消滅します。ただし反対の特約は可能であり本条は任意規定です。本条は書面による贈与契約についても適用されます。

負担付贈与

553条は負担付贈与についてはこの節に定めるもののほかその性質に反しない限り双務契約に関する規定を準用すると定めています。負担付贈与とは贈与契約の一部として受贈者に一定の給付義務を負担させる契約をいいます。受贈者の負担から利益を受ける者は贈与者でも第三者でも不特定多数の者でも構いません。負担は贈与契約の付款にすぎず履行がなされなくても贈与契約は効力を生じます。

受贈者が負担を履行しないときは贈与者は契約を解除できます。危険負担の準用の問題を生じるのは主として負担だけが履行不能となった場合と解されます。贈与者の給付が履行不能となれば受贈者の負担は自ずから消滅するためです。負担付贈与が書面によらない場合は550条に従って解除することができます。ただし負担のみが履行されている場合には当事者は解除することができないとするのが多数説です。

死因贈与

554条は贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与についてはその性質に反しない限り遺贈に関する規定を準用すると定めています。死因贈与とは贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与をいいます。

原則として遺贈に関する規定は死因贈与にも準用されますが贈与は契約であることからすべての規定が準用されるわけではなく準用されるのは効力に関する規定であり遺贈が単独行為であることに由来する規定は死因贈与に準用されません。遺言の効力に関する規定及び遺言の執行に関する規定並びに遺言の撤回に関する規定は準用されますが能力に関する規定、方式に関する規定及び承認放棄に関する規定等は準用されません。

判例は死因贈与についても遺言の撤回に関する1022条が遺言の方式に関する部分を除いて準用されることを前提に贈与者による撤回を認めています。ただし負担付死因贈与がされた場合において贈与者の生前に受贈者が負担の全部又はそれに類する程度の履行をしたときは受贈者の利益を保護する必要があるため撤回を認めることがやむを得ないと認められる特段の事情がない限り死因贈与の撤回は認められないとしています。

遺贈と死因贈与の相違について遺贈は単独行為であるため受贈者の承諾は不要ですが死因贈与は契約であるため受贈者の承諾が必要です。能力について遺贈は15歳以上の者がすることができ制限行為能力を理由とする取消しはできませんが死因贈与は18歳以上の者がすることができます。代理について遺贈は不可ですが死因贈与は可能です。方式について遺贈は厳格に法定されていますが死因贈与には遺贈の方式に関する条文は準用されません。胎児への遺贈は可能ですが胎児への死因贈与は不可とされています。

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