罪刑法定主義

罪刑法定主義とは犯罪と刑罰はあらかじめ法律で定められていなければならないという刑法の基本原則をいいます。罪刑法定主義は憲法31条の保障内容に含まれると解されています。

罪刑法定主義には2つの意義があります。第一に民主主義的要請としてどのような行為が犯罪となりどのような刑罰が科せられるかは国民がその代表である国会の議決によって成立する形式的意味の法律で定めておかなければなりません。ただし法律が下位規範である政令以下に罰則を設けることを具体的かつ個別的に委任した場合はこの限りではありません。第二に自由主義的要請として犯罪と刑罰は国民の権利や行動の自由を守るために犯罪が行われる前に成文法により明示して自らの行為が処罰されるかどうか予測できるようにしておかなければならず事後の法律で処罰してはなりません。

罪刑法定主義の派生原理

慣習刑法の禁止は法律主義の帰結として慣習法は刑法の直接の法源とはなりえないというものです。しかし刑法の規定に示された一定の概念の解釈にとって慣習が意味をもつ場合はありえます。

遡及処罰の禁止は憲法39条前段に基づくもので行為時に適法であった行為は処罰されないというものです。行為時に違法であったが罰則がなかった行為を事後立法で罰則を定めて処罰すること及び行為時に規定されていた刑よりも重い刑で処罰することも禁止する趣旨と解されています。なお一事不再理の原則は裁判制度そのものに内在する要請であり罪刑法定主義の要請ではありません。

絶対的不定期刑の禁止について絶対的不定期刑とは刑種と刑量をともに法定しない場合又は刑種だけを法定するが刑量は法定しない場合の法定刑をいいます。このような絶対的不定期刑は刑罰を法定したことにならず法律主義に反し禁止されます。一方長期と短期を定めて言い渡す相対的不定期刑は罪刑法定主義に反するとはされていません。

類推解釈の禁止は法律の適用に際し法規を超えた事実について他の規定から類推して犯罪の成立を認めることは許されないというものです。しかし刑罰法規も具体的な適用に際して裁判官の目的的かつ合理的解釈による補充が当然必要となるから拡張解釈は許容されると解されています。類推解釈の禁止は国民の行動の自由を保障するために要請されるものであるから被告人に有利な類推解釈は許容されます。

罪刑法定主義の実質化

法律さえあれば規定の内容はどのようなものでも罪刑法定主義に反しないとするのではなく不合理な刑罰法規を憲法31条違反として違憲かつ無効とする憲法解釈原理を実体的デュープロセス論といいます。

明確性の原則とは国民からみて不明確な文言を含む刑罰法規は憲法31条に反し無効であるというものです。通常の判断能力を有する一般人の理解において具体的場合に当該行為がその適用を受けるものか否かの判断を可能とするような基準が読み取れることが必要とされています。

刑法思想の史的展開

刑罰とは何か犯罪とは何かについて種々の理論的見解が主張されてきましたが大別して旧派と新派の2つの学派に分けることができます。

旧派は非決定論の立場から人間には自由意思があり自己の行動について因果の法則に支配されることなく理性的判断により選択できるとする考え方をとります。犯罪行為とは自由意思の外部的発現であるとし罰せられるべきは現実的な行為であるとします。犯罪論の中心は行為の客観的側面と結果におき責任とは自由意思で行為に出たことへの道義的非難であると解します。刑罰の本質は犯罪に対する応報として科せられる害悪であり刑罰の機能は社会一般人を戒め犯罪を予防する一般予防にあります。刑罰と保安処分は刑罰は責任に対するもの保安処分は危険性に対するものとして異なるとする二元主義の立場をとります。

新派は決定論の立場から人間には自由意思はなく自己の行動は遺伝的素質と社会的環境によって支配されているとする考え方をとります。犯罪行為とは反社会的性格の徴表であるとし罰せられるべきは危険な行為者であるとします。犯罪論の中心は反社会的性格や動機等の主観的側面におき責任とは社会的危険性ある者が甘受すべき負担であると解します。刑罰の本質は反社会的性格を改善し教育する手段であり刑罰の機能は行為者の再犯の予防である特別予防にあります。刑罰と保安処分は行為者に対する改善の手段として本質を同じくするとする一元主義の立場をとります。

保安処分とは主として特別予防の目的をもって設けられた刑罰以外の刑法上の法効果をいいます。

刑罰論

刑罰の正当化根拠については応報刑論、一般予防論及び特別予防論があります。

応報刑論は刑罰は犯罪に対する応報であるとする見解です。刑罰は苦痛ないし害悪を指しますが犯罪に対する応報という正当化根拠から犯罪との均衡を失するような刑罰を科すことは刑罰の役割に反し許されないとします。応報刑論は非決定論を前提としています。応報刑論に対しては刑罰を加えることそれ自体が目的であるから犯罪を行った者に対し特別予防効果を期待してその刑罰の執行を猶予する余地がなくなること及び犯罪予防のために必要な刑であっても責任に対応する刑を超える刑を科すことができなくなることが批判されています。

一般予防論は刑罰を科すことによる社会的な威嚇を通して一般人が将来犯罪を行うことを防止する効果があるとする見解です。刑罰を予告することにより一般人の心理を強制して犯罪を抑止するという消極的一般予防と処罰により行為者の行為が犯罪であると公的に確認されることにより一般人の規範意識を維持し覚醒させるという積極的一般予防があります。一般予防論に対しては一般予防を過度に重視すれば軽微な犯罪にも重い刑を科しうることとなるなど厳罰化の方向に向かう危険性があることが批判されています。

特別予防論は刑罰を科すことにより犯人自身が将来再び犯罪を行うことを防止する効果があるとする見解です。一般社会から隔離することで再犯を防止する隔離効果及び犯罪傾向が比較的軽い者に対して改善や教育を施し社会復帰を促す教育刑主義の内容を含みます。特別予防論に対しては特別予防の効果が生じるまで刑罰を継続する考え方をとりうるため軽微な犯罪を行った者であっても更生のために必要であれば長期の拘禁刑を科すことも正当化されるおそれがあること及び刑罰と保安処分の区別がなくなってしまうことが批判されています。

近時においては刑罰の本質は応報としての苦痛ないし害悪であるがその目的は犯罪の防止であるという相対的応報刑論が有力に主張されています。

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