財産犯の分類

財産犯は個別財産に対する罪と全体財産に対する罪に分類されます。個別財産に対する罪はさらに領得罪と毀棄罪に分類され領得罪は直接領得罪と間接領得罪に分類されます。直接領得罪は移転罪すなわち奪取罪と非移転罪すなわち非奪取罪に分類されます。

移転罪には盗取罪として窃盗罪及び不動産侵奪罪があり交付罪として詐欺罪及び恐喝罪があります。また強盗罪は盗取罪と交付罪の両方の性格を持ちます。非移転罪には横領罪があります。間接領得罪には盗品等に関する罪があります。毀棄罪には器物損壊罪等があります。全体財産に対する罪には背任罪があります。

窃盗罪は財物のみを客体としますが強盗罪、詐欺罪及び恐喝罪は財物のほか財産上の利益も客体とします。横領罪、盗品等に関する罪及び毀棄罪は財物のみを客体とし財産上の利益は含まれません。背任罪は財物及び財産上の利益の双方を客体とします。

財物の意義

財物とは所有権の対象となる有体物すなわち固体、液体及び気体をいいます。これを有体性説といいます。電気は有体物ではありませんが245条及びその準用規定により財物とみなされます。有体性説の立場では245条は処罰創設規定と位置づけられます。また情報それ自体は財物にあたりませんが情報が記録された媒体は財物にあたります。ただし有体物であっても人体やその一部は性質上財物にはあたりません。

これに対し財物とは人が管理し得る対象と解する立場すなわち管理可能性説に立つ場合245条は単なる確認的な注意規定にすぎず電気を盗む行為は245条がなくても処罰可能と解されます。

財物にあたるためには必ずしも金銭的又は経済的価値すなわち交換価値を要しません。本人にとって主観的又は感情的な価値しかない物であっても十分保護に値しますし他人の手に渡ると悪用されるおそれがあるため自己の手元で保管する利益すなわち消極的価値しかない物であっても所有権の対象となる有体物である以上財物性が肯定されます。

麻薬や銃砲刀剣類などの禁制品も国家により適法かつ適式に没収される場合を除きこれを保持し続ける利益は保護に値するので財物性が肯定されます。一方で有体物であっても所有権の対象となっていない物は財物性が否定されます。無主物は財物にあたりませんがもっとも無主物先占により他人が所有権を取得すればそれは財物にあたります。

財産上の利益

強盗罪、詐欺罪及び恐喝罪には2項犯罪すなわち利益犯が規定されており財物のほか財産上の利益も客体とされています。一方で窃盗罪には2項犯罪の規定がなく財物のみが客体です。

不法領得の意思

判例は窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であるとしその内容を権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思としています。

学説上は判例と同内容の意思すなわち権利者排除意思及び利用処分意思を必要とする説が通説です。これに対し権利者を排除して他人の物を自己の所有物とする意思ないし所有権者として振る舞う意思のみが必要であるとする説、経済的用法ないし本来的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思のみが必要であるとする説及び不要説が対立しています。

従来は財産罪の保護法益論と関連付けて不法領得の意思の要否が論じられてきましたが現在では保護法益論と不法領得の意思の要否との間には論理的な関係は存しないとするのが一般的です。

権利者排除意思

権利者排除意思とは権利者を排除して他人の物を自己の所有物とする意思をいいます。不可罰である使用窃盗すなわち他人の財物を一時的に使用して直ちに返却する目的で持ち出す行為と窃盗罪とを区別する機能を担っており主観的違法要素として位置づけられています。

一般には返還意思がない場合、返還意思はあるが相当程度の利用可能性を侵害する意思がある場合及び返還意思がありかつ利用可能性の侵害の程度も軽微であるが物に化体された価値の消耗又は侵害を伴う利用意思がある場合には行為者に権利者排除意思があるものと判断されています。

以上の場合にあたらず権利者排除意思が否定される程度の使用窃盗の意思であれば結果的に目的物を返還できなかったとしても窃盗罪の成立は否定されます。

判例は当初から乗り捨てる意思で逃走のために他人の船を使用した場合について一時使用の意思であっても返還意思が認められないとして不法領得の意思を肯定しています。また元の場所に戻しておくつもりで自動車を4時間余り乗り回した場合について返還意思があっても被害者の相当程度の利用可能性を侵害する意思が認められるとして不法領得の意思を肯定しています。

利用処分意思

利用処分意思とは経済的用法に従い他人の物を利用又は処分する意思をいいます。窃盗罪が毀棄罪よりも法定刑が重いのは窃盗罪が財物を利用しようという動機又は目的をもって行われる利欲犯的性格をもつ犯罪でありより強い非難に値するだけでなく一般予防の見地からも抑止の必要性が高いからです。したがって窃盗罪が成立するには利用処分意思が必要となります。このように利用処分意思は毀棄罪と窃盗罪とを区別する機能を担っています。

判例は経済的用法に従ったとは言い難い場合であっても本来の用法に従い使用又は処分する意思であれば足りるとしています。また窃盗罪が利欲犯的性格をもつ犯罪であり毀棄罪よりも強い非難に値することを重視するとたとえ本来の用法に従ったものではなくてもその財物から生ずる何らかの効用を享受する意思さえあれば利用処分意思を肯定してもよいと考えられています。したがって利用処分意思が否定されるのは専ら毀棄又は隠匿目的の場合に限られます。

親族間の特例

244条は配偶者、直系血族又は同居の親族の間において窃盗罪及び不動産侵奪罪を犯した者はその刑を免除しその他の親族に関するときは親告罪とするという特例すなわち親族相盗例を定めています。

244条1項が適用されれば必要的に刑が免除されます。1項は配偶者、直系血族及び同居の親族との間で一定の犯罪を犯した者に適用されます。内縁関係にある者は配偶者にあたりません。免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があるからです。配偶者及び直系血族については同居の有無を問わず1項が適用されます。同居の親族とは事実上居を同じくして日常生活を共同にしている親族すなわち配偶者及び直系血族を除いた6親等内の傍系血族と3親等内の姻族をいいます。一時宿泊している者は含まれません。

244条2項が適用されればその犯罪は親告罪となります。2項は同居の親族以外の親族との間で一定の犯罪を犯した者に適用されます。

244条3項は親族でない共犯については適用されないと定めています。1項の刑の免除の法的性質について法は家庭に入らずという刑事政策的配慮に基づく一身的処罰阻却事由であると解すると3項は当然の注意規定と解することになります。

窃盗罪及び不動産侵奪罪の被害者は占有者と所有者であるから本条の親族関係は犯人と占有者及び所有者との間にあることが必要です。

親族関係の錯誤

犯人が被害者との間に親族関係がないのにあると誤信して窃盗に及んだ場合に244条を適用する余地があるかが問題となります。244条1項による刑の免除は一身的処罰阻却事由であると解するのが通説とされておりその趣旨は法は家庭に入らずの思想から親族間の財産上の紛争は親族間の処分に委ねるのが相当であるという政策的な理由に基づきます。そうすると客観的には親族関係がない以上244条の適用による免除は認めるべきではなく犯人が誤信したことについては量刑上考慮すれば足りるものと考えられています。一身的処罰阻却事由に関する錯誤があっても故意は阻却されません。

親族相盗例の準用

親族相盗例は窃盗罪及び不動産侵奪罪に適用されるほか251条により詐欺罪、背任罪及び恐喝罪に準用され255条により横領罪及び遺失物等横領罪に準用されます。一方で強盗罪及び毀棄罪には準用されません。盗品等の罪については244条の準用規定はありませんが257条が親族等の間の犯罪に関する特例を別に規定しています。

電気窃盗

245条はこの章の罪について電気は財物とみなすと定めています。電気以外のエネルギー等についてどこまでを財物と考えるかは争いがあります。判例は可動性と管理可能性を併有すれば財物にあたるとしますが現在では本条は本来財物でないものを財物とみる趣旨であるとして財物は有体物に限るとする有体性説が通説です。

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