不作為犯の意義

不作為犯とは不作為によって犯罪を実現する場合をいいます。真正不作為犯とは構成要件自体が不作為の形式を採用するものをいい保護責任者不保護罪や不退去罪がその例です。不真正不作為犯とは作為の形式で規定された通常の構成要件が不作為によって実現される場合をいいます。

不真正不作為犯の成立要件

不真正不作為犯の成立には実行行為性として作為義務及び作為の可能性と容易性が要件として挙げられます。

作為義務

作為義務とは構成要件的結果の発生を防止すべき義務をいいます。作為義務を負う立場のことを保障人的地位といいます。作為義務は不真正不作為犯の成立範囲を妥当な範囲に限定しその限界をできるだけ明確にするための要件として特に重要視されています。一般的にある結果発生の危険のある状態においてその発生を防止すべき特別の法的義務を有する者の不作為のみが不真正不作為犯の実行行為となりうるとされています。作為義務は法的な義務であり事案に即した個別具体的な義務でなければなりません。

作為義務の発生根拠

作為義務の発生根拠としては形式的観点から導かれるものとして法令、契約や事務管理及び先行行為を含む条理があります。法令の例として親権者の子に対する監護義務があり契約の例として看護契約を締結して病人の看護を開始した場合があり先行行為を含む条理の例として堕胎を行った医師が排出した嬰児が生育可能性を有するのに放置した場合があります。

実質的観点から導かれるものとして排他的支配及び保護の引受けがあります。排他的支配の例として自動車でひいた被害者を自動車内に引き入れて他人が救助の手を出せない状況に置く場合があり保護の引受けの例として病人を病院へ移送することを引き受ける場合があります。

いずれか1つのみで作為義務が肯定される場合の全てを説明することは困難であり判例はこれらの根拠を総合的に考慮して作為義務の有無を判断する傾向にあると解されています。判例上作為義務が肯定されたのはそのほとんどが排他的支配や保護の引受けが認められる事案です。そこで上記の根拠の総合考慮に当たっては排他的支配や保護の引受けの有無を検討しその上で他に根拠となりうる事情がないかを検討するべきであると考えられています。

作為義務に関する判例

判例は自己の過失行為により物件を燃焼させた者が建物に燃え移らないようにこれを消火すべき義務を負っているとし建物への延焼を認識かつ認容しながら必要かつ容易な延焼防止措置を採らずに立ち去った行為は不作為による現住建造物等放火罪の実行行為に当たるとしています。この判例は既発の火力を利用する意思が不要であることを明らかにしたものと解されています。

また判例は被告人が特殊な治療法を施す特別の能力を持つなどと謳って信奉者を集めていたところ脳内出血で倒れた患者を病院からホテルに運び出させ必要な医療措置を受けさせないで放置し死亡させた事案について被告人は自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上患者の親族から重篤な患者に対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったとし直ちに生命維持に必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたと判示して不作為による殺人罪の成立を認めました。

作為の可能性と容易性

作為義務が存在しても刑法は一般人に対し不可能を強いるものではないから不作為犯の実行行為性の要件として作為可能性が存在することが必要となります。不作為犯の成立には作為の容易性も必要です。

不作為犯の因果関係

不作為の条件関係は期待された作為がなされていれば結果は生じなかったであろうという関係が認められれば肯定されます。この条件関係が認められるためには十中八九結果の回避が可能であったことすなわち期待された作為を行っていれば結果の回避が合理的な疑いを超える程度に確実であったことまで必要になるものと解されています。

判例は被害者に注射された覚せい剤により錯乱状態に陥った時点において直ちに被告人が救急医療を要請していれば十中八九救命が可能であったとし救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから刑法上の因果関係があると認めるのが相当であるとしています。

作為犯における条件関係は付け加え禁止の原則により現実に存在しなかった仮定的事実を付け加えて判断してはなりませんが不作為犯の場合には期待された作為がなされていれば結果は生じなかったであろうといえるかどうかで判断するので例外的に仮定的事実を付け加えて条件関係の有無を判断する形となります。

不作為犯における刑法上の因果関係が認められるためには作為犯の場合と同様に条件関係のみならず法的因果関係も肯定されることが必要となります。期待された作為を行わなかったことによる危険が結果へと現実化したといえる場合には不作為犯における刑法上の因果関係が認められます。

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