自己決定権の意義
自己決定権とは、自己に関する事柄について公権力から干渉されることなく自ら決定することができる権利をいいます。このような自己決定権も13条の幸福追求権として保障されるとの理解が一般的です。
自己決定は明文根拠のある多くの個別的な人権にとっても本質的な要素です。そのため、ここにいう自己決定権は明文上の根拠がある自己決定の権利以外のものを指します。
自己決定権の分類
自己決定権はおおむね次の3つに分類されます。第一に、生命と身体に関わる自己決定権であり、自殺や安楽死、医療拒否などがこれに含まれます。第二に、性的自己決定の権利や家族の維持と形成に関わる自己決定権です。なお、家族の維持と形成に関わる自己決定権については13条ではなく家族生活における両性の平等に関する24条1項によって保障されると解されています。第三に、ライフスタイルに関わる自己決定権であり、喫煙や飲酒、髪型などがこれに含まれます。
自己決定権に関する判例の状況
自己決定権を憲法上の権利として明示的に認めた判例は存在しないとされています。
生命と身体に関わる自己決定権について、エホバの証人輸血拒否事件判決は輸血拒否について自己決定権に言及することなく人格権の一内容として尊重されなければならないとしています。
性的自己決定の権利や家族の維持と形成に関わる自己決定権について、再婚禁止期間違憲判決は婚姻をするについての自由は憲法24条1項の規定の趣旨に照らし十分尊重に値すると判示しています。
喫煙の自由
最高裁判所は、喫煙の自由は憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしてもあらゆる時や所において保障されなければならないものではないとしました。本判決が含まれるとしてもという仮定的な表現をとっているため、学説上では喫煙の自由を憲法上の人権と位置付けた判例と見るべきかについて評価が分かれています。
どぶろく事件
Xは無免許で清酒等を自家製造したとして酒税法違反により起訴されました。Xは無免許製造した者を処罰する酒税法の規定は自己消費目的の酒類製造も制約するので13条に違反すると主張して争いました。
最高裁判所は、自己消費を目的とする酒類製造であってもこれを放任するときは酒税収入の減少など酒税の徴収確保に支障を生じる事態が予想されるところから、国の重要な財政収入である酒税の徴収を確保するため製造目的のいかんを問わず酒類製造を一律に免許の対象とした上で免許を受けないで酒類を製造した者を処罰することとしたものであり、これにより自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしてもそのような規制が立法府の裁量権を逸脱し著しく不合理であることが明白であるとはいえず憲法31条および13条に違反するものではないとしました。
バイクを運転する自由
私立高校の生徒であるXは校則である免許をとらない、乗らない、買わないという原則に違反したことを理由に自主退学勧告を受けて退学したためその違憲性を争いました。
最高裁判所は、私立学校では自主退学勧告が直接憲法の基本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はないとしたうえで、上記の原則は社会通念上不合理であるとはいえないとしました。
髪型の自由
パーマをかけることを禁止する校則の定めが13条に違反するかが争われた事案において、最高裁判所は、高校生にふさわしい髪型を維持し非行を防止する目的でパーマをかけることを禁止する旨の校則は社会通念上不合理なものとはいえないとしたうえで、この校則の定めに違反したことを理由とする自主退学勧告に違法があるとはいえないとしました。
環境権
環境権とは良い環境を享受しこれを支配する権利のことをいいます。環境権は戦後の高度経済成長期に公害問題が深刻化した時代において環境破壊行為を差し止めるための法的根拠として構成された私法上の権利とされますが、学説上ではさらに進んで公権力による環境破壊を排除するための自由権でもあると解されるようになり、良好な環境の下で暮らす権利は個人の人格的生存に不可欠な利益であって新しい人権として13条の保障が及ぶと主張されるようになりました。
しかし、そもそも環境は自然環境、歴史的文化的環境、社会的環境のいずれであっても公共の利益の域を出ないのであって、それを個人が支配するものと考えるのは困難であり自由権すなわち防御権として環境権を構成することには無理があるものと一般に解されています。判例も環境権について一切言及していません。
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