黒体
黒体とは
黒体(こくたい)とは、あらゆる波長の電磁波を完全に吸収し、同時にあらゆる波長の電磁波を最大限に放射する仮想的な物体です。自然界に完全な黒体は存在しませんが、概念として非常に重要です。
太陽は可視光線の波長帯においてほぼ黒体とみなせます。地表面も赤外線の波長帯においてほぼ黒体とみなせます。
吸収率・射出率・反射率
物体に電磁波が当たったとき、その一部は吸収され、残りは反射されます。
- 吸収率(a):入射した電磁波のうち吸収される割合
- 反射率(r):入射した電磁波のうち反射される割合
吸収率 + 反射率 = 1
a + r = 1
黒体は吸収率が1(すべて吸収)、反射率が0(反射しない)です。
物体が電磁波を放射する能力を**射出率(ε)**といいます。射出率が1の物体は、その温度で可能な最大限の放射を行います。
キルヒホッフの法則
キルヒホッフの法則とは、ある波長における物体の吸収率と射出率は等しいという法則です。
吸収率(a)= 射出率(ε)
つまり、よく吸収する物体はよく放射もする、ということです。黒体は吸収率が1なので射出率も1であり、最大限の放射を行います。
大気の吸収特性
地球の大気は、すべての波長の電磁波を均一に吸収するわけではありません。波長帯によって吸収しやすいものと吸収しにくいものがあります。
太陽放射(短波放射)に対して
大気は太陽放射(可視光線を中心とする短波放射)をほとんど吸収しません。可視光線は大気を素通りして地表に到達します。ただし、紫外線の一部はオゾン層で吸収されます。
地球放射(長波放射)に対して
大気は地球放射(赤外線を中心とする長波放射)のほとんどを吸収します。ただし、波長8〜12μm付近の波長帯は大気にあまり吸収されず、宇宙空間へ直接放出されます。この波長帯を大気の窓(atmospheric window)と呼びます。
地球放射を吸収する気体を温室効果ガスといいます。代表的なものは、水蒸気(最大の吸収源)、二酸化炭素、オゾン、メタン、一酸化二窒素、フロンなどです。
温室効果
大気の温室効果の仕組みは次のとおりです。
- 太陽放射(短波放射)は大気をほぼ素通りして地表面に到達する
- 地表面は太陽放射を吸収して暖まり、赤外線(長波放射)を放射する
- この地球放射は大気中の温室効果ガスに吸収される
- 温室効果ガスはキルヒホッフの法則に従い、吸収した分と同程度の放射を行う(大気放射)
- 大気放射は上向きと下向きの両方に出される
- 下向きの大気放射が地表面に到達し、地表面をさらに暖める
つまり、地表面は太陽放射に加えて大気からの下向き放射も受け取るため、温室効果ガスがない場合よりも地表面温度が高くなります。これが温室効果です。
温室効果がなければ、地球の平均気温は約−18℃(255K)になると計算されます。実際の地球の平均気温は約15℃(288K)なので、温室効果によって約33℃も気温が上がっていることになります。
