成層圏とオゾン
成層圏の基本
対流圏界面(約11km)から高度約50kmまでの範囲を成層圏といいます。成層圏の最大の特徴は、対流圏とは逆に高度とともに気温が上昇するという点です。
「成層圏」という名前の由来
気温が高度とともに上昇する大気は安定な状態にあります。暖かく軽い空気が上に、冷たく重い空気が下にある状態なので、空気が上下に入れ替わりにくいのです。
このため、成層圏では空気が層を成して静かに存在していると考えられ、「成層圏」と名づけられました。ただし実際には成層圏でも大気の上下運動が起きることがあります(「成層圏の突然昇温」など)。
大気の安定・不安定
ここで「安定」「不安定」の概念を簡単に整理しておきます。
- 安定:暖かく軽い空気が上層、冷たく重い空気が下層にある状態。空気は上下に動きにくい。
- 不安定:冷たく重い空気が上層、暖かく軽い空気が下層にある状態。空気は上下に入れ替わろうとする。
大気が不安定になると、上層の冷たい空気と下層の暖かい空気が入れ替わって安定な状態に戻ろうとします。この入れ替わりが空気の上下運動です。
オゾンの生成と消滅
成層圏の気温が上昇する原因は、高度約25km付近に集中する**オゾン(O₃)**の存在にあります。
オゾンの生成
- 酸素分子(O₂)に太陽紫外線(波長0.24μm以下)があたる
- 酸素分子が2つの酸素原子(O)に分かれる(光解離)
- 分かれた酸素原子が別の酸素分子にくっつく
- **オゾン(O₃)**ができあがる
O₂ + 紫外線 → O + O (光解離)
O + O₂ → O₃ (オゾン生成)
オゾンの消滅
- オゾン(O₃)に紫外線(波長0.32μm以下)があたる
- 酸素分子(O₂)と酸素原子(O)に分かれる(光解離)
- このときにも紫外線を吸収する
O₃ + 紫外線 → O₂ + O (光解離)
オゾンは生成と消滅を繰り返しながら一定量を維持しています。そして、生成・消滅のどちらの過程でも紫外線を吸収するため、その吸収されたエネルギーによって周囲の気温が上昇するのです。
気温の極大が成層圏界面にある理由
ここでひとつ疑問が生じます。オゾンが最も多いのは約25km付近(オゾン層)なのに、気温が最も高くなるのは約50km付近(成層圏界面)です。なぜでしょうか。
理由は2つあります。
理由①:紫外線はオゾン層に届く前に弱まる
オゾン層とは「オゾンが特に多い層」のことであり、オゾン層の上にもオゾンは存在します。太陽からの紫外線は、上層のオゾンに吸収されながら降りてくるため、オゾン層に到達するころにはかなり弱まっています。
理由②:密度が小さい空気は温まりやすい
上空ほど空気の密度は小さくなります。密度が小さい(空気が薄い)ほど、少ないエネルギーでも気温は大きく上昇します。成層圏界面付近は、オゾン層よりも高い位置にあるため空気の密度が小さく、紫外線の吸収量が同じでも気温の上昇幅が大きくなるのです。
この2つの要因が重なって、気温の極大はオゾン層ではなく成層圏界面付近に現れます。
