地上付近の風と摩擦力

上空の風と地上の風の違い

これまで学んできた地衡風や傾度風は、気圧傾度力とコリオリ力(傾度風の場合はさらに遠心力)がつり合った理想的な風でした。これらの風は等圧線に平行に吹くという特徴がありました。

しかし、地上の天気図を見てみると、実際の風は等圧線に平行ではなく、等圧線を斜めに横切るように低気圧の中心に向かって吹き込んでいます。これは上空にはない力、つまり摩擦力がはたらいているためです。

摩擦力とは

摩擦力とは、物体の運動を妨げる方向にはたらく力です。地上付近の空気は、地面や海面、建物、山や森林などとの間で摩擦を受けます。この摩擦力は常に風の進行方向と反対の向きにはたらき、風速を遅くする作用があります。

摩擦力の影響は地表面に近いほど大きく、上空にいくほど小さくなります。地表面から約1〜2kmまでの範囲で摩擦力の影響が顕著で、この範囲を大気境界層(または摩擦層)と呼びます。大気境界層より上の大気は摩擦力の影響がほとんどなくなり、この範囲を自由大気といいます。自由大気では地衡風や傾度風がよい近似になりますが、大気境界層では摩擦力を考慮しなければなりません。

なお、摩擦力の影響の大きさは地表面の状態によって変わります。海上は比較的滑らかなので摩擦力は小さく、大気境界層の高さも低くなります。陸上は建物や森林などの凹凸があるため摩擦力は大きく、大気境界層の高さも高くなります。

摩擦力がはたらくと風はどうなるか

摩擦力がはたらくと、まず風速が低下します。風速が低下すると、風速に比例するコリオリ力も小さくなります。一方、気圧傾度力は風速に関係なく気圧差で決まるため、変化しません。

その結果、コリオリ力が気圧傾度力とつり合えなくなり、気圧傾度力の方が強くなります。風は気圧傾度力に引っ張られて、等圧線に平行な方向から低圧側に寄った方向へ曲がっていきます。

最終的に、気圧傾度力とコリオリ力と摩擦力の3つの力がつり合う状態になります。このとき、風は等圧線に対して斜めに、低圧側に向かう成分をもった方向に吹きます。等圧線と風向のなす角度は、海上で約15〜25度、陸上で約25〜45度程度です。陸上の方が摩擦力が大きいため、等圧線からのずれも大きくなります。

低気圧・高気圧まわりの地上の風

地上付近では摩擦力の影響で風が等圧線を横切るため、低気圧と高気圧のまわりの風の吹き方は上空とは少し異なります。

低気圧のまわりの地上の風:北半球の低気圧では、上空では等圧線に平行に反時計回りに吹きますが、地上では等圧線を横切って中心に向かって吹き込みながら反時計回りに渦を巻きます。つまり、低気圧には下層で収束(空気が集まる)が起きています。集まった空気は行き場を失って上昇するため、低気圧の中心付近には上昇流が生じます。上昇流があるということは、空気が冷却されて雲ができやすく、天気が悪くなるということです。

高気圧のまわりの地上の風:北半球の高気圧では、上空では等圧線に平行に時計回りに吹きますが、地上では等圧線を横切って中心から外側に向かって吹き出しながら時計回りに渦を巻きます。つまり、高気圧からは下層で発散(空気が外に広がる)が起きています。吹き出した分を補うために上空から空気が下降してくるため、高気圧の中心付近には下降流が生じます。下降流があるということは、空気が暖められて相対湿度が下がり雲ができにくいので、天気が良くなります。

このように、低気圧=天気が悪い、高気圧=天気が良いという対応関係は、摩擦力によって地上の風が等圧線を横切ることで生じる収束・発散がその原因になっているのです。

エクマンスパイラル

大気境界層の中では、高度が上がるにつれて摩擦力の影響が弱まっていきます。そのため、地上に近いところでは風は等圧線に対して大きな角度で横切りますが、高度が上がるにつれて風向は徐々に等圧線に平行な方向に近づき、同時に風速も増していきます。

この風向・風速が高度とともに変化していく様子を、風のベクトルの先端を結んだ曲線で表すと、らせん状の軌跡を描きます。これをエクマンスパイラル(エクマンの螺旋)といいます。大気境界層の上端(自由大気との境目)に達すると、風は地衡風とほぼ一致するようになります。

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