放射平衡温度
放射平衡とは
物体が受け取る放射エネルギーと、放出する放射エネルギーがつり合っている状態を放射平衡といいます。放射平衡にあるとき、物体の温度は一定に保たれます。
受け取るエネルギーが放出するエネルギーより大きければ温度は上昇し、逆なら低下します。長い期間で見れば、地球全体としてはほぼ放射平衡の状態にあります。
アルベド(惑星反射率)
太陽から地球に到達した放射のうち、すべてが吸収されるわけではありません。一部は雲や地表面で反射されて宇宙空間に戻ります。
入射した太陽放射のうち反射される割合をアルベド(惑星反射率)といいます。地球全体のアルベドは約0.3(30%)です。つまり太陽放射の30%が反射され、残りの70%が地球に吸収されます。
反射率は表面の種類によって大きく異なります。
| 表面 | アルベドの目安 |
|---|---|
| 新雪 | 0.8〜0.9(高い) |
| 厚い雲 | 0.6〜0.8(高い) |
| 砂漠 | 0.3〜0.4 |
| 森林 | 0.1〜0.2(低い) |
| 海面 | 0.06〜0.1(低い) |
雲や雪・氷はアルベドが高く、太陽放射を多く反射します。一方、海面や森林はアルベドが低く、太陽放射をよく吸収します。
放射平衡温度の計算
放射平衡温度とは、受け取る太陽放射と放出する地球放射がつり合うときの温度です。
地球が受け取るエネルギーは、太陽定数をS、アルベドをA、地球の半径をRとすると:
受け取るエネルギー = S × πR² × (1−A)
地球が放出するエネルギーは、シュテファン・ボルツマンの法則から:
放出するエネルギー = σT⁴ × 4πR²
放射平衡では両者が等しいので:
S × πR² × (1−A) = σT⁴ × 4πR²
→ T⁴ = S(1−A) / 4σ
この式にS=1370 W/m²、A=0.3を代入すると、T≒255K(約−18℃) となります。
これは温室効果を考慮していない値です。実際の地球の平均気温(約15℃=288K)との差(約33℃)が温室効果の大きさを表しています。
地球の熱収支
地球全体の放射平衡をもう少し詳しく見てみます。太陽放射を100とすると:
太陽放射(100)の行方:
- 大気・雲・地表面で反射されて宇宙へ → 約30(アルベド)
- 大気に吸収される → 約20
- 地表面に吸収される → 約50
地表面は太陽放射の吸収に加え、大気からの下向き放射(大気放射)も受け取ります。地表面はこれらのエネルギーを、地球放射(赤外線)、顕熱(空気を直接暖める)、潜熱(蒸発に使われるエネルギー)の形で大気に返しています。
緯度による放射の偏り
太陽放射は赤道付近に多く、高緯度ほど少なくなります。一方、地球放射は地球全体でほぼ均一に行われています。
この結果、低緯度では受け取るエネルギーが放出するエネルギーを上回り(エネルギー過剰)、高緯度では放出するエネルギーが受け取るエネルギーを上回ります(エネルギー不足)。
しかし、低緯度が際限なく暖まり続けたり、高緯度が冷え続けたりはしません。低緯度の余剰エネルギーは大気の循環(風)や海流によって高緯度に運ばれ、このエネルギーの偏りを解消しています。つまり、大気や海洋の大規模な循環は、放射の緯度による偏りを是正するために存在しているのです。
