大気の大循環

大気の大循環とは

大気の大循環とは、地球全体にわたって存在する大規模な大気の流れのパターンのことです。前のセクションで学んだように、低緯度で余ったエネルギーを高緯度に輸送する重要な役割を担っています。

もし地球が自転していなければ、大気の大循環は単純なものになるでしょう。赤道で暖められた空気が上昇して極に向かい、極で冷やされた空気が下降して赤道に戻るという、1つの大きな対流循環(1セル循環)が南北半球にそれぞれできるはずです。

しかし実際には地球は自転しているため、コリオリ力のはたらきによって大気の流れは複雑になり、南北方向に3つの循環セルが形成されます。

3つの循環セル

北半球の大気の大循環は、赤道側から順にハドレー循環フェレル循環極循環の3つの循環セルで構成されています。南半球にも同様の3つのセルがほぼ対称的に存在しています。

ハドレー循環

ハドレー循環は、赤道から緯度約30度付近にかけて存在する直接循環です。「直接循環」とは、暖かい空気が上昇し、冷たい空気が下降するという、温度差によって直接駆動される循環のことです。

赤道付近では強い日射によって地表面が暖められ、空気が上昇します。上昇した空気は上空で極に向かう流れとなりますが、コリオリ力によって東向きに曲げられます。この上空の流れは緯度約30度付近に達するまでにかなり東向きに偏向されます。

緯度約30度付近では、上空から下降する流れが生じています。下降した空気は地表面付近で赤道に向かう流れとなりますが、やはりコリオリ力の影響を受けます。北半球では進行方向の右向きに偏向されるため、赤道に向かう北風は東向きに曲げられ、結果として北東の貿易風(北東風)となります。南半球では反対に南東の貿易風(南東風)となります。

このハドレー循環は3つの循環セルの中で最も強く安定しており、熱帯の気象を支配する重要な循環です。

フェレル循環

フェレル循環は、緯度約30度から約60度付近にかけて存在する間接循環です。「間接循環」とは、温度差だけでは説明できない、他の力に駆動されて維持されている循環のことです。

フェレル循環では、地表面付近の風は極側(北向き)に流れます。この風はコリオリ力によって東向きに偏向されるため、中緯度では偏西風(南西風)が卓越します。

フェレル循環は、ハドレー循環と極循環にはさまれた位置にあり、その両側の循環に引きずられるような形で維持されています。また、中緯度に発達する温帯低気圧や高気圧がエネルギーや運動量を南北に輸送し、このフェレル循環を維持する重要な役割を果たしています。

極循環

極循環は、緯度約60度から極にかけて存在する直接循環です。ハドレー循環と同じく直接循環ですが、規模は小さく弱い循環です。

極付近では強い放射冷却によって空気が冷やされ、下降します。下降した冷たい空気は地表面を赤道に向かって流れます。この流れはコリオリ力によって偏向され、極偏東風(北東風)となります。緯度約60度付近では、極から流れてきた冷たい空気と中緯度から流れてきた暖かい空気がぶつかり、暖かい空気が冷たい空気の上に乗り上げて上昇します。これが亜寒帯低圧帯(極前線帯)を形成します。

熱帯収束帯(ITCZ)

赤道付近では、北半球のハドレー循環と南半球のハドレー循環がぶつかります。つまり、北半球からの北東貿易風と南半球からの南東貿易風が合流する場所です。この合流域を熱帯収束帯(ITCZ:Inter-Tropical Convergence Zone)といいます。

熱帯収束帯では貿易風どうしの収束によって強い上昇流が生じ、積乱雲が頻繁に発達します。衛星画像では、赤道付近に帯状に並ぶ雲の列として観測されます。

熱帯収束帯の位置は赤道上にぴったり乗っているわけではなく、季節によって南北に移動します。これは太陽の直射点(太陽が真上に来る緯度)が季節によって南北に移動するためです。北半球の夏には赤道より北に、南半球の夏には赤道より南に移動しますが、陸と海の分布の影響もあって必ずしも単純ではありません。

亜熱帯高圧帯

緯度約30度付近は、ハドレー循環の下降域にあたります。上空から空気が下降してくるため、この付近には高気圧帯が形成されます。これを亜熱帯高圧帯といいます。

亜熱帯高圧帯では下降流が卓越するため、空気は断熱圧縮によって暖まり、相対湿度が低下します。このため、雲が形成されにくく、天気が安定して乾燥した気候になります。世界の大砂漠(サハラ砂漠、アラビア砂漠、オーストラリアの砂漠など)の多くがこの緯度帯に位置しているのは、亜熱帯高圧帯による下降流と乾燥が原因です。

太平洋上の亜熱帯高圧帯は太平洋高気圧として知られ、日本の夏の天気に大きな影響を与えます。大西洋上ではアゾレス高気圧(バミューダ高気圧)がこれにあたります。

亜熱帯高圧帯は連続した帯ではなく、海洋上に高気圧のセル(中心)がいくつか存在する形になっています。これは大陸と海洋の分布や地形の影響によるものです。

フェレル循環と中緯度の気象

フェレル循環は間接循環であると説明しましたが、これをもう少し詳しく見てみましょう。フェレル循環の地表面付近では空気は極に向かって流れ(偏西風)、上空では赤道に向かって流れます。つまり、暖かい空気が低緯度から高緯度に向かい、冷たい空気が高緯度から低緯度に向かうハドレー循環や極循環とは反対に、フェレル循環では地表面付近の暖かい空気が極に向かっているのです。

フェレル循環は、ハドレー循環や極循環のように温度差によって直接駆動されているのではなく、中緯度で頻繁に発達する温帯低気圧移動性高気圧によって維持されています。温帯低気圧は暖かい空気を北に、冷たい空気を南に輸送することで、南北のエネルギー輸送を行っています。この温帯低気圧による南北方向の熱輸送が、フェレル循環を維持する駆動力になっているのです。

偏西風波動

中緯度の上空には偏西風が吹いていますが、この偏西風は一直線に西から東に吹いているわけではなく、南北に蛇行しています。この蛇行を偏西風波動(ロスビー波)といいます。

偏西風波動の蛇行のうち、南に凹んだ部分が気圧の谷(トラフ)、北に膨らんだ部分が気圧の尾根(リッジ)です。通常、北半球には4〜6個程度の大きな波(長波、プラネタリー波)が存在しています。この長波の波数や位置は、ヒマラヤやロッキー山脈などの大規模な山脈や、大陸と海洋の熱的コントラストによって決まっています。

偏西風波動のトラフの東側(下流側)では上層で発散が起き、地上の低気圧が発達しやすくなります。逆に、リッジの東側(下流側)では上層で収束が起き、地上の高気圧が発達しやすくなります。このように、偏西風波動は地上の天気に大きな影響を与えています。

偏西風の蛇行が大きくなりすぎると、蛇行の一部が切り離されて独立した渦(切離低気圧や切離高気圧、ブロッキング高気圧など)になることがあります。これを切離現象といいます。切離された渦は偏西風の流れから外れるため、動きが遅くなり、同じ場所に長期間とどまることがあります。これが長引く異常天候の原因になることがあります。

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