前線

前線とは

前線とは、気温や湿度などの性質が異なる2つの気団がぶつかる境目のことです。暖かい空気と冷たい空気はなかなか混じり合おうとしないため、その間にはある程度幅のある境目ができます。この境目のことを前線帯といいます。

前線帯には暖気側の前線面と寒気側の前線面があり、この2つをまとめて単に前線面ということもあります。前線帯の暖気側の前線面と地上とが交わるところに前線が引かれます。

地上から見て上空の前線は寒気側にあることに注意が必要です。前線面は地表面から上空に向かって寒気側に傾いているため、地上天気図上の前線の位置と、上空の前線面の位置はずれています。高さが変われば前線の位置も変わることを意識しておきましょう。

前線には、暖気と寒気の勢力によって次の4種類があります。温暖前線寒冷前線閉塞前線停滞前線です。

しとしと雨を降らせる温暖前線

温暖前線は、暖かい空気が冷たい空気の上をはいあがるように押し進める、暖気の勢力のほうが強い前線です。

暖かい空気と冷たい空気がぶつかると、暖かい空気は冷たい空気の上をはいあがるように全体的に押し進めていきます。つまり、暖気のほうが押す力が強いので、温暖前線は暖気が進む方向に進みます。

温暖前線の前面(進行方向の前方、つまり寒気側)では、暖かい空気が冷たい空気の上を緩やかにはいあがっていくため、広い範囲に雲が広がります。温暖前線の前線面の傾斜は比較的緩やかなので、水平方向に広がる乱層雲が発生します。その乱層雲からは地雨(しとしと雨)が降ります。

温暖前線の前線面の傾斜は、鉛直方向1kmに対して水平方向200km〜300kmくらいです。この緩やかな傾斜のため、温暖前線が近づいてくるときは、まず上空に薄い巻雲が現れ、次第に巻層雲、高層雲、そして乱層雲へと雲が厚く低くなっていきます。雨が降り始めるのは温暖前線の前方数百kmの地点からで、比較的弱い雨が広い範囲で長時間にわたって降り続きます。

温暖前線が通過すると、その地点は暖気側に入るため気温が上昇します。

しゅう雨を降らせる寒冷前線

寒冷前線は、暖かい空気の下に冷たい空気が潜り込むようにして押し進める、寒気の勢力のほうが強い前線です。

冷たい空気が暖かい空気の下に潜り込みながら、全体的に押し進めていくのが寒冷前線です。冷たい空気がよく潜り込んでくるので、暖かい空気は上に持ち上げられます。

暖かい空気が持ち上げられた部分に雲が発生するのですが、寒冷前線の前線面の傾斜は比較的急なため、鉛直方向に発達する積乱雲が発生します。その積乱雲からはしゅう雨(にわか雨)が降ります。

つまり、温暖前線も寒冷前線も結局は傾斜こそ違いますが、暖かい空気が上昇する部分に雲をつくるのです。暖かい空気と冷たい空気がぶつかると暖かい空気が上昇するのは、単純に暖かい空気のほうが密度が小さく軽いからです。

寒冷前線の前線面の傾斜は、鉛直方向1kmに対して水平方向50km〜100kmくらいです。温暖前線に比べてかなり急な傾斜です。このため、寒冷前線に伴う雨は狭い範囲に集中し、短時間に強い雨が降ります。雷を伴うこともあります。

寒冷前線が通過すると、その地点は寒気側に入るため気温が急激に低下します。

アナ型とカタ型

寒冷前線は、暖気と寒気の相対的な動きからアナ型(アナフロント)とカタ型(カタフロント)の2種類に分かれます。

アナ型とは、寒冷前線に伴う前線帯の上にある暖かい空気が上昇している場合です。この場合は上昇気流により背の高い対流雲や強い降水を伴うことが多くなります。一般的に寒冷前線といえばアナ型のイメージです。

カタ型とは、寒冷前線に伴う前線帯の上にある暖かい空気が、この前線帯に沿うように下降している場合です。この場合はその下降気流により雲の発達は不活発で、降水も伴わないことが多くなります。

寒冷前線というと天気予報などから降水を伴うイメージがありますが、場合によってはカタ型のように降水をともなわないこともあるのです。

温帯低気圧と前線

温暖前線と寒冷前線は、一般的に温帯低気圧にともなって出現することが多いです。温帯低気圧の中心から東側に温暖前線が、西側に寒冷前線が対応します。

温暖前線の東側には東よりの方向から吹く寒気が流入しており、西側には南よりの方向から吹く暖気が流入しています。温暖前線の西側の暖気の勢いが、東側の寒気よりも強いのでここに温暖前線ができます。また、寒冷前線の西側には北よりの方向から吹く寒気があり、この寒気の勢いが寒冷前線の東側にある暖気よりも強いのでここに寒冷前線ができます。なお、温暖前線と寒冷前線の間に挟まれた領域のことを暖域といいます。

温帯低気圧は大きく見て西側から東側に向けて進みます。ある地点を温帯低気圧が通過する場合、最初は東よりの風が吹いていても、温暖前線が通過したあとは南よりの風に変化し、さらに寒冷前線が通過すると北よりの風に変化します。

2つのタイプをもつ閉塞前線

温帯低気圧に伴って温暖前線と寒冷前線が出現しますが、この2つの前線は温帯低気圧上を同じ方向に進みます。速度は寒冷前線のほうが速くなります。そのため、時間が経つと寒冷前線が前を進む温暖前線に追いついてしまいます。そのときにできる前線が閉塞前線です。

閉塞前線には、温暖型閉塞前線寒冷型閉塞前線の2種類のタイプがあります。

温暖型閉塞前線

寒冷前線の進行方向後面にある寒気①のほうが、温暖前線の進行方向前面にある寒気②よりも温度が高いとします。すると、寒気②(気温:低)の上を寒気①(気温:高)がはいあがるように押し進めていく前線ができます。温暖前線の形に似ていることから、これを温暖型閉塞前線といいます。

寒冷型閉塞前線

逆に、寒冷前線の進行方向後面にある寒気①のほうが、温暖前線の進行方向前面にある寒気②よりも温度が低いとします。すると、寒気②(気温:高)の下を寒気①(気温:低)が潜り込むように押し進めていく前線ができます。寒冷前線の形に似ていることから、これを寒冷型閉塞前線といいます。

どちらの閉塞前線にしても、寒冷前線と温暖前線の間にあった暖気は閉塞といって上層に持ち上げられ、下層は寒気だけで覆われる状態となります。また、温暖型閉塞前線も寒冷型閉塞前線も、暖気側の前線面(温暖型は寒気①側、寒冷型は寒気②側)と地上が交わるところに前線が引かれます。

この2種類の閉塞前線を天気図上で見分ける方法があります。温暖前線の延長上に閉塞前線が引かれている場合が温暖型閉塞前線であり、寒冷前線の延長上に閉塞前線が引かれている場合が寒冷型閉塞前線です。

ほとんど動かない停滞前線

停滞前線は、暖かい空気と冷たい空気の勢力がほぼ同じ状態のときにできる前線のことです。

暖気と寒気がぶつかると、間に前線帯ができ、その前線帯の暖気側の前線面と地上が交わるところにこの停滞前線は引かれます。このとき、暖気は上昇するように、逆に寒気は下降するようにぶつかるのですが、お互いの勢力がほぼ同じため、この前線はほとんど動かないのです。

停滞前線は東西にのびることが多く、前線を挟んで高緯度からの寒気と低緯度からの暖気の勢力の差によっては南北に移動することがあります。

日本の梅雨の時期に見られる梅雨前線は停滞前線の一種です。オホーツク海気団(冷たく湿った気団)と小笠原気団(暖かく湿った気団)の勢力がほぼ拮抗し、その境目に停滞前線が形成されます。この梅雨前線が日本付近に停滞することで、長期間にわたって雨が降り続けるのです。秋の秋雨前線も同様のしくみで形成される停滞前線です。

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