準二年周期振動とオゾン層
準二年周期振動(QBO)
成層圏の赤道付近では、西風と東風がおよそ2年(約26〜28か月)の周期で交互に入れ替わる現象が観測されています。これを準二年周期振動(QBO:Quasi-Biennial Oscillation)といいます。
QBOは成層圏の赤道付近で特に顕著に見られます。西風の層と東風の層が上層から下層に向かって徐々に下降していくのが特徴です。つまり、まず成層圏上部で風向が変わり、その変化が時間とともに下の高度に伝わっていきます。
QBOの原因は、対流圏から伝播してくる大気波動(赤道ケルビン波やロスビー重力波)が成層圏で砕けて(ブレーキングして)運動量を平均流に与えるためであると考えられています。
QBOは赤道付近の成層圏だけでなく、中高緯度の成層圏や対流圏の気象にも間接的な影響を及ぼすことが知られています。たとえば、QBOの位相(西風相か東風相か)によって極渦の強さが変わり、それが中高緯度の冬の天気に影響するという研究があります。
オゾン層の役割と破壊
オゾン層の役割
成層圏にはオゾンが高い濃度で存在する層があり、これをオゾン層と呼びます。オゾン層は高度約15〜30kmに位置しており、太陽からの有害な紫外線を吸収して地上の生物を守る重要な役割を果たしています。
オゾン(O₃)は、酸素分子(O₂)が紫外線によって分解されてできた酸素原子(O)が別の酸素分子と結合することで生成されます。自然状態では、オゾンの生成と分解がバランスを保っています。
フロンによるオゾン層の破壊
1970年代以降、人工的に合成された化学物質であるフロン(クロロフルオロカーボン、CFC)がオゾン層を破壊していることが明らかになりました。
フロンは冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレーの噴射剤などに広く使用されていた物質です。フロンは対流圏では非常に安定な物質ですが、成層圏に到達すると強い紫外線によって分解され、塩素原子(Cl)を放出します。
この塩素原子がオゾンを破壊する触媒反応を引き起こします。1個の塩素原子が連鎖的に数万個ものオゾン分子を破壊することができるため、少量のフロンでもオゾン層に大きな影響を与えるのです。
オゾンホール
オゾンホールとは、南極上空の成層圏でオゾンの量が著しく減少する現象のことです。毎年8月頃から発達し始め、9〜10月頃に最大となり、11〜12月頃に消滅するという季節変化を示します。
オゾンホールが特に南極上空で顕著に現れる理由には、極域成層圏雲(PSC:Polar Stratospheric Clouds)の存在が深く関わっています。
極域成層圏雲(PSC)
成層圏は通常非常に乾燥しているため、雲はほとんどできません。しかし、南極の冬(6〜8月)には極渦の内部で気温が極端に低下し、−78℃以下にまで下がることがあります。このような極低温の条件下では、わずかな水蒸気や硝酸などが凝結して雲(氷の粒子)を形成します。これが極域成層圏雲(PSC)です。
PSCの表面では、通常は安定な化合物として存在している塩素化合物(フロンに由来する)が化学反応を起こし、活性な塩素分子(Cl₂)が生成されます。冬の間は太陽光がないため、この塩素分子はそのままの状態で蓄積されます。
春になると太陽光が戻り、蓄積された塩素分子が紫外線によって分解され、大量の活性な塩素原子が一斉に放出されます。この塩素原子がオゾンを猛烈な速度で破壊し、オゾンホールが形成されるのです。
極渦とオゾンホールの関係
南極の極渦は非常に強く安定しているため、極渦の内側の空気と外側の空気の混合がほとんど起こりません。極渦が壁のように機能して、内部の冷たい空気を閉じ込めているのです。
このため、PSCで生成された活性な塩素はその場にとどまり続け、効率的にオゾンを破壊します。春になって極渦が弱まると(極渦の崩壊)、オゾンの少ない空気が中緯度の空気と混合され、オゾンホールは消滅します。
北極でもオゾンの減少は起きますが、南極ほど顕著ではありません。これは北極の極渦が南極に比べて弱く不安定であり、大陸や山脈の影響で偏西風波動が大きく蛇行するために極渦が乱されやすいからです。そのため、北極では南極ほど低温が持続せず、PSCの形成も限られるのです。
モントリオール議定書
オゾン層の破壊問題に対処するため、1987年にモントリオール議定書が採択され、フロンなどのオゾン層破壊物質の生産・消費を段階的に規制する国際的な取り組みが始まりました。
この規制の効果により、大気中のフロン濃度は徐々に減少しつつあり、オゾン層は回復の兆しを見せています。しかし、フロンは大気中での寿命が非常に長い(数十年〜百年以上)ため、オゾン層が完全に回復するには今世紀半ば以降までかかると予測されています。
